情報と分析の違いを見抜く、看護過程アセスメントの基本
看護師国家試験 第109回 午後 第39問 / 基礎看護学 / 看護の展開
国試問題にチャレンジ
看護過程における情報の分析はどれか。
- 1.脱水状態である。
- 2.尿比重は 1.030 である。
- 3.痛みは 1 ~ 10 の尺度で 8 である。
- 4.左腓骨骨折によるシーネ固定をしている。
対話形式の解説
博士
今回は看護過程における「情報の分析」についてじゃ。一見シンプルな問題じゃが、情報と分析の区別は実習でも現場でも混乱しやすいポイントじゃぞ。
サクラ
看護過程って、どんな流れで進むんでしたっけ?
博士
「アセスメント→看護診断→計画→実施→評価」の5段階で、これが循環していくのが看護過程じゃ。アセスメントはさらに「情報収集」と「情報の分析・解釈」に分かれる。
サクラ
情報と分析ってどう違うんですか?
博士
情報は「事実そのもの」、分析は「事実を総合して意味づけた判断」じゃ。たとえば「尿比重1.030」は情報、「脱水状態である」は分析。前者が素材、後者が料理じゃな。
サクラ
選択肢で言うと、1の「脱水状態である」が分析なんですね。
博士
そのとおり。脱水と判断するには、尿量減少、尿比重上昇、皮膚ツルゴール低下、口腔粘膜乾燥、血清Na上昇、体重減少などの複数データを統合する必要がある。この統合プロセスが分析じゃ。
サクラ
S情報とO情報って聞いたことがあります。
博士
Subjective(主観的)とObjective(客観的)じゃな。S情報は患者の訴え、たとえば「喉が渇く」「だるい」など。O情報は観察や測定で得られる事実、バイタルサイン、検査値、身体所見などじゃ。
サクラ
痛みがNRSで8というのはS?O?
博士
これは興味深い。患者の主観を数値化しておるから主観由来じゃが、客観的に記録可能な数値データとしてO情報に分類するのが一般的じゃ。どちらにせよ「情報」であって「分析」ではない。
サクラ
シーネ固定はどうですか?
博士
それは治療状況そのもので、観察すればわかる客観的事実じゃ。やはり情報段階で、分析ではない。
サクラ
SOAP記録のAが分析なんですね。
博士
そのとおり。S(主観)、O(客観)、A(アセスメント=分析)、P(プラン)の順に記述する。Aには「〜と考えられる」「〜の状態にある」など判断を表す言葉が入るのが特徴じゃ。
サクラ
分析をするには何の知識が必要ですか?
博士
疾患の病態生理、正常値の知識、身体機能の理解、発達段階、社会背景など多角的な視点じゃ。さらにゴードンの11機能的健康パターンやヘンダーソンの14基本的ニードといった枠組みで整理すると漏れが少ない。
サクラ
ゴードンの機能的健康パターンって?
博士
健康知覚、栄養代謝、排泄、活動運動、睡眠休息、認知知覚、自己知覚、役割関係、セクシュアリティ、ストレス対処、価値信念の11項目じゃ。これを軸に情報を整理・分析する。
サクラ
初心者がよくやるミスは何ですか?
博士
情報をそのままアセスメント欄に書いてしまうことじゃ。「脱水の可能性がある。なぜなら尿量が減り尿比重が上昇し口腔粘膜が乾燥しているため」のように、根拠を伴った解釈が分析。事実の羅列はただの情報じゃ。
サクラ
分析ができないと看護診断や計画にもつながりませんよね。
博士
そのとおり。分析は看護過程の要であり、患者の問題を特定し、優先度を判断し、個別性のある看護計画を立てる土台になる。ここがぶれると看護介入もぶれるのじゃ。
POINT
看護過程におけるアセスメントは、情報収集と情報の分析・解釈という二つの段階からなり、事実データを単に集めるだけでなく、それらを統合して意味づけ患者の状態や問題を解釈するプロセスが「分析」です。本問では「脱水状態である」という判断が、尿量・尿比重・皮膚ツルゴール・血液検査値などの個別情報を統合した解釈として分析に該当し、他の選択肢は個別のデータ(情報)にあたります。S情報とO情報を区別し、ゴードンの機能的健康パターンやヘンダーソンの基本的ニードといった枠組みで整理することが、精度の高い分析の土台となります。SOAP記録の「A」に根拠を伴う解釈を記述する技能は看護診断・計画立案・評価の全過程を貫く重要スキルであり、事実と解釈を明確に区別する力は看護師の臨床判断の根幹をなします。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:看護過程における情報の分析はどれか。
解説:正解は 1 です。看護過程は「アセスメント(情報収集と分析)→看護診断→計画→実施→評価」の循環的プロセスで、情報の「分析」は集めた客観的・主観的情報を照合・解釈し、患者の状態や問題を意味づける段階を指す。「脱水状態である」という表現は、バイタルサインや尿量、皮膚の乾燥、血液検査データなど複数の情報を総合して下された解釈・判断であり、これが分析(アセスメント)にあたる。残りの選択肢はいずれも個別の事実情報(データ)であり、分析ではなく情報収集の段階に属する。
選択肢考察
-
○ 1. 脱水状態である。
個別情報を総合して下された解釈的判断であり、これが分析(アセスメント)に該当する。たとえば尿量減少、尿比重上昇、皮膚ツルゴール低下、口腔粘膜乾燥、血清Na上昇などを統合して「脱水」と結論づけるプロセスが分析である。
-
× 2. 尿比重は 1.030 である。
検査で得られた数値データそのもので、客観的情報(O情報)に該当する。分析ではなく情報収集段階の事実。
-
× 3. 痛みは 1 ~ 10 の尺度で 8 である。
NRS(Numerical Rating Scale)による疼痛の数値データで、患者の主観を数値化した客観的記録だが、これ自体は分析ではなく情報。
-
× 4. 左腓骨骨折によるシーネ固定をしている。
患者の現状(治療状況)を示す事実情報。観察や記録から得られる客観的情報で、分析ではない。
看護過程における情報は、S情報(Subjective:主観的情報、患者の訴え)とO情報(Objective:客観的情報、観察や検査値)に分類される。これらを統合し、ゴードンの11機能的健康パターンやヘンダーソンの14基本的ニードなどの枠組みで解釈するのがアセスメントである。SOAP記録では、S(主観)・O(客観)・A(アセスメント=分析)・P(プラン)の順に記述する。Aには必ず「〜と考えられる」「〜の状態である」のように判断を含む表現が用いられる。
看護過程における「情報」と「分析(アセスメント)」の違いを識別する問題。事実と解釈の区別がカギ。
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