『聴く』が看護の出発点——治療的コミュニケーションの5原則
看護師国家試験 第109回 午後 第19問 / 必修問題 / 看護の基本技術
国試問題にチャレンジ
患者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。
- 1.否定的感情の表出を受けとめる。
- 2.沈黙が生じた直後に会話を終える。
- 3.看護師が伝えたいことに重点をおく。
- 4.患者の表情よりも言語による表現を重視する。
対話形式の解説
博士
今日は看護の基本、コミュニケーションじゃ。患者との関わりで最も適切な選択肢はどれかの?
サクラ
『否定的感情の表出を受けとめる』だと思います!
博士
正解じゃ。なぜ受けとめることが大切か、説明できるかの?
サクラ
ええと…否定されると患者さんが話せなくなるから?
博士
その通り。看護師に怒りや悲しみをぶつけられたとき、反射的に否定したり励ましたりしたくなるが、それでは感情の行き場がなくなる。受けとめる=評価せずに存在を認めることじゃ。
サクラ
具体的にはどう関わればいいんですか?
博士
技法でいえば『傾聴』『反映』『開かれた質問』『要約』『沈黙の活用』じゃ。特に反映は『つらかったんですね』のように相手の感情を言葉にして返す技法で、共感を伝えるのに有効。
サクラ
沈黙って気まずくて、つい話しかけたくなります。
博士
そこが大事な視点。沈黙は患者が考えをまとめていたり、感情を味わっていたりする時間じゃ。黙ってそばにいる『ともにある』姿勢が、言葉以上のケアになる。
サクラ
非言語コミュニケーションも重要ですよね?
博士
メラビアンの法則では、矛盾する情報が同時にあるとき人は言葉より表情・声のトーンを信頼するという結果が出ておる。つまり表情・視線・姿勢・間合いも情報の宝庫じゃ。
サクラ
患者が『大丈夫』と言いながら表情が曇っているとき、そこに本音があるわけですね。
博士
そう。非言語と言語のズレに気づけるのが熟練看護師の観察眼じゃ。
サクラ
禁忌のコミュニケーションはありますか?
博士
安易な保証『大丈夫ですよ』の乱発、評価的発言、説教、話題そらしなどじゃ。つい励まそうとして出てしまう言葉ほど、治療関係を損なうことがある。
サクラ
悪い知らせを伝える場面で使うプロトコルもありますよね?
博士
SPIKESやSHAREじゃな。設定準備・患者の認識・招待・情報提供・感情への対応・戦略と要約のステップで進める。看護師も同席してフォローする役割を担う。
サクラ
コミュニケーションは単なる話術じゃなく、治療の一部なんですね。
博士
まさに。薬も処置も大事じゃが、安心して話せる関係性こそが最強の治療環境じゃ。
POINT
治療的コミュニケーションの核心は『受容と共感』であり、否定的感情の表出を評価せず受けとめることが信頼関係の土台となります。沈黙は感情を整理する大切な時間として尊重し、表情・視線・姿勢といった非言語的要素も言語と統合してアセスメントすることが重要です。看護師が伝えたいことを押しつけるのではなく、まず患者のニーズ・価値観・理解度を傾聴して把握する姿勢が患者中心のケアを支えます。SPIKESやSHAREといった会話プロトコル、ペプロウの看護師-患者関係理論などの枠組みも活用し、コミュニケーションを治療の一部と位置づけて実践することが現代看護の基本です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:患者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。治療的コミュニケーションの基本は『受容と共感』。患者が不安・怒り・悲しみといった否定的感情を表出したとき、それを評価したり打ち消したりせずに『そのまま受けとめる』ことが信頼関係の土台となる。否定的感情は押さえ込めば身体化(不眠・疼痛増強・食欲低下)や拒絶行動につながる一方、安全に表出できれば対処能力が回復し、治療への参加度も高まる。
選択肢考察
-
○ 1. 否定的感情の表出を受けとめる。
傾聴・共感・非批判的態度による受容は看護基本技術の柱。怒りや悲嘆を否定せずに受けとめることで、患者は自分の感情を整理し問題に向き合えるようになる。
-
× 2. 沈黙が生じた直後に会話を終える。
沈黙は『考えをまとめている』『感情を味わっている』『言葉にしきれない思いがある』という重要なコミュニケーションの一形態。即座に会話を打ち切ると感情表出の機会を奪う。黙ってそばにいる『ともにある』姿勢が有効。
-
× 3. 看護師が伝えたいことに重点をおく。
一方的な情報伝達は患者中心のケアから逸脱する。看護師の説明責任は重要だが、まず患者のニーズ・理解・価値観を把握する聴く姿勢が基本。
-
× 4. 患者の表情よりも言語による表現を重視する。
非言語的コミュニケーション(表情・視線・姿勢・声のトーン・間)は感情の7割以上を伝えるとも言われる。メラビアンの法則でも感情伝達の多くは非言語要素が占める。言語と非言語を統合してアセスメントする。
治療的コミュニケーションの技法には、傾聴・開かれた質問・反映・要約・沈黙の活用・明確化などがある。逆に禁忌とされるのは、説教・評価・安易な保証(『大丈夫ですよ』の乱発)・話題そらし・一般化。ペプロウの看護理論では看護師-患者関係を『方向づけ→同一化→開拓利用→問題解決』の4段階で捉え、各段階で異なるコミュニケーションが求められる。終末期や悪い知らせを伝える場面ではSPIKES・SHAREなどの会話プロトコルも活用される。
看護師-患者関係の基本姿勢を問う問題。受容・共感・非言語的要素の重視・沈黙の意味の尊重がキーワード。
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