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高次脳機能障害——「失行」って結局なに?

看護師国家試験 第114回 午後 第46問 / 成人看護学 / 脳・神経系

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第46問

高次脳機能障害のある患者が買い物に行った際に示す行動で失行はどれか。

  1. 1.何を買いに来たのか忘れる。
  2. 2.買い物かごの使い方が分からない。
  3. 3.献立に合わせた買い物ができない。
  4. 4.スーパーと自宅の往復で道に迷う。

対話形式の解説

博士 博士

今日は高次脳機能障害の「失行」について学ぶぞ。買い物の場面で各症状がどう現れるかを比較して理解するのじゃ。

アユム アユム

高次脳機能障害って種類が多くて混乱します。

博士 博士

そうじゃのう。まず大きく分けて、注意障害・記憶障害・遂行機能障害・社会的行動障害が中核で、ほかに失語・失行・失認・半側空間無視・地誌的障害がある。

アユム アユム

今日のテーマ「失行」とはどんな症状ですか?

博士 博士

失行は「運動麻痺も感覚障害もないのに、目的に沿った動作ができない」状態じゃ。手は動くし力もあるのに、歯ブラシをどう使うか分からない、櫛で髪をとかせない——そんなイメージじゃ。

アユム アユム

選択肢を見ましょう。「何を買いに来たのか忘れる」は?

博士 博士

これは記憶障害、特に近時記憶(数分〜数日)の障害じゃ。海馬が中心となる側頭葉内側の障害で生じる。失行ではない。

アユム アユム

「買い物かごの使い方が分からない」は?

博士 博士

これがまさに失行——具体的には観念失行じゃ。道具の使い方そのものを失う。買い物かごを抱えるのか、引きずるのか、どこに商品を入れるのか分からなくなる。

アユム アユム

それは生活への影響が大きいですね。

博士 博士

うむ、本人は「動かそう」とはしているのに動作がちぐはぐになる。家族から見ると認知症と区別がつきにくいが、運動・感覚は保たれている点がポイントじゃ。

アユム アユム

「献立に合わせた買い物ができない」は?

博士 博士

これは遂行機能障害。前頭葉、特に背外側前頭前野の障害で生じる。「目標を立てる→計画する→順序立てて実行する→結果を評価する」の流れが崩れるのじゃ。料理の段取り、仕事の手順、家計管理など、複雑な日常活動が困難になる。

アユム アユム

「スーパーと自宅の往復で道に迷う」は?

博士 博士

これは地誌的障害。見慣れた道や場所が分からなくなる。右半球の頭頂後頭葉病変で多くみられる。

アユム アユム

整理すると、選択肢ごとに違う高次脳機能障害が並んでいるんですね。

博士 博士

その通り。出題者は「症状の鑑別」を問うておる。①記憶障害、②失行、③遂行機能障害、④地誌的障害——という4種類のセットじゃ。

アユム アユム

覚え方のコツはありますか?

博士 博士

「失行=道具」「記憶=忘れる」「遂行=段取り」「地誌=道に迷う」とキーワードで結びつけるとよい。さらに失行は左半球、地誌的障害は右半球と、半球の違いも押さえると応用が効くぞ。

アユム アユム

看護では支援のしかたも変わりますね。

博士 博士

うむ。失行には「動作を分解して見せる」「使い慣れた道具を使う」、遂行機能障害には「手順をリスト化する」、地誌的障害には「目印を増やす」といった環境調整が有効じゃ。

POINT

高次脳機能障害における「失行」とは、運動麻痺や感覚障害がないにもかかわらず目的に応じた行為が遂行できない状態を指し、本問では「買い物かごの使い方が分からない」がこれに該当します。「何を買いに来たのか忘れる」は記憶障害、「献立に合わせた買い物ができない」は遂行機能障害、「道に迷う」は地誌的障害と、それぞれ異なる症状です。失行は左半球頭頂葉病変で多く生じ、観念失行(道具使用の障害)と観念運動失行(命令動作の障害)に分かれます。看護師は症状の種類を正確に見極めたうえで、動作の分解提示や環境調整など個別性のある支援を行うことが求められます。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:高次脳機能障害のある患者が買い物に行った際に示す行動で失行はどれか。

解説:正解は 2 「買い物かごの使い方が分からない。」です。失行(apraxia)は、運動麻痺・感覚障害・協調運動障害・意識障害がないのに、目的に応じた行為を行えなくなる高次脳機能障害です。多くは左半球頭頂葉病変で生じます。「買い物かごの使い方が分からない」は、道具の使用方法そのものを失う「観念失行」の典型例で、選択肢の中で唯一「行為そのものができない」に該当します。

選択肢考察

  1. × 1.  何を買いに来たのか忘れる。

    数分前の出来事を保持できない近時記憶障害(記憶障害)の症状。失行ではない。

  2. 2.  買い物かごの使い方が分からない。

    道具の使い方が分からなくなる「観念失行」の典型。運動も感覚も保たれているのに、目的に沿った行為が遂行できないのが失行の本質。

  3. × 3.  献立に合わせた買い物ができない。

    計画立案・優先順位付け・段取りができない「遂行機能障害(実行機能障害)」の症状。前頭葉機能の障害で生じる。

  4. × 4.  スーパーと自宅の往復で道に迷う。

    見慣れた道で迷う「地誌的障害(地誌的見当識障害)」の症状。右半球頭頂後頭葉病変で多い。

高次脳機能障害の主な症状を整理しよう。①注意障害(集中できない、ミスが多い)、②記憶障害(覚えられない、思い出せない)、③遂行機能障害(計画・段取りができない)、④社会的行動障害(怒りっぽい、依存的)、⑤失語(聞く・話す・読む・書くの障害)、⑥失行(道具の使用ができない)、⑦失認(見えているのに何か分からない)、⑧半側空間無視(片側を見落とす)、⑨地誌的障害(道に迷う)。失行は観念失行(道具の使用ができない)と観念運動失行(命令された動作ができない)に大別される。

高次脳機能障害の症状の中から「失行」に該当する行動を見分ける問題。記憶障害・遂行機能障害・地誌的障害との違いを押さえる。