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体温調節の生理

人体の構造・機能 / 腎泌尿器・体液恒常性

解説

私たちの体温は、外気温が変化しても約37℃前後に保たれています。これは産熱と放熱のバランスが、脳の中枢によって精密に制御されているからです。看護師国家試験では、発熱時の患者観察や低体温症への対応など、体温調節の生理学的知識を前提とした出題が繰り返されます。ここでは、用語の意味から順を追って整理していきましょう。

体温調節中枢とセットポイント

体温調節の司令塔は視床下部にあります。特に視索前野・前視床下部の神経細胞が、現在の体温を感知し、目標とする体温(セットポイント)と比較しながら、産熱・放熱を指示しています。エアコンの設定温度のように、セットポイントが37℃に設定されていれば、体温がそれより低ければ産熱を増やし、高ければ放熱を促す仕組みです。

熱産生のしくみ

寒さを感じたとき、体は熱を作り出して体温を維持しようとします。最も大きな役割を担うのがシバリング(ふるえ熱産生)で、骨格筋が不随意に毎分数百回収縮することで、基礎代謝の4〜5倍もの熱を生み出します。

一方、ふるえを伴わない熱産生もあります。褐色脂肪組織に存在するUCP-1というタンパク質が、酸化のエネルギーを直接熱に変換します。これは特に新生児で重要で、シバリングが未熟な新生児はこの仕組みで体温を維持しています。さらに、甲状腺ホルモンやカテコラミンも代謝を亢進させて熱産生を増やします。

熱放散の4つの経路

体から熱を逃がす方法は4つに分類されます。

第一に放射(輻射)で、皮膚から赤外線として周囲の物体へ熱が伝わります。安静時の熱放散の約60%を占める、最も大きな経路です。第二に伝導で、接触している物体に直接熱が移ります。水は空気の約25倍も熱伝導率が高いため、濡れた衣服のままでいると体温が急速に奪われます。第三に対流で、空気や水などの流体の流れによって熱が運ばれます。第四に蒸発(気化)で、発汗や呼気中の水分が蒸発する際に気化熱を奪います。

体温調節の効果器と発汗の分類

中枢の指令を受けて働くのが効果器です。皮膚血管は拡張すれば放熱が促進され、収縮すれば熱が保持されます。汗腺、骨格筋、立毛筋もそれぞれ協調して働きます。

発汗には3種類あります。温熱性発汗は体温調節を目的とし、全身性に起こり、視床下部が関与します。精神性発汗は緊張や恐怖などの情動刺激で生じ、手掌・足底・腋窩に限局し、大脳皮質や辺縁系が関与します。これは体温調節とは無関係です。味覚性発汗は辛い食物を食べたときに顔面に起こります。

発熱のメカニズムと3つの相

感染や炎症が起きると、白血球からIL-1やIL-6、TNF-αといったサイトカインが放出されます。これらが視床下部に作用し、プロスタグランジンE2を介してセットポイントを通常より高く上げてしまいます。これが発熱の本質です。グラム陰性菌のエンドトキシンなどは外因性発熱物質、サイトカイン類は内因性発熱物質と呼ばれます。アスピリンやアセトアミノフェンといった解熱薬は、プロスタグランジンの合成を阻害してセットポイントを下げる薬です。

発熱は3つの相に分けて理解します。最初の発熱上昇期(チル期)は、セットポイントが現体温より高い状態で、体は寒いと感じます。悪寒戦慄、立毛(鳥肌)、皮膚血管収縮による末梢冷感、ふるえ、代謝亢進が現れます。次の極期(フラット期)はセットポイントと現体温が一致した状態で、悪寒が消え皮膚に熱感が出ます。最後の解熱期(クライシス)はセットポイントが下がり、現体温の方が高くなった状態で、発汗と皮膚血管拡張、熱感が生じます。

看護のポイントとして、上昇期は寒さを訴えるので保温に努め、極期以降は冷罨法と十分な水分補給を行います。

低体温症と急速な体温低下

冷水に浸かると体温が急激に低下するのは、水の熱伝導率が空気の約25倍と高いためです。低体温症では、濡れた衣服を取り除き、毛布・温水ブランケット・加温輸液などで受動的・能動的に復温します。深部体温が30℃以下になると心室細動のリスクが高まるため、患者の体動や処置は愛護的に行うことが原則です。

まとめ

体温調節は、視床下部のセットポイントを基準に、シバリングや褐色脂肪による産熱と、放射・伝導・対流・蒸発による放熱、そして血管運動や発汗を組み合わせて行われています。発熱はセットポイントの上昇という能動的な反応であり、上昇期・極期・解熱期で看護対応が変わることを押さえてください。低体温では水の高い熱伝導率と心室細動のリスクが鍵となります。これらの基本原理を理解しておくと、臨床判断や国試の応用問題にも対応しやすくなります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    体温調節の中枢は間脳のにあり、ここで基準となるが設定されている。

  2. 2.

    骨格筋の不随意な収縮によって熱を生み出す現象をといい、ふるえを伴わない熱産生はUCP-1をもつ組織で行われ、特に新生児で重要である。

  3. 3.

    熱放散のうち、皮膚から赤外線として周囲物体に熱が伝わる経路を、接触している物体に直接熱が移る経路をという。

  4. 4.

    空気や水などの流体の流れによって熱が運ばれる経路を、発汗や呼気中の水分が気化熱を奪う経路をという。

  5. 5.

    体温調節を目的として全身性に生じる発汗をといい、情動刺激により手掌・足底・腋窩に限局して起こる発汗をという。

  6. 6.

    感染時にはIL-1やIL-6などのサイトカインが視床下部に作用し、を介してセットポイントを上昇させることで発熱が生じる。

  7. 7.

    発熱上昇期(チル期)では、皮膚血管収縮や立毛、ふるえとともに、強い寒気であるが出現する。

  8. 8.

    解熱期(クライシス)ではセットポイントが現体温より低くなり、放熱のために皮膚血管が拡張してがみられる。

  9. 9.

    水は空気の約25倍の熱率をもつため、冷水浸漬や濡れた衣服では体温が急激に低下する。

  10. 10.

    深部体温が30℃以下になるとのリスクが高まるため、低体温症患者の体動や処置は愛護的に行う必要がある。

体温調節の生理」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。