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飲酒中の上腹部痛+嘔吐——疑うべき疾患と優先検査

看護師国家試験 第114回 午後 第50問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第50問

Aさん(42歳、男性)は、同僚との飲酒中に上腹部から背部の激しい痛みと嘔吐があり、救急搬送された。搬送時の心電図には異常を認めない。 Aさんの状態をアセスメントするための血液検査項目で優先度が高いのはどれか。

  1. 1.アルブミン
  2. 2.トロポニン
  3. 3.中性脂肪
  4. 4.リパーゼ

対話形式の解説

博士 博士

今日は救急の現場でよくある事例から学ぶぞ。Aさんは42歳男性、飲酒中に上腹部から背部への激痛と嘔吐があり救急搬送された。心電図は正常じゃ。

アユム アユム

背部に放散する痛み…まず心筋梗塞を疑いますよね。

博士 博士

その通り。急性心筋梗塞や大動脈解離は致死的じゃから真っ先に除外する。だが心電図に異常がないとあるから、心筋梗塞の可能性は下がる。

アユム アユム

じゃあ次は何を疑いますか?

博士 博士

「飲酒中」「上腹部から背部の激痛」「嘔吐」——このトライアドはまさに急性膵炎、特にアルコール性膵炎の典型像じゃ。

アユム アユム

なぜ背中まで痛くなるんですか?

博士 博士

膵臓は後腹膜にあって脊柱の前を横切るように位置しておる。炎症が後腹膜に広がると、痛みが背中に放散するのじゃ。患者は前かがみになると楽になる「胸膝位」をとることが多い。

アユム アユム

じゃあ血液検査で何を見ますか?

博士 博士

選択肢を見ていこう。「アルブミン」は栄養状態や肝合成能の指標で、膵炎の診断には直接使わぬ。重症度評価で参考になる程度じゃ。

アユム アユム

「トロポニン」は?

博士 博士

心筋特異的マーカーで心筋梗塞診断の主役じゃ。じゃが心電図正常で症状から膵炎が強く疑われる本例では優先度が下がる。

アユム アユム

「中性脂肪」はどうですか?

博士 博士

高トリグリセライド血症(1000mg/dL以上)は膵炎の原因にもなる重要因子じゃが、急性期の診断にはリパーゼが優先。原因検索の段階で確認する補助項目じゃな。

アユム アユム

残るリパーゼが正解ですね。なぜリパーゼがそんなに重要なんですか?

博士 博士

リパーゼは膵腺房細胞から分泌される脂質分解酵素で、膵特異性が高い。アミラーゼも膵酵素じゃが、唾液腺や卵巣・腸管からも出るため特異性ではリパーゼが上回るのじゃ。

アユム アユム

上昇期間も違うんですか?

博士 博士

アミラーゼは発症後数時間で上昇し3〜5日で正常化するのに対し、リパーゼは7〜10日上昇が続く。受診が遅れた患者でも捕まえやすいのが利点じゃ。

アユム アユム

診断基準も教えてください。

博士 博士

厚生労働省の急性膵炎診断基準は3項目——①上腹部の急性腹痛と圧痛、②膵酵素上昇、③画像で膵炎所見——のうち2項目以上を満たし他疾患を除外、じゃ。

アユム アユム

重症度評価はどうしますか?

博士 博士

予後因子9項目(BE、BUN、Hct、Caなど)と造影CT Gradeを組み合わせる。重症と判定されれば集中治療下で大量輸液・栄養管理・必要時インターベンションを行う。

アユム アユム

看護師としては痛みの観察と全身管理が重要ですね。

博士 博士

うむ。バイタルサイン、尿量、呼吸状態、ショック徴候を綿密にチェックし、飲水・絶食指示の徹底、疼痛コントロール、家族への状況説明など多角的に関わるのが急性膵炎看護じゃ。

POINT

飲酒中に上腹部〜背部の激痛と嘔吐を呈し心電図に異常がないAさんは、急性膵炎(アルコール性)が最も疑われ、優先度の高い血液検査は「リパーゼ」です。リパーゼは膵腺房細胞由来で膵特異性が高く、上昇期間も7〜10日と長いため、診断・経過観察ともに有用です。アルブミンは栄養指標、トロポニンは心筋障害マーカー、中性脂肪は原因検索の補助で、いずれも急性期の診断順位はリパーゼに劣ります。看護師は心筋梗塞・大動脈解離など致死的疾患の除外に加え、急性膵炎の重症度評価とショック・多臓器不全の早期発見、絶食・大量輸液・疼痛コントロールといった集学的管理を支える役割を担います。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:Aさん(42歳、男性)は、同僚との飲酒中に上腹部から背部の激しい痛みと嘔吐があり、救急搬送された。搬送時の心電図には異常を認めない。 Aさんの状態をアセスメントするための血液検査項目で優先度が高いのはどれか。

解説:正解は 4 「リパーゼ」です。Aさんの「飲酒中の上腹部から背部への激痛+嘔吐」「心電図異常なし」という臨床像は急性膵炎(特にアルコール性)を強く示唆します。リパーゼは膵腺房細胞由来の脂質分解酵素で、急性膵炎では血中濃度が顕著に上昇します。アミラーゼに比べて膵臓特異性が高く、上昇期間も長い(発症後7〜10日)ため、急性膵炎の診断・モニタリングに優先度が高い検査項目です。

選択肢考察

  1. × 1.  アルブミン

    血清アルブミンは栄養状態・肝合成能・血管透過性の評価指標。急性膵炎の重症度評価(CRP、Ca、BUNなど)の文脈では参考になるが、診断には直接結びつかない。

  2. × 2.  トロポニン

    心筋トロポニンは心筋障害(心筋梗塞など)の特異的マーカー。心電図に異常がないため心筋梗塞の可能性は低く、また症状が膵炎を強く疑わせるため優先度は低い。

  3. × 3.  中性脂肪

    高トリグリセライド血症(特に1000mg/dL以上)は急性膵炎の原因の一つだが、急性期の診断指標としてはリパーゼが優先される。原因検索の段階で評価する補助項目。

  4. 4.  リパーゼ

    膵腺房細胞由来で膵臓特異性が高く、急性膵炎で著明上昇する。アミラーゼと併せて測定するが、リパーゼの方が特異度・持続性に優れ、急性膵炎の診断・経過観察に最適。

急性膵炎の診断は厚生労働省の診断基準で「①上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある、②血中または尿中に膵酵素の上昇がある、③超音波・CT・MRIで急性膵炎に伴う異常所見がある——3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患・急性腹症を除外したもの」とされる。原因はアルコール性と胆石性で約80%を占め、男性はアルコール性、女性は胆石性が多い。重症度判定には予後因子9項目(BE、BUN、Hct、Caなど)と造影CT Gradeを用い、重症度に応じて集中治療管理(早期からの大量輸液、栄養管理、抗菌薬、必要時インターベンション)を行う。

アルコール多飲中に発症した上腹部〜背部痛+嘔吐から急性膵炎を想起し、診断に最も有用な血液検査項目を選ぶ問題。リパーゼの膵特異性を理解する。