発達理論と発達課題
基礎看護学 / 看護過程・看護理論
解説
今回は発達理論と発達課題について解説します。
発達理論を学ぶ意義
発達理論とは、人間が生まれてから死に至るまでの心身の変化を、段階や課題として整理した理論のことです。看護では、対象がどの発達段階にあり、どのような課題に直面しているかを把握することで、年齢に応じた援助や健康教育、心理的支援を計画できます。小児看護・成人看護・老年看護のいずれにおいても、発達段階の理解は基礎中の基礎となります。
成長・発達の順序性
成長・発達には個人差があるものの、進む方向には一定の法則性があり、これを順序性と呼びます。順序性は国試で頻出のため確実に押さえましょう。 第一に、頭部から尾部(脚部)へ進みます。これは頭尾方向の発達と呼ばれ、首がすわってから座位、立位へと下方向に運動機能が獲得されることを意味します。 第二に、中枢から末梢へ進みます。体幹に近い肩や肘の動きが先に発達し、手指の細かな動きはあとから獲得されます。 第三に、粗大運動から微細運動へ進みます。歩く・跳ぶといった大きな動きが先に獲得され、文字を書く・ボタンをかけるといった巧緻動作はあとから可能になります。 第四に、単純から複雑へ進みます。一語文から二語文、複雑な文章へと言語が発達するのが典型例です。 これらの方向性は個人差があっても逆転することはありません。
エリクソンの心理社会的発達理論
エリクソンは生涯を8段階に分け、各段階に**心理社会的危機(葛藤)**があり、これを克服することで徳(人格的強さ)が獲得されるとしました。
8段階の概要
①乳児期は基本的信頼 対 不信で、徳は希望です。養育者との関わりを通じて他者と世界への信頼感が育ちます。 ②幼児前期は自律性 対 恥・疑惑で、徳は意志です。 ③幼児後期は自主性 対 罪悪感で、徳は目的です。 ④学童期は勤勉性 対 劣等感で、徳は有能感です。 ⑤青年期(13〜22歳頃)は同一性(アイデンティティ) 対 同一性混乱(役割拡散)で、徳は忠誠です。自分は何者か、社会でどのような役割を担うのかを模索し、確立する時期です。 ⑥初期成人期は親密性 対 孤立で、徳は愛です。 ⑦壮年期は生殖性(世代性) 対 停滞で、徳は世話です。次世代を育てることや社会への貢献が課題となります。 ⑧老年期は統合 対 絶望で、徳は英知です。自分の人生を振り返り、受容することが課題です。 青年期=同一性、壮年期=生殖性、老年期=統合という対応は国試で繰り返し問われます。
ハヴィガーストの発達課題論
ハヴィガーストは発達課題が、身体的成熟・社会的要請・個人の価値観の3要素から生じると考え、生涯を6段階に分けました。 ①**乳幼児期(0〜6歳)では、歩行・食事・排泄・会話などの身体機能の獲得とともに、善悪の区別と良心の学習が課題となります。 ②児童期、③青年期と続き、④成人初期(壮年期)**では、配偶者の選択と結婚生活への適応、子どもを育てること、職業に就き経済的に自立すること、市民としての責任を果たすこと、適した社会集団を見出すことが課題となります。 ⑤中年期、⑥老年期へと続きます。乳幼児期の「善悪の区別」と成人期の「経済的自立」は頻出キーワードです。
ピアジェの認知発達理論
ピアジェは子どもの思考の発達を4段階に分けました。感覚運動期(0〜2歳)は感覚と運動で外界を認識する時期、前操作期(2〜7歳)は象徴的思考が現れる一方で自己中心性が残る時期、具体的操作期(7〜11歳)は具体物について論理的に考えられる時期、形式的操作期(11歳以降)は抽象的・論理的思考が可能になる時期です。
家族発達論と家族周期
発達は個人だけでなく家族という単位にも当てはまります。家族発達論では、結婚から夫婦の死別までを家族周期(ファミリーライフサイクル)として段階的にとらえ、各段階に固有の家族発達課題があるとされます。新婚期では夫婦関係の確立、養育期では親役割の獲得、教育期では子どもの自立への支援、排出期(子どもの巣立ち)では夫婦関係の再構築といった課題が順に現れます。 そして壮年期から老年期前期にあたる時期には、自分たちの高齢の親の介護が大きな課題として加わります。この時期の家族発達課題は、親世代の老いや疾病に向き合いながら家族関係の再構築を行うことです。具体的には、誰がどのように介護を担うかという役割の再編、仕事や育児との両立を踏まえた介護体制の調整、きょうだい間での負担の分担、社会資源の活用に関する合意形成などが含まれます。介護を担う家族員にだけ負担が集中しないよう、家族全体で役割を見直すことが重要となります。看護師は、患者個人だけでなく、こうした家族周期上の課題を踏まえて家族を支援する視点が求められます。
主な発達のマイルストーン
乳児期の運動発達は順序性に従って進みます。首すわりは生後3〜4か月、寝返りは5〜6か月、**座位(ひとり座り)**は7〜8か月、つかまり立ちは9〜10か月、独歩は12〜15か月で獲得されるのが目安です。頭部から下方へ、体幹から末梢へという順序性に沿っていることを確認しましょう。
まとめ
発達理論では、エリクソンの心理社会的発達理論、ハヴィガーストの発達課題論、ピアジェの認知発達理論が三大柱です。エリクソンでは青年期=同一性vs同一性混乱、壮年期=生殖性vs停滞、老年期=統合vs絶望が重要です。ハヴィガーストでは乳幼児期の善悪の区別、成人期の経済的自立が頻出します。家族発達論では家族周期の各段階に固有の課題があり、壮年期〜老年期前期には高齢の親の介護にともなう家族関係の再構築(役割再編・介護体制の調整)が課題となります。成長・発達は頭尾方向・中枢末梢・粗大→微細・単純→複雑という順序性に従い、首すわりから独歩までのマイルストーンもこの法則に沿って進みます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
成長・発達の順序性のうち、首すわりから歩行へと進む方向はへである。
- 2.
成長・発達は体幹に近い部位から手指の先へと進み、これをの発達という。
- 3.
運動発達は走る・跳ぶといった大きな動きから手指の細かい動きへ進み、これを粗大運動からへという。
- 4.
エリクソンの発達理論で、青年期の心理社会的危機は同一性(アイデンティティ)対である。
- 5.
エリクソンの発達理論で、壮年期の心理社会的危機は対停滞である。
- 6.
エリクソンの発達理論で、老年期の心理社会的危機は対絶望である。
- 7.
エリクソンの発達理論で、乳児期に獲得される徳(人格的強さ)はであり、基本的信頼対不信を克服することで得られる。
- 8.
ハヴィガーストの発達課題論で、乳幼児期(0〜6歳)の課題には歩行・食事・会話の獲得のほか、がある。
- 9.
ハヴィガーストの発達課題論で、成人初期(壮年期)の課題には配偶者の選択や子どもを育てることのほか、職業に就きことが含まれる。
- 10.
乳児の運動発達で、生後3〜4か月ごろに獲得されるマイルストーンはである。
- 11.
家族発達論において、壮年期〜老年期前期に高齢の親の介護を担う段階では、役割再編や介護体制の調整などが家族発達課題となる。
