老年期うつ病の顔〜身体の訴えと心気症状に注目
看護師国家試験 第106回 午後 第47問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
国試問題にチャレンジ
老年期のうつ病( depression )に特徴的な症状はどれか。
- 1.幻覚
- 2.感情鈍麻
- 3.心気症状
- 4.着衣失行
対話形式の解説
博士
今回は老年期うつ病の特徴について学ぶぞ。まず、うつ病の基本症状は何じゃ?
サクラ
抑うつ気分、興味・喜びの喪失、食欲低下、睡眠障害、集中力低下、自責感、希死念慮…でしょうか?
博士
よろしい。DSM-5の診断基準に沿った答えじゃ。ただ、老年期うつ病にはちょっと違った顔があるのじゃ。
サクラ
違った顔?
博士
若年のうつと比べて、抑うつ気分そのものより身体症状の訴えが前面に出ることが多い。頭痛、めまい、肩こり、食欲不振、胃腸症状、倦怠感などじゃな。
サクラ
それだと普通の体の不調と間違えそうですね。
博士
その通り。そして「重い病気ではないか」「がんじゃないか」と過度に心配する症状が出る。これを「心気症状」、確信に至ると「心気妄想」と呼ぶのじゃ。
サクラ
だから3番が正解なんですね。微小妄想って他にもあるんですか?
博士
老年期うつの三大微小妄想として、貧困妄想(お金がなくて飢え死にする)、罪業妄想(自分は罪深く迷惑をかけている)、心気妄想(重い病気に違いない)がよく挙げられるのじゃ。
サクラ
なるほど。1番の幻覚はどの疾患の症状ですか?
博士
幻覚は統合失調症の陽性症状の代表じゃ。特に幻聴が多い。老年期うつでも重症例で幻覚を伴うことはあるが、特徴症状とは言わんのじゃ。
サクラ
2番の感情鈍麻は?
博士
これも統合失調症、ただし陰性症状じゃ。喜怒哀楽の表出が乏しくなる。うつは悲哀感や抑うつ気分が前面に出るから、感情鈍麻とは質的に異なるのじゃ。
サクラ
4番の着衣失行は?
博士
これは高次脳機能障害で、アルツハイマー型認知症の頭頂葉症状などで見られる。服の着方が分からなくなるのじゃ。
サクラ
老年期うつは認知症と間違えられることもあるんですよね?
博士
うむ、「仮性認知症(pseudo-dementia)」という概念がある。うつで集中力や意欲が落ちると、認知機能が低下したように見えるのじゃ。しかし認知症と違ってうつ治療で改善するのが特徴じゃ。
サクラ
鑑別が大事なんですね。
博士
その通り。認知症と診断されて放置されると、うつが悪化し自殺リスクが高まる。特に高齢者の自殺率は高いから、希死念慮の確認は欠かせんのじゃ。
サクラ
看護としてはどんな点に注意すればいいですか?
博士
身体症状の訴えを「気のせい」と片付けず傾聴すること、孤立感を減らす関わり、服薬支援(抗うつ薬は効果発現まで2〜4週かかる)、希死念慮のアセスメント、家族への心理教育などじゃな。
サクラ
見えにくいうつを見抜く視点が大切ですね。
POINT
老年期うつ病は、若年発症のうつ病とは異なり、抑うつ気分よりも身体症状の訴え(頭痛・めまい・胃腸症状・倦怠感など)や心気症状が前面に出ることが特徴です。三大微小妄想である貧困妄想・罪業妄想・心気妄想、不安・焦燥感、仮性認知症の像を呈することもあり、認知症との鑑別が重要です。幻覚は統合失調症、感情鈍麻は統合失調症の陰性症状、着衣失行は高次脳機能障害の症状で、うつ病の特徴症状ではありません。高齢者の自殺リスクは若年より高く、希死念慮の評価と早期介入、服薬継続支援、家族への心理教育が看護の要となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:老年期のうつ病( depression )に特徴的な症状はどれか。
解説:正解は 3 です。老年期うつ病(65歳以降に発症するうつ病)には若年発症のうつ病とは異なる特徴がある。特に身体症状の訴えが前景に立ち、頭痛、めまい、肩こり、食欲不振、胃腸症状、全身倦怠感などの不定愁訴や、「がんではないか」「治らない病気なのでは」などと過度に心配する「心気症状」「心気妄想」が目立つ。また、微小妄想(貧困妄想、罪業妄想、心気妄想)、不安・焦燥感、仮性認知症(集中力低下による認知機能低下様の症状)も特徴的で、認知症と鑑別を要する。
選択肢考察
-
× 1. 幻覚
幻覚は統合失調症の陽性症状の代表。特に幻聴が多い。老年期うつ病でも重症例で幻覚を伴うことはあるが「特徴的」症状とはいえない。
-
× 2. 感情鈍麻
感情鈍麻(感情の平板化)は統合失調症の陰性症状の代表。喜怒哀楽の表出が乏しくなる。うつ病では抑うつ気分や悲哀感が前面に出る点が異なる。
-
○ 3. 心気症状
老年期うつ病では身体症状の訴えと、「重い病気ではないか」と過度に心配する心気症状・心気妄想が特徴的。抑うつ気分より身体的訴えが前面に出ることが多い。
-
× 4. 着衣失行
着衣失行は高次脳機能障害の一つで、アルツハイマー型認知症の頭頂葉症状などで見られる。うつ病の症状ではない。
老年期うつ病の三大微小妄想は、貧困妄想(お金がなく飢え死にする)、罪業妄想(自分は罪深く迷惑をかけている)、心気妄想(重い病気に違いない)。仮性認知症(pseudo-dementia)は、うつによる集中力低下・意欲低下が認知機能低下のように見える状態で、本物の認知症との鑑別が重要(うつ治療で改善する)。自殺リスクも高齢者で高く、希死念慮の確認と早期介入が看護のポイント。抗うつ薬は効果発現まで2〜4週かかり、服薬継続支援が重要。
老年期うつ病に特徴的な心気症状を識別する問題。統合失調症や認知症の症状との鑑別が重要。
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