額のしわで見抜く!末梢性顔面神経麻痺の正体
看護師国家試験 第114回 午前 第86問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
片側性の末性顔面神経麻痺(peripheral facial palsy)の症状はどれか。2つ選べ。
- 1.眼瞼が下垂する。
- 2.顔面の知覚が鈍い。
- 3.口角が垂れ下がる。
- 4.物が二重に見える。
- 5.額にできるしわに左右差がある。
対話形式の解説
博士
今日は脳神経の問題じゃ。顔面神経麻痺、しかも「末梢性」というのがポイントじゃぞ。顔面神経は何番の脳神経か覚えておるか?
アユム
えっと…第VII脳神経ですよね。
博士
その通り!顔面神経は主に表情筋を支配する運動神経じゃ。顔の表情を作るあらゆる筋肉、額の前頭筋、目を閉じる眼輪筋、口を動かす口輪筋などを動かしておる。
アユム
じゃあ麻痺するとそれらの筋肉が動かなくなるんですね。
博士
その通り。患側の顔面が下垂し、しわが消え、口元から食べ物がこぼれ、まばたきもうまくできなくなる。これらが選択肢3と5に対応するわけじゃ。
アユム
選択肢1の眼瞼下垂は違うんですか?目を閉じられないのに下垂しないの?
博士
ここが重要じゃ。眼瞼下垂は上眼瞼挙筋という、動眼神経(第III脳神経)支配の筋の麻痺で起こる。一方、顔面神経が支配する眼輪筋は「目を閉じる」筋じゃ。だから顔面神経麻痺では「目を閉じられない(兎眼)」のであって、目が下がるのではないのじゃ。
アユム
なるほど、開ける筋と閉じる筋で支配神経が違うんですね。
博士
その通り。瞼を上げる→動眼神経、瞼を閉じる→顔面神経、と覚えるとよい。
アユム
選択肢2の顔面知覚は?
博士
これは三叉神経(第V脳神経)の担当じゃ。顔面神経は運動性、三叉神経は感覚性、と役割分担されておる。顔面神経麻痺では知覚は保たれる。
アユム
選択肢4の複視は?
博士
複視は眼球を動かす筋(外眼筋)の麻痺で起こる。動眼神経・滑車神経・外転神経の3つが関わる。顔面神経は眼球運動には関与せん。
アユム
じゃあ末梢性と中枢性顔面神経麻痺の見分け方ってあるんですか?
博士
ここが超重要じゃ!前額部の額のしわが鑑別ポイントじゃ。中枢性麻痺(脳梗塞など)では前頭筋は両側支配のため、患側でも額にしわを寄せられる。一方、末梢性麻痺では患側の額にしわが寄らない。だから「額のしわの左右差」というのは末梢性の特徴的所見なのじゃ。
アユム
だから選択肢5が正解になるんですね!
博士
そういうことじゃ。末梢性の代表疾患を知っておるか?
アユム
ベル麻痺ですか?
博士
その通り!特発性の末梢性顔面神経麻痺をベル麻痺と呼ぶ。原因として単純ヘルペスウイルスの再活性化が想定されておる。もう一つ重要なのがラムゼイ・ハント症候群で、これは水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により、顔面神経麻痺に加えて耳介の帯状疱疹、難聴、めまいを伴う。
アユム
看護師としては何に注意すればいいですか?
博士
閉眼できないと角膜が乾燥して角膜障害を起こすから、人工涙液の点眼や眼軟膏、夜間の眼帯使用が重要じゃ。また食事時に患側の頬に食物が溜まるから誤嚥や口腔ケアに注意。表情の変化は患者の心理面に大きな影響を与えるからボディイメージへの配慮もな。
アユム
末梢神経麻痺は局所の問題のようで、生活全般に影響するんですね。
POINT
末梢性顔面神経麻痺は顔面神経(第VII脳神経)の末梢部障害により、患側の表情筋が広範囲に麻痺する状態で、口角下垂、鼻唇溝消失、閉眼困難(兎眼)、額のしわ寄せ不能などを特徴とします。代表疾患としてベル麻痺(単純ヘルペスウイルスの関与)とラムゼイ・ハント症候群(水痘・帯状疱疹ウイルスによる)があり、ステロイドと抗ウイルス薬の早期投与が治療の基本です。中枢性麻痺との決定的な鑑別点は前額部のしわ寄せが可能か否かであり、前頭筋は両側支配のため中枢性では保たれ、末梢性では麻痺します。眼瞼下垂(動眼神経)、顔面知覚(三叉神経)、複視(眼球運動神経)など他の脳神経症状との区別も重要で、看護では角膜保護、食事時の口腔ケア、表情変化に伴う心理的支援が求められます。
解答・解説
正解は 3 ・ 5 です
問題文:片側性の末性顔面神経麻痺(peripheral facial palsy)の症状はどれか。2つ選べ。
解説:正解は 3 の口角が垂れ下がると 5 の額にできるしわに左右差があるです。顔面神経(第VII脳神経)は顔面の表情筋を支配しており、末梢性麻痺ではその支配領域である患側顔面の上下半分すべてに筋力低下が生じます。具体的には額のしわ寄せができない、閉眼困難、口角下垂、鼻唇溝の消失などが現れます。中枢性麻痺との鑑別ポイントは前額部で、中枢性では両側支配のため額のしわ寄せが保たれるのに対し、末梢性では患側の額にしわが寄らず、左右差が明瞭になります。
選択肢考察
-
× 1. 眼瞼が下垂する。
眼瞼下垂は上眼瞼挙筋を支配する動眼神経(第III脳神経)麻痺やHorner症候群、重症筋無力症などで生じる。顔面神経麻痺では眼瞼が下垂するのではなく、閉眼困難(兎眼)が特徴となる。
-
× 2. 顔面の知覚が鈍い。
顔面の知覚は三叉神経(第V脳神経)が支配する。顔面神経は運動神経であり、顔面神経麻痺では知覚は保たれる。ただし耳介後部の痛みは伴うことがある。
-
○ 3. 口角が垂れ下がる。
顔面神経が支配する口輪筋・頬筋・口角下制筋などの表情筋が麻痺するため、患側の口角が下垂する。鼻唇溝が浅くなり、口笛が吹けない、食物が頬に溜まるなどの症状を伴う。
-
× 4. 物が二重に見える。
複視は外眼筋を支配する動眼神経・滑車神経・外転神経(第III・IV・VI脳神経)の障害で生じる。顔面神経は表情筋支配であり、眼球運動には関与しない。
-
○ 5. 額にできるしわに左右差がある。
末梢性顔面神経麻痺では前頭筋も麻痺するため、患側の額にしわを寄せられず左右差が明瞭になる。中枢性麻痺では前額部は両側支配のためしわ寄せが可能で、ここが鑑別の決め手となる。
末梢性顔面神経麻痺の代表疾患はベル麻痺(特発性、単純ヘルペスウイルス再活性化が関与)とラムゼイ・ハント症候群(水痘・帯状疱疹ウイルス再活性化、耳介帯状疱疹・難聴・めまいを伴う)。治療はステロイドと抗ウイルス薬を早期投与する。看護では兎眼による角膜障害予防のための点眼・眼軟膏使用、食事時の患側口腔への食物貯留対策、表情リハビリ、ボディイメージ変化への心理的支援が重要となる。中枢性(脳卒中など)と末梢性の鑑別は、前額部のしわ寄せの可否がカギとなる。
末梢性顔面神経麻痺の特徴は患側顔面の表情筋全体の麻痺。額のしわ寄せ不能と口角下垂を選び、眼瞼下垂(動眼神経)、顔面知覚(三叉神経)、複視(眼球運動神経)と区別する問題。
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