グリセリン浣腸は必ず左側臥位!立位禁忌の怖い理由
看護師国家試験 第106回 午後 第19問 / 必修問題 / 診療に伴う看護技術
国試問題にチャレンジ
グリセリン浣腸を実施する際、腸管穿孔の危険性が最も高い体位はどれか。
- 1.立位
- 2.仰臥位
- 3.腹臥位
- 4.左側臥位
対話形式の解説
博士
今日はグリセリン浣腸の体位について学ぶぞ。看護技術の中でもリスクの高い処置じゃから、正しい方法を理解することが大切じゃ。
サクラ
なぜ左側臥位が基本なんですか?
博士
解剖学的な理由じゃ。下行結腸からS状結腸、直腸にかけては体の左側に走行しておる。だから左側臥位にすると、浣腸液が重力で腸管の奥へスムーズに流れていくのじゃ。
サクラ
なるほど!腸管の走行に沿った体位なんですね。
博士
その通り。カテーテル挿入も腸の走行に沿うから、粘膜を傷つけにくい。これが左側臥位が選ばれる最大の理由じゃ。
サクラ
立位だとなぜ危険なんですか?
博士
立位では直腸の走行が急角度になり、カテーテル先端が直腸前壁に直接ぶつかりやすいのじゃ。
サクラ
ぶつかると、どうなるんですか?
博士
最悪の場合、直腸穿孔を起こす。さらにグリセリンが直腸壁の血管に入ると、強い溶血作用で赤血球を壊し、遊離ヘモグロビンが腎尿細管を詰まらせて急性腎不全に至ることもある。
サクラ
そんな怖いことになるんですか…。
博士
だから立位での浣腸は禁忌として厚生労働省が添付文書で注意喚起しておる。在宅や施設でも絶対にやってはいかん。
サクラ
カテーテルの挿入長はどのくらいですか?
博士
成人で5〜6cmが目安。それ以上深く入れると直腸〜S状結腸移行部の屈曲部を傷つけるリスクが上がる。
サクラ
液温は?
博士
40℃前後が基本じゃ。冷たすぎると血圧低下や不快感を招き、熱すぎると粘膜を熱傷する。必ず実施直前に温度を確認するのじゃ。
サクラ
注入のコツはありますか?
博士
ゆっくり注入することじゃ。速いと腹痛や血圧低下が起こりやすい。注入後は3〜5分我慢してもらってから排便してもらうと効果的。
サクラ
禁忌の患者さんはいますか?
博士
痔核・直腸出血・腹部外科術後などは医師の指示確認が必須。特に消化管吻合術後は吻合部の破綻リスクがあるから浣腸自体を避けることが多い。
サクラ
高齢者への注意点は?
博士
高齢者は直腸粘膜が脆弱で穿孔しやすく、浣腸による迷走神経反射で徐脈・血圧低下を起こしやすい。観察を怠らないことが大切じゃ。
サクラ
安全に実施するために、解剖学と薬理をしっかり理解することが必要ですね。
POINT
グリセリン浣腸は左側臥位で実施するのが原則で、立位は直腸穿孔とグリセリンによる溶血・急性腎不全の危険があるため禁忌とされています。左側臥位はS状結腸〜下行結腸が体の左側に走行する解剖学的特徴を活かし、浣腸液がスムーズに流れ穿孔リスクも低い安全な体位です。カテーテル挿入長は成人で5〜6cm、液温は40℃前後、注入はゆっくり行うことが基本手技となります。痔核・腹部術後などの禁忌や、高齢者の穿孔リスク・迷走神経反射による循環変動にも注意が必要です。看護師は基本技術の背景にある解剖・生理・薬理を理解し、患者の安全を最優先に実施することが求められます。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:グリセリン浣腸を実施する際、腸管穿孔の危険性が最も高い体位はどれか。
解説:正解は 1 です。グリセリン浣腸は左側臥位で実施するのが原則で、立位での実施は直腸前壁の走行が急角度となり、挿入したカテーテル先端が直腸粘膜に当たりやすく、穿孔の危険性が高まるため禁忌とされている。立位ではさらに腹圧もかかりやすく、粘膜損傷や直腸穿孔による致死的合併症(グリセリンによる溶血・腎不全)につながるリスクがある。
選択肢考察
-
○ 1. 立位
立位では直腸の解剖学的走行が急角度となり、カテーテル先端が直腸前壁を突き破る危険性が最も高い。浣腸の体位として禁忌。
-
× 2. 仰臥位
左側臥位が困難な場合の代替体位として用いられることがあるが、立位ほど穿孔リスクは高くない。ただし浣腸液が漏れやすい。
-
× 3. 腹臥位
通常は浣腸に用いない体位。解剖学的に挿入しづらく、穿孔リスクは立位より低いが患者の安楽性に乏しい。
-
× 4. 左側臥位
S状結腸〜下行結腸が解剖学的に左側に走行しているため、左側臥位は浣腸液がスムーズに奥まで流れ、カテーテル挿入方向が腸管走行に沿う最も安全な体位。
グリセリン浣腸のポイントは、①体位は左側臥位、②カテーテル挿入長は成人で5〜6cm、③液温は40℃前後(冷たいと血圧低下、熱すぎると粘膜損傷)、④注入はゆっくり、⑤注入後は3〜5分我慢してから排便。立位での実施は直腸穿孔と、その結果としてグリセリンが血管内に入って溶血・急性腎不全を引き起こす危険があるため、厚生労働省も添付文書で注意喚起している。痔核・直腸出血・腹部外科術後などでは医師の指示確認が必要。
グリセリン浣腸の安全な実施体位と、立位が禁忌である理由を問う基本技術問題。
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