インフォームド・コンセントは看護師も支える意思決定プロセス
看護師国家試験 第109回 午後 第38問 / 基礎看護学 / 看護の基本となる概念
国試問題にチャレンジ
判断能力のある成人患者へのインフォームド・コンセントにおける看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1.患者の疑問には専門用語を用いて回答する。
- 2.今後の治療に関しては医療者に任せるように話す。
- 3.治療方針への同意は撤回できないことを説明する。
- 4.納得ができるまで医師からの説明が受けられることを伝える。
対話形式の解説
博士
今回はインフォームド・コンセント、略してICじゃ。看護倫理の基本中の基本じゃから、国試でも実務でも頻出じゃぞ。
アユム
ICって、医師が患者に説明して同意書にサインをもらうことですよね?
博士
それはIC「の一部」にすぎん。本質はもっと広くてな、患者が病状や治療の目的・内容・効果とリスク・代替案・何もしない場合の予後まで説明を受け、理解・納得した上で「自ら」選ぶプロセス全体を指すのじゃ。
アユム
なるほど、書類にサインすることが目的じゃないんですね。
博士
そうじゃ。ICを支える倫理原則は「自律尊重」で、患者の自己決定権を守ることが根幹にある。医療者が決めて患者に従わせる時代は終わっておるのじゃ。
アユム
患者さんが専門用語がわからないと言っているときはどうすればいいですか?
博士
当然、平易な言葉に置き換える。図や模型、イラスト付きパンフレット、動画など多様なツールを活用し、患者の知識や文化背景に合わせて説明するのが基本じゃ。
アユム
だから選択肢1の「専門用語で回答する」はバツなんですね。
博士
そのとおり。次に選択肢2の「医療者に任せるように話す」はどうじゃ?
アユム
それは患者さんの自己決定を奪ってしまうから、自律尊重に反しますよね。
博士
正解じゃ。「お任せします」という患者もおるが、それもまた一つの選択じゃ。ただし最初から「お任せするように」と誘導するのは倫理違反じゃ。
アユム
一度同意した後に「やっぱり違う治療にしたい」と言われたらどうすればいいですか?
博士
それは患者の権利じゃから、全面的に受け入れる。撤回によって不利益を受けないことも保証されている。選択肢3の「撤回できない」は完全な誤りじゃ。
アユム
看護師はICでどんな役割を担うんですか?
博士
看護師は医師の説明に同席して患者の理解度を観察したり、患者が後で疑問を持ったとき医師の再説明を調整したり、家族間の意見調整を支援したりする。言わばICの通訳兼コーディネーターじゃな。
アユム
最近「SDM」という言葉も聞きますが?
博士
Shared Decision Making、共同意思決定のことじゃ。医療者の医学的情報と、患者の価値観や生活背景を共有しながら、一緒に最善の方針を決めるアプローチじゃ。ICを一歩進めた考え方と言える。
アユム
認知症や意識障害で判断できない患者さんはどうすればいいですか?
博士
あらかじめ書いておく「事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)」や、繰り返し話し合いを重ねる「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」が重要じゃ。判断能力があるうちに本人の意向を明確にしておくことが大切じゃ。
アユム
ICが守られないとどんな問題が起こるんですか?
博士
患者が治療に不信感を持ち、アドヒアランス低下や医療訴訟の原因になる。また、患者の人生観や価値観に反する治療が行われれば、QOLを著しく損なう。ICは単なる手続きではなく、医療の質そのものに直結するのじゃ。
アユム
看護師として、患者さんがICを十分に受けられているか常に気を配る視点が大切なんですね。
博士
そのとおり。特に高齢者、がん患者、終末期ケアでは、患者が本当に理解しているか、家族の意向に押されていないかを見極める観察眼が問われる。看護は「弱い立場の人の代弁者」という役割も担うのじゃ。
POINT
インフォームド・コンセントは、患者が病状や治療の目的・効果・リスク・代替案などの説明を十分に受け、理解・納得した上で自らの意思で同意または拒否する一連のプロセスです。医療倫理の自律尊重原則に基づき、患者は納得できるまで繰り返し説明を受ける権利を持ち、いったん同意した後でもいつでも撤回できます。看護師は平易な言葉での補足説明、患者の理解度確認、医師への再説明の調整、家族間の意思調整など、ICが真に成立するよう支援するコーディネーター役を担います。近年はSDM(共同意思決定)やACP(アドバンス・ケア・プランニング)も重視され、看護師には患者の価値観を尊重しながら最善の選択を共に探る力が求められる、看護実践の根幹をなす重要テーマです。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:判断能力のある成人患者へのインフォームド・コンセントにおける看護師の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。インフォームド・コンセント(IC)とは、患者が自身の病状、検査・治療の目的・内容・予想される効果とリスク、代替手段、実施しない場合の予後などについて医療者から十分な説明を受け、理解・納得した上で自らの意思で同意または拒否する一連のプロセスを指す。患者は納得できるまで繰り返し説明を受ける権利を持ち、いったん同意した後でもいつでも撤回できる。看護師はICが成立するよう、患者の理解度を確認し、不明点があれば医師からの追加説明を調整し、意思決定を支援する役割を担う。
選択肢考察
-
× 1. 患者の疑問には専門用語を用いて回答する。
医療専門用語は患者の理解を妨げる。平易な言葉、図や模型、パンフレットなどを活用し、患者の知識レベル・生活背景・文化に合わせて説明する必要がある。
-
× 2. 今後の治療に関しては医療者に任せるように話す。
患者自身が治療について理解し選択することこそがICの本質で、患者の自己決定権を尊重する必要がある。医療者に丸投げさせるのは自律尊重原則に反する。
-
× 3. 治療方針への同意は撤回できないことを説明する。
患者はいったん同意した治療方針をいつでも撤回できる。撤回を理由に不利益を受けないことも保証されている。撤回できないと伝えるのは患者の権利を侵害する説明である。
-
○ 4. 納得ができるまで医師からの説明が受けられることを伝える。
患者は理解・納得できるまで説明を繰り返し受ける権利を持つ。看護師は患者の理解度を確認し、疑問があれば医師への再説明を調整するなど、意思決定を支援する役割がある。
ICは医療法第1条の4第2項(医療提供者の努力義務)に基づき、医療倫理の4原則(自律尊重、善行、無危害、正義)のうち「自律尊重」を具現化する概念である。近年はSDM(Shared Decision Making、共同意思決定)の考え方も重視され、医療者と患者が情報と価値観を共有しながら最善の方針を共に決定するプロセスが推奨される。認知症や意識障害のある患者では代理意思決定者が必要となり、事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)やACP(アドバンス・ケア・プランニング)も押さえておきたい。
インフォームド・コンセントの基本原則と看護師の役割を問う問題。自己決定権、わかりやすい説明、撤回の自由が鍵。
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