SpO2の落とし穴!末梢循環不全で値が狂う理由
看護師国家試験 第112回 午後 第43問 / 基礎看護学 / 看護における基本技術
国試問題にチャレンジ
経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >の測定値に影響を及ぼすのはどれか。
- 1.頻脈
- 2.高血圧
- 3.高体温
- 4.末梢循環不全
対話形式の解説
博士
今回はパルスオキシメータでSpO2を測定するときの注意点を深掘りするぞ。
サクラ
酸素飽和度って、単に指に挟むだけで測れる便利な機器ですよね。
博士
便利じゃが、原理を知らないと誤った値を信じてしまう。パルスオキシメータは赤色光と赤外光の2波長を指を透過させ、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度の違いから飽和度を推定するのじゃ。
サクラ
吸光度ってどうやって区別するんですか?
博士
ポイントは『拍動性』じゃ。動脈血は心拍に合わせて量が変動するから吸光度も脈打つ。この変動成分だけを取り出すことで、動脈血のヘモグロビンだけを評価できる。つまり脈波が検出できないと測定できないのじゃ。
サクラ
なるほど、だから末梢循環不全が影響するんですね。
博士
その通り。末梢の血流が落ちると脈波が小さくなりすぎて、機器が正しく識別できない。低く出たり、波形が不安定になったり、値そのものが表示されなくなる。
サクラ
頻脈や高血圧、高体温は影響しないんですか?
博士
頻脈は拍動が速いだけで脈波は出る。高血圧はむしろ末梢灌流を維持する方向じゃ。高体温も血管拡張で脈波は検出しやすい。これらは直接的な障害にはならんのじゃ。
サクラ
マニキュアとか体動は影響するって聞いたことがあります。
博士
よい知識じゃ。濃いマニキュアやジェルネイルは光を吸収して誤差を生む。体動はノイズじゃな。ほかに一酸化炭素中毒ではCOHbがO2Hbと似た吸光特性を持つため、実際より高く表示されてしまう。
サクラ
COHbはこわいですね…真の低酸素を見落とすかも。
博士
そうじゃ。火災現場からの搬送や練炭自殺例ではSpO2が100%でも血液ガス分析が必須じゃ。メトヘモグロビン血症では値が85%前後に収束するクセがあるのも押さえておけ。
サクラ
末梢が冷たくて測れない時の工夫はあるんですか?
博士
耳朶や鼻翼にプローブを当てる方法がある。中枢に近いため循環不全時でも比較的安定した値が得られる。手を温めたり、体位を工夫するのも有効じゃ。
サクラ
SpO2は呼吸だけでなく循環のサインでもあるんですね。
博士
その通り。値の絶対値だけでなく、脈波波形も見る習慣をつけるとよい。数値だけ追うと見落としがあるからの。
POINT
経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は赤色光と赤外光を用いたパルスオキシメータで測定され、動脈の拍動性吸光度変化から推定されるため、末梢循環不全のように脈波が検出できない状況では誤差が大きくなります。頻脈・高血圧・高体温は末梢灌流を妨げないため測定値に直接影響しませんが、末梢循環不全ではセンサーが動脈血成分を識別できず値が低くなったり表示不能となります。マニキュアや体動、一酸化炭素中毒によるCOHb、メトヘモグロビン血症なども誤差要因として頻出です。看護師はSpO2を単なる数値ではなく、循環動態や測定条件を含めて解釈し、必要に応じて耳朶プローブや血液ガス分析など他の評価法と組み合わせて患者の呼吸状態を多角的にアセスメントする姿勢が求められます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >の測定値に影響を及ぼすのはどれか。
解説:正解は 4 です。パルスオキシメータは指先などに赤色光と赤外光を透過させ、拍動性の吸光度変化から動脈血の酸素飽和度を推定する機器である。測定原理上、末梢への拍動性血流(脈波)が十分に検出されることが前提となる。末梢循環不全では四肢末梢の血流が減少し脈波が弱くなるため、センサーが動脈血成分を識別できず、値が低く出たり表示されなかったりする。低心拍出量、ショック、寒冷、末梢血管収縮薬投与時などでも同様に誤差を生じる。
選択肢考察
-
× 1. 頻脈
頻脈そのものは末梢血流を妨げないため、SpO2値に直接影響しない。むしろ拍動が明確であれば脈波検出はしやすい。極端な不整脈で拍動が一定しない場合は別だが、単純な頻脈は測定を妨げない。
-
× 2. 高血圧
血圧上昇は末梢灌流を維持する方向に働くため、SpO2測定値に大きな影響は与えない。低血圧やショック状態では脈波減弱により誤差が出るが、高血圧は測定の障害にはならない。
-
× 3. 高体温
高体温はむしろ末梢血管が拡張している状態で、脈波はむしろ検出しやすい。発熱時にSpO2測定が困難になることは通常なく、直接的な影響はない。
-
○ 4. 末梢循環不全
末梢循環不全では指先の血流量が減少し、パルスオキシメータが検出する拍動性の吸光度変化(脈波)が微弱となる。その結果、値が低く表示される、不安定になる、測定不能となるなどの誤差が生じる。
パルスオキシメータの測定値に影響を与える因子は多岐にわたる。皮膚側の因子としてはマニキュア・ジェルネイル・色素沈着、体動、指の冷え、末梢循環不全、浮腫などがある。血液側の因子としては一酸化炭素中毒によるCOHb(実際より高く表示される)、メトヘモグロビン血症(85%前後に収束する)、重度の貧血や強い血管収縮薬投与時の低灌流などが挙げられる。装着部位としては指尖が一般的だが、循環不全時には耳朶や鼻翼などの中枢側部位を選択することもある。臨床では呼吸状態だけでなく循環動態とあわせて値を解釈することが重要である。
SpO2測定の原理(脈波検出)に基づき、末梢の循環が測定値に直結することを理解する問題。誤差を生む因子を整理しておくことが要点。
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