開心術後の心タンポナーデを見逃さないために
看護師国家試験 第113回 午後 第83問 / 成人看護学 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
開心術後の心タンポナーデ(cardiac tamponade)で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.徐脈
- 2.心音減弱
- 3.心拍出量の増加
- 4.中心静脈圧の上昇
- 5.吸気時収縮期圧の10mmHg上昇
対話形式の解説
博士
今日は心タンポナーデの典型所見をおさらいするぞ。Beckの三徴、言えるかの?
サクラ
頸静脈怒張、血圧低下、心音減弱ですね。
博士
よく覚えておる。この三つを押さえれば選択肢はすぐ絞れるんじゃ。
サクラ
心音減弱は選択肢2、中心静脈圧上昇は選択肢4で、まさに三徴に相当しますね。
博士
そのとおり。心嚢に液体が貯まると心臓が外から抱き締められる状態になり、拡張できなくなるんじゃ。
サクラ
拡張できなければ前負荷が減って、心拍出量は低下するわけですね。
博士
そうじゃ。選択肢3の『心拍出量の増加』は真逆じゃから誤り。
サクラ
徐脈という選択肢もありましたが、これも違いますよね。
博士
心拍出量低下に対して交感神経が反応し、まず頻脈になる。徐脈は最終段階のbad signじゃ。
サクラ
選択肢5の奇脈については、上昇ではなく低下でしたよね。
博士
ご明察。吸気時に胸腔内圧が下がると左心への還流が妨げられ、収縮期血圧が10mmHg以上『低下』するのが奇脈じゃ。
サクラ
開心術後にタンポナーデを疑うポイントはなんでしょう?
博士
まずドレーンの排液量の急な減少と、CVP上昇、血圧低下、尿量減少の組み合わせに注目するんじゃ。
サクラ
凝血塊でドレーンが詰まると、出血が心嚢に溜まってしまうのですね。
博士
だからこそ看護師のミルキングや閉塞チェックが命を守るんじゃ。
サクラ
診断は心エコーで、治療は心嚢穿刺か再開胸ドレナージになるのですね。
博士
対応は時間との勝負じゃ。CCUでは常にベッドサイドエコーが使えるよう準備しておくんじゃぞ。
POINT
心タンポナーデの典型所見はBeckの三徴(血圧低下、頸静脈怒張=CVP上昇、心音減弱)と反射性頻脈、奇脈(吸気時SBPが10mmHg以上低下)です。開心術後は術後出血とドレーン閉塞が誘因となり、ドレーン観察とCVP・血圧の連続監視が早期発見の要となります。治療は心嚢穿刺または再開胸です。
解答・解説
正解は 2 ・ 4 です
問題文:開心術後の心タンポナーデ(cardiac tamponade)で正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は2(心音減弱)と4(中心静脈圧の上昇)です。心嚢内に血液や心嚢液が急速に貯留すると心臓の拡張が制限され、Beckの三徴(頸静脈怒張=中心静脈圧上昇、血圧低下、心音減弱)が出現します。
選択肢考察
-
× 1. 徐脈
心拍出量低下を補うため交感神経が亢進し、反射性の頻脈となるのが一般的です。徐脈は末期のプレアレスト所見となります。
-
○ 2. 心音減弱
心嚢液が緩衝材となって心音が聴取しづらくなります。Beckの三徴の一つとして有名です。
-
× 3. 心拍出量の増加
心室の拡張が制限され前負荷が低下するため、心拍出量はむしろ減少しショックに陥ります。
-
○ 4. 中心静脈圧の上昇
右心系への還流が妨げられ、頸静脈怒張や中心静脈圧(CVP)の上昇を生じます。
-
× 5. 吸気時収縮期圧の10mmHg上昇
心タンポナーデでは吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上『低下』する奇脈(paradoxical pulse)が特徴で、『上昇』ではありません。
開心術後は術後出血がドレーンから排出されず心嚢に貯留することで急性心タンポナーデを来すことがあります。胸腔ドレーンの急激な排液減少、CVP上昇、尿量減少、血圧低下は危険サインです。診断は心エコーが迅速で、治療は心嚢穿刺または再開胸ドレナージが必要となります。看護師はドレーン閉塞の予防とミルキング、バイタルサインの連続監視を担います。
心タンポナーデの典型所見(Beckの三徴)と奇脈の向きを正確に理解し、術後合併症として早期発見できるかを問う設問です。
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