角化型疥癬はなぜ個室隔離が必要なのか 高齢者施設の感染対策
看護師国家試験 第109回 午後 第84問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
国試問題にチャレンジ
高齢者が共同生活をする施設で、感染の拡大予防のために個室への転室などの対応を必要とするのはどれか。
- 1.白癬( tinea )
- 2.帯状疱疹( herpes zoster )
- 3.蜂窩織炎( cellulitis )
- 4.角化型疥癬( keratotic scabies )
- 5.皮膚カンジダ症( cutaneous candidiasis )
対話形式の解説
博士
今日は高齢者施設でこわい感染症、疥癬の話じゃ。
アユム
疥癬ってダニが皮膚に寄生する病気ですよね。そんなに個室管理するほど怖いんですか?
博士
通常の疥癬ならそこまで厳重にしなくてもよい。問題は『角化型疥癬』、別名ノルウェー疥癬じゃ。
アユム
何が違うんですか?
博士
通常疥癬は寄生ダニが1000匹以下だが、角化型はなんと100万〜200万匹。しかも患者の皮膚から剥がれ落ちた厚い角質(鱗屑)にダニがびっしり含まれる。
アユム
100万匹…!それは落ちた鱗屑だけで感染しそう。
博士
その通りで、シーツに落ちた鱗屑、衣類、床からでも感染する。だから接触予防策に加え個室隔離、リネンは袋に密閉して熱処理、床は徹底的に清掃する必要がある。
アユム
他の選択肢はどうですか?
博士
白癬は水虫、足拭きマット共用を避ければ個室不要。帯状疱疹は水疱に触らず覆えばよい。蜂窩織炎は本人の皮膚から細菌が入る内因性で他人にはうつらない。皮膚カンジダも接触予防策で十分じゃ。
アユム
なるほど、だから角化型疥癬だけが特別なんですね。
博士
高齢者施設では免疫低下や長期ステロイド使用、認知症による掻痒訴えの不明瞭さが集団発生のリスクを高める。
アユム
早期発見が勝負ですね。
博士
強いかゆみや剥がれる厚い痂皮を見たら皮膚科に検鏡依頼。顕微鏡でヒゼンダニや虫卵を確認して診断する。
アユム
治療は?
博士
イベルメクチンの内服やフェノトリンのローションが中心。患者の入浴順は最後にして、シーツや衣類は50度以上で10分以上処理、もしくはビニール袋で1週間密閉すればダニは死滅する。
アユム
施設スタッフ全員が感染経路と予防策を理解していないと、すぐに広がってしまいますね。
博士
うむ、標準予防策に加え、疑ったらすぐ隔離・皮膚科依頼という判断が看護管理の鍵じゃ。
POINT
高齢者施設での感染拡大予防で個室隔離を要するのは角化型疥癬です。角化型疥癬はヒゼンダニが桁違いに多数寄生し、剥落した鱗屑からも容易に感染するため通常の接触予防策では不十分で、個室管理・寝具の熱処理・徹底的な環境清拭が必要になります。白癬、帯状疱疹、蜂窩織炎、皮膚カンジダ症は基本的に標準予防策と接触予防策で対応可能で個室までは要しません。看護師は原因不明の強い掻痒や厚い痂皮を見逃さず、早期の皮膚科依頼と感染対策の徹底で集団発生を防ぐ役割を担います。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:高齢者が共同生活をする施設で、感染の拡大予防のために個室への転室などの対応を必要とするのはどれか。
解説:正解は 4 の角化型疥癬です。疥癬はヒゼンダニが角質層に寄生する接触感染症で、通常疥癬と角化型(ノルウェー型)疥癬に分けられます。通常疥癬は寄生ダニが少なく標準予防策で対応できますが、角化型疥癬は100万匹以上のダニが剥離した厚い角質に含まれ、落下した鱗屑からも感染するため爆発的な集団発生を起こしやすく、個室隔離と接触予防策の徹底、シーツ・衣類の熱処理が必要です。
選択肢考察
-
× 1. 白癬( tinea )
皮膚糸状菌による感染症。足拭きマットやスリッパの共用を避ければ個室管理までは不要で、外用抗真菌薬で治療する。
-
× 2. 帯状疱疹( herpes zoster )
水痘既往者のウイルス再活性化で生じる。水疱内容に接触感染するため水痘未罹患者には注意が必要だが、病巣を覆えば通常個室までは要しない。なお播種性帯状疱疹の場合は空気感染対策が必要。
-
× 3. 蜂窩織炎( cellulitis )
皮膚の傷口から細菌が侵入して生じる内因性感染症。ヒトからヒトへの伝播リスクは低く、個室管理は不要。
-
○ 4. 角化型疥癬( keratotic scabies )
重症型の疥癬で寄生ダニ数が桁違いに多く、鱗屑からも感染するため個室隔離・接触予防策・寝具の熱処理など厳重な感染対策が必須。
-
× 5. 皮膚カンジダ症( cutaneous candidiasis )
常在真菌カンジダの増殖による内因性感染が多く、接触予防策で十分。個室管理は不要。
角化型疥癬では治療にイベルメクチン内服とフェノトリン外用、クロタミトンなどを併用する。患者の入浴は最後とし、寝具や衣類は50℃以上で10分以上の熱処理や乾燥機使用、ビニール袋での密閉保管(約1週間)でダニを死滅させる。発見が遅れると職員や他入所者への集団感染を招くため、原因不明のかゆみを訴える入所者がいたら角化型疥癬を鑑別に入れることが重要。通常疥癬の潜伏期は約1ヵ月、角化型はより短い。
接触感染症のなかで特に隔離を要するのは『角化型疥癬』であることを覚えているかを問う問題。施設内集団感染のリスク評価がポイント。
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