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片麻痺患者の「ひとりで着替えたい」にどう応える?看護過程は観察から始まる

看護師国家試験 第114回 午後 第32問 / 基礎看護学 / 看護の展開

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第32問

入院して間もない片麻痺がある患者から「着替えがうまくできない。ひとりでできるようになりたい」と訴えがあった。 最初に行う看護師の対応で最も適切なのはどれか。

  1. 1.「繰り返し練習しましょう」
  2. 2.「できないところは手伝います」
  3. 3.「着替えるところを見せてください」
  4. 4.「着替えのパンフレットを参考にしましょう」

対話形式の解説

博士 博士

今日は状況設定問題じゃ。入院したばかりの片麻痺の患者さんが「着替えがうまくできない、ひとりでできるようになりたい」と訴えておる。最初の一手をどうする?

アユム アユム

頑張りたい気持ちが伝わってきますね。じゃあ「繰り返し練習しましょう」と励ますのが良さそうですけど…?

博士 博士

気持ちは大切じゃが、ちょっと待つのじゃ。今の患者さんが何ができて何ができないのか、看護師は把握しておるかな?

アユム アユム

あ、入院したばかりだからまだ分かっていないですね。

博士 博士

そう、看護過程はアセスメント→看護診断→計画→実施→評価の順で進む。情報がない段階で計画や実施に飛び込むのは危ないのじゃ。

アユム アユム

では「着替えるところを見せてください」と頼んで、実際の動きを観察するのが先ですか?

博士 博士

その通りじゃ!麻痺側の可動域、座位バランス、ボタン操作の巧緻性、衣服の選択、認知面まで、観察すれば一気に多くの情報が手に入る。

アユム アユム

「できないところは手伝います」はどうしてダメなんですか?優しい言葉に思えるんですが。

博士 博士

親切に見えるが、現状把握なしに手伝うと、できる動作まで先回りして援助してしまい、本人の自立心と残存機能を奪う「過剰介護」になる危険があるのじゃ。

アユム アユム

パンフレットを渡すのも、まだ早すぎるんですね。

博士 博士

うむ。一般論の手順書は便利じゃが、個別性が反映されていない。患者の機能を見ずに渡せば、合わない方法で混乱させてしまう恐れがある。

アユム アユム

片麻痺の更衣で覚えておきたい原則ってありますか?

博士 博士

「脱健着患」じゃ。脱ぐときは健側から、着るときは患側から。椅子座位で行い、前開き・伸縮性のある衣服を選ぶ、ボタンエイドなどの自助具を使うのも有効じゃぞ。

アユム アユム

評価ツールも知っておきたいです。

博士 博士

バーセル指数やFIMでADLを点数化できる。看護師の観察に加え、PTやOTと連携してできる動作・できそうな動作・できない動作を分け、段階的に自立を支えるのが理想じゃ。

アユム アユム

最初の関わり方ひとつで、信頼関係や回復のスピードが変わるんですね。

POINT

片麻痺患者から「ひとりで着替えたい」という訴えがあった場合、最初に行うべきは「実際に着替えるところを見せてもらう」という観察に基づくアセスメントです。看護過程はアセスメント→看護診断→計画→実施→評価の順で展開され、入院直後は情報が乏しいため、観察によって患者の機能・動作・認知面を多角的に把握することが不可欠です。観察なく練習を促したり介助したりすると、過剰介護や誤った代償動作の定着に繋がりかねません。片麻痺の更衣では「脱健着患」の原則、座位での実施、前開き衣服や自助具の活用など具体的な工夫があり、PTやOTと連携した段階的支援が回復を後押しします。患者の「自分でできるようになりたい」という意欲を最大の資源と捉え、客観的情報収集から個別性のある自立支援を組み立てる姿勢が、看護の基本であり信頼関係の基盤となります。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:入院して間もない片麻痺がある患者から「着替えがうまくできない。ひとりでできるようになりたい」と訴えがあった。 最初に行う看護師の対応で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。患者の「ひとりでできるようになりたい」というニーズに応えるためには、まず現時点で何ができて何ができないのかを正確に把握することが必須である。看護過程は「アセスメント→看護診断→計画→実施→評価」で展開され、入院間もない時期は十分な情報がないためアセスメントが最優先となる。実際の更衣動作を観察することで、麻痺側の動かし方、衣服の選び方、姿勢保持、認知面の問題などを多角的に評価でき、その結果を踏まえてはじめて個別性のある自立支援計画が立てられる。

選択肢考察

  1. × 1.  「繰り返し練習しましょう」

    練習は重要だが、何が困難でどの動作を練習すべきかをアセスメントしないまま指示すると、誤った代償動作の定着や転倒・疲労に繋がる恐れがある。観察より先に行うのは適切でない。

  2. × 2.  「できないところは手伝います」

    現状把握なしに介助範囲を決めると、自分でできる動作まで援助してしまい自立心や残存機能を損なう「過剰介護」に陥る。本人の「ひとりでできるようになりたい」という意向にも反する。

  3. 3.  「着替えるところを見せてください」

    実際の更衣場面を観察することで、麻痺側上下肢の可動範囲、ボタン操作などの巧緻性、座位バランス、衣服の選択、認知面の理解度などを評価できる。アセスメントに基づき個別性のある自立支援計画を立てる第一歩となる。

  4. × 4.  「着替えのパンフレットを参考にしましょう」

    パンフレットは一般的な手順を示すツールに過ぎない。患者個別の身体機能や認知状況を把握する前に渡しても、本人に合わない方法で混乱を招きかねず、最初に行う対応としては不適切。

片麻痺患者の更衣動作では「脱健着患(脱ぐときは健側から、着るときは患側から)」が基本原則で、椅子座位で行う、前開きで伸縮性のある衣服を選ぶ、ボタンエイドや靴ベラなどの自助具を活用するといった工夫が役立つ。看護師はバーセル指数やFIMなどのADL評価指標を活用し、できる動作・できそうな動作・できない動作を分けて評価し、作業療法士や理学療法士と連携して段階的に自立を支える。患者の「したい」という意欲は最大の資源であり、最初の関わりでその思いを尊重しつつ客観的情報を集める姿勢が信頼関係構築にも繋がる。

看護過程のうち「アセスメント(情報収集・観察)」が他の介入より先行することを問う問題。患者の自立への意欲を支える第一歩は、客観的な現状把握であることがポイント。