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呼吸困難と呼吸生理

成人看護学 / 呼吸器系

解説

今回は呼吸困難と呼吸生理について解説します。

呼吸の役割と呼吸困難

呼吸とは、空気中の酸素を体内に取り込み、不要な二酸化炭素を排出するガス交換のはたらきです。肺胞と毛細血管の間で行われる外呼吸と、組織と細胞の間で行われる内呼吸に分けられます。このガス交換が障害されると、患者は「息苦しい」「呼吸が苦しい」と感じます。この自覚症状を呼吸困難といいます。呼吸困難はあくまで患者本人の主観的な訴えであり、検査値ではなく自覚に基づいて評価される点が大切です。一方、動脈血液ガス分析などの客観的データで定義されるのが呼吸不全です。

呼吸不全とその分類

呼吸不全とは、室内空気呼吸下で動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下になる状態をいいます。動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の値によって2つに分けられます。PaCO2が45mmHg未満で低酸素血症のみを呈するものをⅠ型呼吸不全、PaCO2が45mmHg以上となり高二酸化炭素血症を伴うものをⅡ型呼吸不全と呼びます。Ⅱ型呼吸不全はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など肺胞低換気を伴う疾患でみられます。

肺気量分画と換気量

安静時に一回の呼吸で出入りする空気量を1回換気量(TV)といい、成人では約500mL(理想体重×6〜8mL/kg)です。このうち、鼻腔から終末細気管支までの空気の通り道にはガス交換が行われない領域があり、これを解剖学的死腔と呼びます。死腔量は約150mLです。したがって実際にガス交換に関与する肺胞換気量は、500−150=約350mLとなります。 さらに、努力して吸い込める量を予備吸気量(約2,000〜2,500mL)、吐ききれる量を予備呼気量(約1,000mL)、最大呼気後にも肺に残る量を残気量(約1,000〜1,500mL)といいます。これらを合計した全肺気量は約5,000〜6,000mL、最大吸気から最大呼気までの肺活量は約3,500〜4,500mLです。1分間に出入りする空気量は毎分換気量=1回換気量×呼吸数で求められ、成人の呼吸数は安静時に12〜20回/分が正常です。

異常呼吸パターン

呼吸のリズム・深さ・回数の異常は、原因疾患を推測する重要な所見です。

チェーン-ストークス呼吸

チェーン-ストークス呼吸は、無呼吸期を挟みながら、徐々に呼吸が深く速くなったのち、再び浅く遅くなることを周期的に繰り返す呼吸です。呼吸中枢のCO2感受性が低下することで生じ、重症心不全、脳血管障害、尿毒症、薬物中毒、終末期などで出現します。

ビオー呼吸とクスマウル呼吸

ビオー呼吸は不規則に深い呼吸が群発し、無呼吸を挟む予後不良の呼吸です。クスマウル呼吸は異常に深く規則的な呼吸で、糖尿病性ケトアシドーシスや尿毒症などの代謝性アシドーシスを代償するためにみられます。その他、呼吸数が増える多呼吸・頻呼吸、減る徐呼吸、死戦期にみられる下顎呼吸などがあります。

呼吸困難の重症度評価

呼吸困難の程度を客観的に表す指標として、日常生活動作の制限を5段階で評価するヒュー・ジョーンズ分類、息切れの程度を問うMRC息切れスケール、運動時の呼吸困難を0〜10で自己評価する修正Borg(ボルグ)スケールが用いられます。

CO2ナルコーシス

CO2ナルコーシスとは、肺胞換気量の低下により体内にCO2が蓄積し、高度な呼吸性アシドーシスと中枢神経抑制をきたした状態です。三主徴は、①意識障害、②高度の呼吸性アシドーシス、③自発呼吸の減弱です。Ⅱ型呼吸不全患者では慢性的な高CO2血症に身体が適応しており、呼吸ドライブが低酸素刺激に依存しています。ここに不用意な高濃度酸素を投与すると、低酸素刺激が消失して肺胞低換気が助長され、CO2ナルコーシスを発症します。COPDなどⅡ型呼吸不全患者では、目標**SpO2を88〜92%**に保ち、鼻カニューレや24〜28%のベンチュリーマスクで低流量投与とすることが予防の原則です。治療には非侵襲的陽圧換気(NPPV)が用いられます。

呼吸法とリハビリテーション

COPDや肺気腫などの閉塞性換気障害では、呼気時に末梢気道(細気管支)が虚脱しやすく、肺内に空気が溜まるエアトラッピングが生じます。これを防ぐ呼吸法として代表的なのが口すぼめ呼吸(pursed-lip breathing)です。

口すぼめ呼吸の方法

鼻からゆっくり息を吸い込み、口をすぼめて細く長く吐き出します。吸気と呼気の比はおおよそ1:2を目安とし、呼気を吸気の約2倍の時間をかけて行うのがポイントです。

口すぼめ呼吸の効果

口をすぼめて呼出することで気道内に陽圧がかかり、呼気時に気道内圧が保たれて末梢気道の虚脱・閉塞を防ぐことができます。その結果、呼気がスムーズになり、エアトラッピングが軽減され、機能的残気量の増加や呼吸困難が改善します。COPDや肺気腫など閉塞性換気障害の患者に対する呼吸リハビリテーションの基本手技として広く用いられます。

まとめ

呼吸困難は主観的症状、呼吸不全はPaO2≦60mmHgで定義される客観的状態であり、PaCO2≧45mmHgならⅡ型に分類されます。1回換気量500mL、死腔150mL、肺胞換気量350mLという数値は基本中の基本です。チェーン-ストークス・クスマウル・ビオーなどの異常呼吸パターン、ヒュー・ジョーンズ分類などの重症度評価、そしてⅡ型呼吸不全患者への高濃度酸素投与で起こるCO2ナルコーシスとSpO2 88〜92%という目標値は、国試で繰り返し問われる必須知識です。COPD患者の呼吸リハビリでは、口すぼめ呼吸により末梢気道の虚脱を防ぐことも押さえておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    息苦しさを自覚する主観的症状をといい、検査値ではなく患者本人の訴えで評価する。

  2. 2.

    室内空気呼吸下でPaO2がmmHg以下になった状態を呼吸不全という。

  3. 3.

    呼吸不全のうち、PaCO2が45mmHg以上で高二酸化炭素血症を伴うものをという。

  4. 4.

    成人の安静時1回換気量は約mLで、理想体重×6〜8mL/kgが目安となる。

  5. 5.

    鼻腔から終末細気管支までのガス交換に関与しない空気の通り道をといい、その量は約150mLである。

  6. 6.

    無呼吸期を挟みながら呼吸が徐々に深く速くなり、また浅く遅くなることを周期的に繰り返す異常呼吸をといい、重症心不全や脳血管障害でみられる。

  7. 7.

    糖尿病性ケトアシドーシスや尿毒症の代謝性アシドーシスを代償するためにみられる、異常に深く規則的な呼吸をという。

  8. 8.

    日常生活動作の制限度合いから呼吸困難を5段階で評価する分類をという。

  9. 9.

    Ⅱ型呼吸不全患者に高濃度酸素を投与した結果、肺胞低換気が助長されてCO2が蓄積し、意識障害・高度呼吸性アシドーシス・自発呼吸減弱を生じた病態をという。

  10. 10.

    COPDなどⅡ型呼吸不全患者では、CO2ナルコーシス予防のため目標SpO2を%に保ち、低流量酸素投与とする。

  11. 11.

    COPD患者で行う、鼻から吸って口をすぼめて細く長く吐く呼吸法をといい、呼気時に気道内圧が保たれて末梢気道の虚脱・閉塞を防ぐ効果がある。

呼吸困難と呼吸生理」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。