体位ドレナージの基本と右中下肺野への対応
看護師国家試験 第105回 午前 第92問 / 成人看護学 / 呼吸器系
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(64歳、女性)は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)で通院加療中である。1週前から感冒様症状があり市販薬を服用し経過をみていたが、呼吸困難を訴えた後、反応が鈍くなり救急車で搬送された。Aさんは肩呼吸をしており、発汗が著明で口唇は乾燥している。体温38.3℃、呼吸数35/分、脈拍108/分、血圧96/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉89%であった。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-30。動脈血液ガス分析では動脈血酸素分圧〈PaO2〉60Torr、動脈血炭酸ガス分圧〈PaCO2〉68Torr、pH7.29であった。 Aさんは、胸部エックス線写真で右中下肺野の浸潤影が認められ、膿性の痰が吸引されている。 このときの体位ドレナージで最も効果的なのはどれか。
- 1.右30°側臥位
- 2.左30°側臥位
- 3.右前傾側臥位
- 4.左前傾側臥位
- 5.腹臥位
対話形式の解説
博士
体位ドレナージは重力を利用して気管支内の分泌物を末梢から中枢へ流し、排痰を促す技術じゃ。原則は一つ、「病変部位を高い位置にする」ことじゃよ。
アユム
Aさんは胸部エックス線で右中下肺野に浸潤影があり、膿性痰も吸引されているんですね。どの体位が良いのでしょう。
博士
正解は4の左前傾側臥位じゃ。右肺を上にするために左を下にし、さらに前傾を加えることで中葉や下葉の気管支が下向きになる。
アユム
なぜ前傾を加える必要があるのですか。
博士
中葉や下葉の気管支は前方や外側に走行しておる。仰向けや単純な側臥位では重力の方向と気管支の走行が一致せず、排痰効率が落ちるのじゃ。前傾することで気管支がストンと下向きになるわけじゃな。
アユム
1の右30°側臥位や3の右前傾側臥位はどうですか。
博士
どちらも病変のある右肺が下になるため逆効果じゃ。分泌物が下側の肺にさらに貯留し、無気肺や換気血流不均等を悪化させるぞ。
アユム
2の左30°側臥位は右肺が上になりますよね。
博士
方向は合っておるが、前傾がないため中下葉への効果が弱い。30°の単純側臥位では重力のベクトルが弱いのじゃ。
アユム
5の腹臥位はどうでしょう。
博士
腹臥位は下葉の背側区、特にS6やS10の排痰に有効じゃが、右中下肺野全体を見ると左前傾側臥位に軍配が上がる。しかも挿管中の腹臥位は実施のハードルが高い。
アユム
分かりました。体位ドレナージは1回どのくらい続けるのですか。
博士
10〜20分が目安じゃ。体位変換後にスクイージングや吸引を組み合わせると効果的じゃよ。ただし食後2時間以内、頭蓋内圧亢進、循環動態不安定時は避ける。
アユム
Aさんは血圧96/70と低めですから、循環動態のモニタリングをしながら慎重に行う必要がありますね。
博士
その通り。SpO2や脈拍の変化を見ながら、苦しそうなら中止する判断も大切じゃ。
アユム
肺の解剖と重力の向きをセットで覚えます。
POINT
体位ドレナージは重力を利用して末梢気管支の分泌物を中枢に移動させる排痰法で、病変部位を高くするのが原則です。右中下肺野に浸潤影のあるAさんには、右肺を上にしさらに前傾を加えて中下葉の気管支を下向きにする左前傾側臥位が最適です。1体位10〜20分保持し、スクイージングや吸引を組み合わせて実施します。循環動態や呼吸状態のモニタリングを並行して行うことが安全管理上重要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(64歳、女性)は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)で通院加療中である。1週前から感冒様症状があり市販薬を服用し経過をみていたが、呼吸困難を訴えた後、反応が鈍くなり救急車で搬送された。Aさんは肩呼吸をしており、発汗が著明で口唇は乾燥している。体温38.3℃、呼吸数35/分、脈拍108/分、血圧96/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉89%であった。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-30。動脈血液ガス分析では動脈血酸素分圧〈PaO2〉60Torr、動脈血炭酸ガス分圧〈PaCO2〉68Torr、pH7.29であった。 Aさんは、胸部エックス線写真で右中下肺野の浸潤影が認められ、膿性の痰が吸引されている。 このときの体位ドレナージで最も効果的なのはどれか。
解説:正解は 4 です。体位ドレナージは重力を利用して分泌物を末梢気管支から中枢気管支へ移動させる排痰法で、病変部位を高い位置にすることが原則です。Aさんは右中下肺野に浸潤影があるため、右肺を上にする左側臥位に前傾を加えて中下肺葉の気管支が下方に向くようにする左前傾側臥位が最も効果的です。
選択肢考察
-
× 1. 右30°側臥位
右側臥位では病変のある右肺が下になり、分泌物がさらに貯留するため排痰効果が期待できません。
-
× 2. 左30°側臥位
右肺を上にする点は正しいですが、前傾を加えないと中下葉の気管支が十分に下方を向かず、排痰効率が落ちます。
-
× 3. 右前傾側臥位
病変側の右肺が下になるため、重力で分泌物を移動させるという原則に反します。
-
○ 4. 左前傾側臥位
右中下肺野の分泌物を重力で気管支から中枢へ移動させるには、右肺を上にして前傾をつけることが最も有効です。右中葉・下葉に対応する標準的な体位ドレナージ肢位です。
-
× 5. 腹臥位
腹臥位は背側(下葉後区)の排痰に有効ですが、右中下肺野全体に対する効率は左前傾側臥位に劣ります。挿管中の患者では実施困難な点もあります。
体位ドレナージの原則は「病変部を高く、気管支の走行が下向きになるように体位をとる」です。1体位あたり10〜20分程度保持し、体位変換後に咳嗽や吸引、スクイージングを組み合わせると効果的です。実施前後は呼吸状態・SpO2・循環動態を観察し、食後2時間以内・頭蓋内圧亢進・循環動態不安定時は禁忌または慎重に行います。
肺の区域解剖と体位ドレナージの原則を理解し、右中下肺野病変に対する最適な排痰肢位を選択できるかを問うています。
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