認知症高齢者へのノーマライゼーション
看護師国家試験 第105回 午後 第47問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
国試問題にチャレンジ
認知症(dementia)の高齢者に対するノーマライゼーションで正しいのはどれか。
- 1.散歩を勧める。
- 2.決められた服を着るよう勧める。
- 3.重度の場合は精神科病棟に入院を勧める。
- 4.食べこぼしのあるときに箸を使用しないよう勧める。
対話形式の解説
博士
今日はノーマライゼーションの話じゃ。認知症高齢者ケアで特に大切な理念じゃぞ。
サクラ
博士、ノーマライゼーションってどういう意味ですか?
博士
1950年代にデンマークのバンク=ミケルセンが提唱した理念で、障害者や高齢者など社会的弱者が、障害のない人と同じように地域で普通の生活を送れる社会を目指す考え方じゃ。
サクラ
認知症の人にも当てはまるんですね。
博士
そうじゃ。認知症があっても、その人らしい生活を続ける権利があるのじゃ。施設や病院に隔離するのではなく、地域の中で暮らしを支えるのが基本じゃぞ。
サクラ
正解は選択肢1の『散歩を勧める』ですね。
博士
散歩は心身の健康を保ち、気分転換になり、近所の人との交流も生まれる。認知症の人が社会の一員として生活するのに最適な活動じゃ。
サクラ
選択肢2『決められた服を着るよう勧める』はなぜダメですか?
博士
服装は個人の好みやアイデンティティの表現じゃ。画一的に決めるのは本人の選択の自由を奪い、ノーマライゼーションに反するのじゃ。
サクラ
選択肢3『重度の場合は精神科病棟に入院を勧める』は?
博士
これは地域から切り離すことになるから逆行じゃ。重度でもグループホームや認知症対応型デイサービスなど地域資源を活用し、普通の生活を維持するのが基本じゃ。
サクラ
選択肢4『食べこぼしのあるときに箸を使用しないよう勧める』はどうですか?
博士
箸は日本人が長年親しんだ道具じゃ。一律に使用禁止するのではなく、食べやすい大きさに切る、滑り止めの食器を使うなどの工夫で箸を使い続けられるよう支援するのじゃ。
サクラ
ノーマライゼーションの8つの原理があるんですよね?
博士
スウェーデンのニィリエがまとめたのじゃ。1日・1週間・1年のノーマルなリズム、ライフサイクル、自己決定、異性との関係、経済水準、環境水準の8つじゃぞ。
サクラ
パーソンセンタードケアとの関係は?
博士
パーソンセンタードケアはイギリスのトム・キットウッドが提唱した、認知症の人の人格を尊重するケアアプローチじゃ。ノーマライゼーションと通じる理念じゃな。
サクラ
看護師として何ができますか?
博士
その人の歴史や好み、楽しみを知り、それを継続できるよう支援することじゃ。認知症になっても『その人らしさ』は失われぬ。それを引き出すケアが看護師の仕事じゃぞ。
POINT
ノーマライゼーションは障害者や高齢者が地域で普通の生活を送れる社会を目指す理念で、認知症高齢者にも適用されます。散歩のような日常的活動を続けることは心身の健康と社会参加を支え、この理念に合致します。本人の意思を尊重し、画一化や隔離を避け、生活の継続を支援することが看護師の役割です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:認知症(dementia)の高齢者に対するノーマライゼーションで正しいのはどれか。
解説:正解は 1 です。ノーマライゼーションは1950年代にデンマークのバンク=ミケルセンが提唱した理念で、障害者や高齢者などの社会的弱者が、障害のない人と同じように地域で普通の生活を送れる社会を目指す考え方です。認知症高齢者に対しても、本人の意思を尊重し、可能な限り従来の生活パターンや楽しみを維持することが基本です。散歩は健康増進・気分転換・社会との接点となり、ノーマライゼーションの実践に合致します。
選択肢考察
-
○ 1. 散歩を勧める。
散歩は心身の健康増進、生活リズムの維持、社会との交流機会となり、認知症があっても地域社会の一員として生活を送る上で有意義です。本人の意思を尊重しつつ、安全に配慮して外出を支援することはノーマライゼーションの具現化です。
-
× 2. 決められた服を着るよう勧める。
服装は個人のアイデンティティや好みの表現です。画一的に決められた服を強要することは本人の意思や選択の自由を奪い、ノーマライゼーションの理念に反します。本人が選べるよう支援するのが望ましいです。
-
× 3. 重度の場合は精神科病棟に入院を勧める。
入院は地域から切り離すことになり、ノーマライゼーションに逆行します。重度であってもまずはグループホーム・認知症対応型デイサービス・在宅介護サービスなど地域資源を活用し、普通の生活を維持する工夫が優先されます。
-
× 4. 食べこぼしのあるときに箸を使用しないよう勧める。
箸は日本人にとって長年親しんだ食事道具であり、使用を一律に禁じるのはそれまでの生活様式を奪うことになります。食べやすい大きさに切る、滑り止めの食器を使うなど工夫して箸の使用を継続できるよう支援するのが適切です。
ノーマライゼーションの提唱者バンク=ミケルセンは『1959年法』でこの理念を法制化しました。その後スウェーデンのニィリエが8つの原理(1日・1週間・1年のノーマルなリズム、ライフサイクル、自己決定、異性との関係、経済水準、環境水準)にまとめました。日本では障害者基本法や介護保険制度の基本理念となっています。パーソンセンタードケア(トム・キットウッド)も関連概念で、認知症の人の人格を尊重するケアです。
ノーマライゼーションの理念を認知症高齢者ケアに適用する問題です。本人の意思尊重と地域での普通の生活の維持という基本原則の理解が焦点です。
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