胃切除後に忘れたころやってくる貧血の正体
看護師国家試験 第113回 午後 第78問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系
国試問題にチャレンジ
胃癌(gastric cancer)の胃切除術後5年ほどで欠乏し貧血を起こさせるのはどれか。
- 1.ビタミンA
- 2.ビタミンB 1
- 3.ビタミンB 12
- 4.ビタミンC
- 5.ビタミンK
対話形式の解説
博士
今日は胃癌術後5年目に出てくる貧血について考えるぞ。犯人は誰かわかるかの?
アユム
時間が経ってから現れる貧血…ビタミンB12でしょうか?
博士
お見事じゃ。鍵を握るのは胃壁細胞から出る『内因子』という糖タンパクじゃ。
アユム
内因子はどこで働くのですか?
博士
食事中のビタミンB12と結合して、回腸末端の特異的受容体で吸収されるんじゃ。内因子が無いとB12はただ通り過ぎてしまう。
アユム
でも術直後ではなく5年後というのが不思議です。
博士
それは肝臓が2〜5mgものB12を貯蔵しているからじゃ。毎日の必要量はμg単位じゃから、枯渇するのに年単位かかるんじゃ。
アユム
だから術後しばらくは貧血が現れないのですね。
博士
そのとおり。欠乏すると赤芽球が大型化する巨赤芽球性貧血、別名悪性貧血が出現するぞ。
アユム
MCVが高い大球性貧血として検査値に現れるわけですね。
博士
さらに神経症状にも注意じゃ。末梢神経や脊髄後索が障害され、しびれや深部感覚低下が出ることがある。
アユム
舌がつるつるして痛むHunter舌炎もこの病気の特徴でしたね。
博士
よう覚えておった。治療はシアノコバラミン筋注が基本で、内服では効果が乏しいのがポイントじゃ。
アユム
胃切除後は鉄欠乏性貧血も起こりやすいので、両方を見比べて評価する必要がありそうですね。
博士
そのとおり。年1回の採血フォローが術後管理の鉄則じゃ。
POINT
胃切除後は内因子欠乏によりビタミンB12が吸収できなくなり、肝臓貯蔵を消費し尽くす約5年後に巨赤芽球性貧血が出現します。大球性貧血や神経症状、舌炎が特徴で、治療はビタミンB12の筋注です。看護師は鉄欠乏性貧血と併せ、長期的な栄養フォローを担う役割があります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:胃癌(gastric cancer)の胃切除術後5年ほどで欠乏し貧血を起こさせるのはどれか。
解説:正解は3(ビタミンB12)です。胃壁細胞から分泌される内因子はビタミンB12の回腸吸収に必須で、胃全摘により内因子が途絶えると、肝臓の貯蔵が尽きる数年後に巨赤芽球性貧血(悪性貧血)が出現します。
選択肢考察
-
× 1. ビタミンA
ビタミンAは脂溶性で視覚や上皮維持に関与しますが、胃切除で特異的に欠乏する栄養素ではなく貧血の原因にもなりません。
-
× 2. ビタミンB 1
ビタミンB1欠乏はウェルニッケ脳症や脚気を招きますが、赤血球産生への直接的影響は小さく、胃切除後5年で貧血を呈する典型栄養素ではありません。
-
○ 3. ビタミンB 12
胃切除により内因子分泌が途絶し、肝臓貯蔵量(2〜5mg)を消費し尽くす数年後に巨赤芽球性貧血が顕在化します。定期的な筋注補充が必要です。
-
× 4. ビタミンC
ビタミンCは鉄吸収を助けますが、胃切除後に典型的に欠乏して貧血を招く因子ではありません。欠乏の主症状は壊血病です。
-
× 5. ビタミンK
ビタミンKは血液凝固因子の合成に関与し、欠乏すると出血傾向は起こりますが貧血の直接原因にはなりません。
胃切除後の貧血には、早期に現れる鉄欠乏性貧血(鉄の吸収低下)と、数年後に現れるビタミンB12欠乏性の巨赤芽球性貧血があります。後者では舌炎(Hunter舌炎)、しびれ、深部感覚障害などの神経症状が出現しうるため、定期的な末梢血・MCV・ビタミンB12値の確認と、必要時のシアノコバラミン筋注が行われます。
胃切除後に時間差で出現する二大貧血のうち、内因子欠乏による巨赤芽球性貧血の原因栄養素を同定できるかを問う設問です。
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