気管吸引の圧はなぜ150 mmHgが上限なのか
看護師国家試験 第106回 午前 第23問 / 必修問題 / 診療に伴う看護技術
国試問題にチャレンジ
成人患者の気管内の一時的吸引における吸引圧で正しいのはどれか。
- 1.−100 〜 −150 mmHg
- 2.−200 〜 −250 mmHg
- 3.−300 〜 −350 mmHg
- 4.−400 〜 −450 mmHg
対話形式の解説
博士
今日は気管吸引の圧について学ぶぞ。数字の暗記問題に見えるが、きちんと理由があるのじゃ。
サクラ
成人は−100〜−150 mmHgって覚えていますけど、なんでそれより強くちゃダメなんですか?
博士
強い陰圧をかけると、カテーテルの先端が気道粘膜を強く吸い付けてしまう。すると粘膜が剥がれて出血したり、肺胞の空気まで吸い取って無気肺になったりするのじゃ。
サクラ
なるほど、粘膜が掃除機に吸い付くイメージですね。
博士
その通りじゃ。さらに、吸引中は酸素を含んだ空気も同時に吸い出してしまうから、低酸素血症のリスクも上がる。だから圧と時間の両方に上限があるのじゃよ。
サクラ
時間は何秒まででしたっけ?
博士
一回の吸引は10秒以内、カテーテル挿入から抜去までトータルで15秒以内。長すぎると低酸素になるからじゃ。
サクラ
小児や新生児はもっと弱くするって聞きました。
博士
そうじゃ。小児は−80〜−120 mmHg、新生児は−60〜−80 mmHgが目安じゃな。年齢が下がるほど粘膜が薄く脆いから、より慎重にする必要がある。
サクラ
日本呼吸療法医学会のガイドラインでは20 kPaと書かれているんですよね?
博士
うむ、2013年版じゃな。20 kPaはおよそ150 mmHgに相当する。単位は違っても数値感覚は同じじゃ。
サクラ
吸引前後で酸素化するのも大事なんですよね?
博士
その通り。100%酸素で2〜3分プレオキシジェネーションしてから吸引し、吸引後も酸素化する。SpO₂と心拍数、不整脈の有無を観察するのを忘れてはいかん。
サクラ
カテーテルの太さにも決まりがありましたよね。
博士
気管チューブ内径の1/2以下が目安じゃ。太すぎると気道をふさいで陰圧が過剰になり、肺虚脱を起こすリスクがある。
サクラ
吸引って単純そうに見えて、意外とリスクが多いんですね。
博士
そう、だからこそ看護師の基本技術として国試で頻出なのじゃ。圧・時間・酸素化・観察の4点セットを意識するとよいぞ。
サクラ
数字の背景を理解したら忘れにくくなりました。
博士
その姿勢が一番大事じゃ。次の国試でも自信を持って1を選べるな。
POINT
成人患者の気管内吸引における推奨吸引圧は−100〜−150 mmHg(約20 kPa)で、これ以上の陰圧は気道粘膜損傷・出血・無気肺・低酸素血症などの合併症を誘発します。根拠は日本呼吸療法医学会の気管吸引ガイドラインにあり、一回の吸引は10秒以内、トータル15秒以内、吸引前後の十分な酸素化、SpO₂や心拍数の観察が合わせて求められます。小児は−80〜−120 mmHg、新生児は−60〜−80 mmHgと年齢ごとに目安があるため、対象者に応じて安全な圧を設定する判断力が必要です。単なる暗記ではなく、合併症のメカニズムを理解することで実践でも応用できる知識になります。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:成人患者の気管内の一時的吸引における吸引圧で正しいのはどれか。
解説:正解は 1 の「−100 〜 −150 mmHg」です。日本呼吸療法医学会『気管吸引ガイドライン2013』では、成人の気管吸引における吸引圧は最大で20 kPa(約150 mmHg)までとし、これを超えないよう設定することが推奨されています。−150 mmHgを超える強い陰圧をかけると、気道粘膜が吸引カテーテルに吸着して剥離・出血を起こす、肺胞の脱気により無気肺が生じる、さらに低酸素血症を誘発するなどの合併症リスクが高まります。したがって、−100〜−150 mmHgの範囲が安全かつ有効な吸引圧の目安となります。
選択肢考察
-
○ 1. −100 〜 −150 mmHg
成人に推奨される吸引圧の範囲。分泌物を有効に吸引できつつ、気道粘膜損傷や低酸素血症のリスクを最小限にできる。
-
× 2. −200 〜 −250 mmHg
成人の推奨上限である150 mmHgを超えており、気道粘膜損傷・出血や無気肺を起こすリスクが高い。
-
× 3. −300 〜 −350 mmHg
圧が高すぎ、気道粘膜の剥離・出血の危険が非常に大きい。臨床では用いない。
-
× 4. −400 〜 −450 mmHg
さらに強い陰圧で、重大な気道損傷を引き起こすため絶対に用いない。
年齢別の推奨吸引圧の目安は、新生児:−60〜−80 mmHg、乳幼児〜小児:−80〜−120 mmHg、成人:−100〜−150 mmHgである。一回の吸引時間は10秒以内、カテーテル挿入から抜去までのトータル時間は15秒以内にとどめ、吸引前後に十分な酸素化を行うことで低酸素血症を防ぐ。また、SpO₂・心拍数・不整脈の有無を観察しながら実施する。カテーテルの太さは気管チューブ内径の1/2以下が目安。
成人の気管吸引圧の安全範囲を問う必修問題。150 mmHgを超えないという上限が覚えどころ。
「診療に伴う看護技術」の関連記事
-
経鼻経管栄養、なぜ「投与直前」に胃液を確認するのか
経鼻経管栄養における胃内留置確認のタイミングを問う必修問題。誤注入による重篤な合併症を避けるため「投与直前」…
114回
-
点滴の極意—80cmの高さと「関節を避ける」という基本
成人の末梢静脈持続点滴の基本手技を問う問題。穿刺部位の選択原則がポイント。
114回
-
血液製剤を二つに分けて理解する 輸血用と血漿分画
血液製剤の二大分類を理解しているかを問う必修問題。「輸血用=血球・血漿そのもの」「血漿分画=特定タンパクを精…
114回
-
重力を味方につける排痰術—体位ドレナージの仕組み
肺理学療法の基本である体位ドレナージの目的を問う問題。重力を利用した排痰促進という核心を押さえる。
114回
-
鼻腔内吸引は10秒以内 なぜそんなに短いのか
鼻腔内吸引における陰圧持続時間の上限を問う必修問題。低酸素と粘膜損傷を防ぐため「10秒以内」が原則。
114回