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若年突然死の影!肥大型心筋症の『硬い心臓』が起こすこと

看護師国家試験 第112回 午後 第28問 / 成人看護学 / 循環器系

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第28問

肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy)について正しいのはどれか。

  1. 1.ウイルス感染が主な病因である。
  2. 2.拡張障害が問題となる。
  3. 3.左室内腔は拡大する。
  4. 4.弁膜に肥厚を認める。

対話形式の解説

博士 博士

今日は肥大型心筋症、HCMについて学ぶぞ。若いアスリートの突然死の原因としても有名じゃ。

アユム アユム

心筋症ってどんな分類があるんですか?

博士 博士

主に3つ。①肥大型心筋症(HCM)心筋が厚くなる、②拡張型心筋症(DCM)心室が広がり収縮が弱くなる、③拘束型心筋症(RCM)心筋が硬くなり拡張しにくい、じゃ。

アユム アユム

肥大型はどう始まるんですか?

博士 博士

約半数が家族性で、サルコメアという筋肉の収縮単位を作る蛋白の遺伝子変異が原因じゃ。βミオシン重鎖やミオシン結合蛋白Cなど、現在までに多数の原因遺伝子が同定されておる。

アユム アユム

ウイルス感染じゃないんですね。

博士 博士

そうじゃ。ウイルス性心筋炎や一部の拡張型心筋症ではウイルスが関わるが、HCMは遺伝子病と考えるのがよい。

アユム アユム

心筋が厚くなると何が困るんですか?

博士 博士

厚く硬い心筋は拡張期にうまく広がれない。つまり心室が血液を『吸い込む』動きが悪くなる。これが拡張障害(拡張不全)じゃ。

アユム アユム

収縮はできるんですか?

博士 博士

うむ、収縮力はむしろ保たれているか亢進しているくらいじゃ。駆出率(EF)は正常〜高値が多い。問題なのは収縮ではなく拡張の方なんじゃ。

アユム アユム

左室の内腔は広がるんですか?狭くなるんですか?

博士 博士

肥厚するのは心筋の壁で、内腔は逆に狭くなる。拡張型心筋症では内腔がぼわっと広がるので、そこが対照的じゃ。

アユム アユム

閉塞性肥大型心筋症というのも聞いたことがあります。

博士 博士

HOCMじゃな。心室中隔が特に厚くなると左室流出路が狭くなり、さらに収縮期に僧帽弁前尖が中隔側に引き寄せられるSAM現象が起こる。これで流出路狭窄と僧帽弁逆流が合併する。

アユム アユム

症状はどんなものがありますか?

博士 博士

無症候のこともあれば、労作時呼吸困難、胸痛、動悸、失神、最悪突然死まで起こす。若いアスリートが試合中に倒れるケースでは、HCMが原因のことがある。

アユム アユム

診断はどうするんですか?

博士 博士

心エコーで左室壁厚15mm以上、非対称性中隔肥厚が典型的所見。心電図で左室高電位、異常Q波、陰性T波。心臓MRIで詳細な評価をする。家族歴があれば遺伝子検査も考慮する。

アユム アユム

治療は?

博士 博士

β遮断薬やベラパミルなどのCa拮抗薬で拡張機能を助ける。HOCMで流出路狭窄が強ければ中隔切除術(Morrow手術)やPTSMA、致死的不整脈リスクが高ければICDを植え込む。脱水や過度の運動は狭窄を悪化させるので生活指導も大事じゃ。

アユム アユム

拡張型心筋症と対にして覚えると整理しやすいですね。

POINT

肥大型心筋症は主にサルコメア蛋白の遺伝子変異により心筋が異常に肥厚する常染色体顕性遺伝の疾患で、厚く硬くなった心室が拡張期に十分広がれないことによる『拡張障害』が病態の中心です。内腔はむしろ狭小化し、収縮力は保たれる点で、内腔が拡大し収縮力が低下する拡張型心筋症と対照的です。閉塞性肥大型心筋症ではSAM現象による左室流出路狭窄と僧帽弁逆流を合併し、労作時呼吸困難や失神、若年突然死の原因にもなります。心エコー・MRIによる診断、β遮断薬やCa拮抗薬による薬物療法、ICDや中隔縮小術まで、対応の幅を理解することが重要です。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy)について正しいのはどれか。

解説:正解は 2 の『拡張障害が問題となる』です。肥大型心筋症(HCM)は左室心筋、特に心室中隔が異常に肥厚する疾患で、肥厚した心筋は硬くなるため拡張期に心室がうまく広がらず、血液の充満が障害されます。収縮力自体はむしろ保たれる/亢進していることも多く、問題の中心は『拡張障害(拡張不全)』です。

選択肢考察

  1. × 1.  ウイルス感染が主な病因である。

    肥大型心筋症の約半数はサルコメア蛋白(βミオシン重鎖、ミオシン結合蛋白C、トロポニンTなど)の遺伝子変異による家族性で、常染色体顕性(優性)遺伝が主。ウイルス感染はウイルス性心筋炎や拡張型心筋症の一部原因であり、HCMの主因ではない。

  2. 2.  拡張障害が問題となる。

    厚く硬くなった心筋は拡張期に十分広がれず、心室への血液充満が低下する。左室充満圧上昇・肺うっ血・労作時呼吸困難・不整脈・失神の原因となる。

  3. × 3.  左室内腔は拡大する。

    心筋肥厚により左室内腔はむしろ狭小化する。左室内腔が拡大するのは拡張型心筋症(DCM)の特徴。

  4. × 4.  弁膜に肥厚を認める。

    弁膜そのものの肥厚は肥大型心筋症の所見ではない。ただし閉塞性肥大型心筋症(HOCM)では肥厚した心室中隔に僧帽弁前尖が収縮期に引き寄せられるSAM現象が起こり、左室流出路狭窄と僧帽弁閉鎖不全を生じることがある。

肥大型心筋症は指定難病で、遺伝子変異によるサルコメア異常が主因。症状は無症候性から労作時呼吸困難・胸痛・失神・突然死まで幅広く、若年者(スポーツ選手)の突然死原因として有名。診断は心エコー(左室壁厚≧15mm、非対称性中隔肥厚)、心電図(異常Q波・左室高電位・陰性T波)、心臓MRIで行う。治療はβ遮断薬やCa拮抗薬(ベラパミル)で拡張機能を改善し、流出路狭窄が強ければ外科的中隔切除術(Morrow手術)や経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)、致死的不整脈リスクが高ければ植込み型除細動器(ICD)を考慮する。脱水や過度の運動は狭窄を悪化させるので生活指導も重要。

心筋症の分類と各型の病態を問う問題。『肥大型=拡張障害、拡張型=収縮障害』という対比と、肥厚部位(心筋)・内腔変化(狭小化)・主病因(遺伝子変異)を整理する。