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60 Torrの壁!酸素療法はいつ始める?

看護師国家試験 第112回 午前 第23問 / 必修問題 / 診療に伴う看護技術

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第23問

室内空気下での呼吸で、成人の一般的な酸素療法の適応の基準はどれか。

  1. 1.動脈血酸素分圧<PaO 2 > 60 Torr以上
  2. 2.動脈血酸素分圧<PaO 2 > 60 Torr未満
  3. 3.動脈血二酸化炭素分圧<PaCO 2 > 60 Torr以上
  4. 4.動脈血二酸化炭素分圧<PaCO 2 > 60 Torr未満

対話形式の解説

博士 博士

今回は酸素療法の適応基準を学ぶぞ。数字を覚えるだけでなく、なぜその数字なのかを理解するのが大事じゃ。

サクラ サクラ

PaO2 60 Torr未満で適応、と習った気がしますが、なぜ60なんですか?

博士 博士

それはヘモグロビン酸素解離曲線の形に理由があるのじゃ。PaO2 60 Torr付近で酸素飽和度は約90%、それを下回ると曲線が急激に落ち込み、SaO2が一気に低下する。

サクラ サクラ

つまり60 Torrは『ぎりぎり踏ん張っている崖っぷち』なんですね。

博士 博士

その通り。これを下回ると酸素供給の予備能が乏しくなる。だから呼吸不全の定義もPaO2 60 Torr未満、SpO2では90%未満と対応しておるのじゃよ。

サクラ サクラ

二酸化炭素の値は関係ないんですか?

博士 博士

酸素療法の『開始基準』自体はPaO2とSpO2じゃが、PaCO2は呼吸不全の型分類に使う。PaCO2 45 Torr以下がⅠ型、45超がⅡ型じゃな。

サクラ サクラ

Ⅱ型呼吸不全だと何が違うんですか?

博士 博士

COPDなどの慢性Ⅱ型呼吸不全では、高濃度酸素を投与すると低酸素刺激による呼吸ドライブが弱まり、CO2が蓄積してCO2ナルコーシスに陥ることがある。だから目標SpO2は88〜92%に抑える。

サクラ サクラ

同じ低酸素でも背景疾患で目標値を変えるんですね。

博士 博士

うむ、これが実臨床の奥深いところじゃ。健常人や急性疾患ならSpO2 94〜98%を狙うが、Ⅱ型ではあえて高くしない。

サクラ サクラ

基準値の復習をお願いします。

博士 博士

PaO2は80〜100 Torr、PaCO2は35〜45 Torr、SpO2は96〜99%が正常じゃ。pHは7.35〜7.45。この4点セットで血液ガスの全体像が読めるようになる。

サクラ サクラ

SpO2とSaO2って違うんですか?

博士 博士

SpO2はパルスオキシメーターで経皮的に測った推定値、SaO2は動脈血を採血して実測した値じゃ。臨床ではSpO2を常時モニターし、必要時に血ガスでSaO2とPaCO2を確認するのが基本じゃ。

サクラ サクラ

酸素療法を開始したら何をモニターすればよいですか?

博士 博士

SpO2、呼吸数、意識レベル、そしてⅡ型が疑わしければPaCO2の推移も追う。投与流量の適正化と、CO2ナルコーシス兆候の早期発見が看護の肝じゃな。

サクラ サクラ

数字の意味がつながってきました。

POINT

成人の酸素療法の一般的適応基準は、室内空気下でのPaO2 60 Torr未満、あるいはSpO2 90%未満と定義される呼吸不全の状態です。PaO2 60 Torrはヘモグロビン酸素解離曲線の変曲点にあたり、これを下回ると酸素飽和度が急激に落ちて組織低酸素に直結するため、臨床的な介入ラインとして重要視されます。呼吸不全はPaCO2の値により、Ⅰ型(45 Torr以下)とⅡ型(45 Torr超)に分類され、特にCOPDなどⅡ型では高流量酸素投与によるCO2ナルコーシスに注意し、SpO2 88〜92%を目標にします。看護師は血液ガス値の基準と酸素療法の原則を理解し、意識・呼吸数・SpO2の継続観察を通じて安全な酸素投与を支える役割を担います。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:室内空気下での呼吸で、成人の一般的な酸素療法の適応の基準はどれか。

解説:正解は 2 です。成人の酸素療法の一般的な適応は、室内空気下(FiO2 21%)でPaO2 60 Torr未満、またはSpO2 90%未満で定義される呼吸不全の状態である。PaO2 60 Torrはヘモグロビン酸素解離曲線上で酸素飽和度が急激に低下し始める変曲点にあたり、これを下回ると組織への酸素供給が不十分となるため、酸素投与で是正を図る。

選択肢考察

  1. × 1.  動脈血酸素分圧<PaO 2 > 60 Torr以上

    PaO2が60 Torr以上であれば酸素化は保たれており、呼吸不全には該当しない。酸素療法の開始基準ではない。

  2. 2.  動脈血酸素分圧<PaO 2 > 60 Torr未満

    PaO2 60 Torr未満は呼吸不全の定義であり、SpO2では約90%に相当する。この状態が慢性的に続けば組織低酸素を招くため、酸素療法の適応となる。

  3. × 3.  動脈血二酸化炭素分圧<PaCO 2 > 60 Torr以上

    PaCO2は換気の指標であり、高値は換気不全を示す。酸素療法の適応判定に直接用いる指標ではなく、むしろCO2ナルコーシス回避のための酸素流量調節に関わる。

  4. × 4.  動脈血二酸化炭素分圧<PaCO 2 > 60 Torr未満

    PaCO2 60 Torr未満は多くの場合正常〜軽度異常の範囲を含み、酸素療法適応の基準値としては用いない。

呼吸不全はPaO2 60 Torr未満で定義され、PaCO2 45 Torr以下をⅠ型、PaCO2 45 Torrを超えるものをⅡ型と区別する。Ⅱ型呼吸不全(COPDなど)では高流量酸素投与により呼吸抑制からCO2ナルコーシスを引き起こす恐れがあり、SpO2目標を88〜92%に抑えた低流量酸素療法が推奨される。PaO2の基準値は80〜100 Torr、PaCO2は35〜45 Torr、SpO2は96〜99%であることも基礎として押さえておく。

呼吸不全=酸素療法適応の定義(PaO2 60 Torr未満/SpO2 90%未満)を問う必修問題。数値と酸素解離曲線の関係を合わせて理解するのがカギ。