高齢者のうつ病アセスメントツールを学ぼう
看護師国家試験 第103回 午前 第97問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。 Aさんは入院直後、Mini-MentalStateExaminatio〈nMMSE〉30点であった。 さらに情報収集のために用いるアセスメント方法で適切なのはどれか。
- 1.DBDスケール〈DementiaBehaviorDisturbanceScale〉
- 2.Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類
- 3.GDS〈GeriatricDepressionScale〉15
- 4.Borg〈ボルグ〉スケール
対話形式の解説
博士
Aさんは1年前に夫を亡くし、最近は元気がなく食事もとれず脱水と抑うつ疑いで入院じゃ。MMSEは30点満点だったぞ。次のアセスメントツールは何かな?
サクラ
博士、MMSE30点はどう解釈するんですか?
博士
MMSEは30点満点で、27点以上は認知機能正常じゃ。Aさんは満点だから認知症は否定的、次は抑うつ評価に進むのが妥当な流れじゃ。
サクラ
正解は何番ですか?
博士
正解は3番、GDS15じゃ。Geriatric Depression Scaleの短縮版で、15項目をはい・いいえで答える高齢者用うつ病自己評価尺度じゃよ。
サクラ
どう解釈するんですか?
博士
5点以上で軽度うつ、10点以上で重度うつが疑われる。簡便で外来や病棟でも使いやすいのが利点じゃ。
サクラ
1のDBDスケールはどうですか?
博士
認知症のBPSD(行動・心理症状)を介護者が評価する尺度じゃ。MMSE満点のAさんには優先順位が低いんじゃ。
サクラ
2のホーエン・ヤール分類は?
博士
パーキンソン病の運動症状重症度分類でⅠ〜Ⅴ度じゃ。Aさんにパーキンソン症状はなく適応外じゃよ。
サクラ
4のボルグスケールは?
博士
運動強度や呼吸困難感の自覚的尺度で、心リハや呼吸リハで使う。抑うつ評価には使わんのじゃ。
サクラ
高齢者のうつは認知症と紛らわしいんですよね。
博士
その通り。仮性認知症といって、うつによる集中力・記憶力低下が認知症と見分けがつきにくい。MMSEで認知機能を、GDSで抑うつを評価し鑑別するんじゃ。
サクラ
Aさんのリスク因子は?
博士
配偶者死別、社会的孤立、独居、活動性低下など複数該当じゃ。高齢期うつは身体症状が前面に出やすく、見逃されやすいから注意じゃ。
サクラ
他のうつ評価はありますか?
博士
GDSの30項目版もあるが、時間がかかるためGDS15が普及しておる。HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)は他者評価で詳細評価に使われるぞ。
サクラ
アセスメントの順序が大事ですね。
博士
MMSEで認知機能を確認し、正常ならGDSで抑うつを評価する流れが標準じゃ。鑑別と評価を段階的に行うことで適切な治療につなげられるんじゃぞ。
POINT
MMSE30点満点で認知症が否定されたAさんに対しては、配偶者死別と抑うつ状態を評価するGDS15が最適です。高齢者のうつは仮性認知症として認知症と紛らわしく、MMSEとGDSの併用で鑑別します。社会的孤立や独居など複数のリスク因子をもつ高齢者では身体症状を前面とした抑うつに注意し、早期発見と介入が重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。 Aさんは入院直後、Mini-MentalStateExaminatio〈nMMSE〉30点であった。 さらに情報収集のために用いるアセスメント方法で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。MMSEは30点満点の認知機能スクリーニング検査で、27点以上は認知機能正常と判定されます。Aさんは満点の30点であり認知機能は保たれていると考えられるため、次に評価すべきは抑うつ状態です。GDS15は高齢者用うつ病自己評価尺度で、15項目をはい・いいえで回答する簡便な方法であり、5点以上で軽度、10点以上で重度のうつが疑われます。配偶者死別、社会的孤立、食欲低下、活動性低下というAさんの状態に最も適したアセスメントツールです。
選択肢考察
-
× 1. DBDスケール〈DementiaBehaviorDisturbanceScale〉
認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)を介護者が評価する尺度で、MMSE満点で認知症が疑われないAさんには優先順位が低いです。
-
× 2. Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類
パーキンソン病の運動症状の重症度分類でⅠ〜Ⅴ度に分類されます。Aさんにパーキンソン症状はなく適応外です。
-
○ 3. GDS〈GeriatricDepressionScale〉15
高齢者用うつ病自己評価尺度で、配偶者喪失と抑うつ状態が疑われるAさんに最適です。15項目で簡便に評価でき、認知機能正常者で信頼性が高いツールです。
-
× 4. Borg〈ボルグ〉スケール
運動時の自覚的運動強度や呼吸困難感を6〜20または0〜10で評価する尺度で、抑うつのアセスメントには使用しません。
高齢者のうつ病は仮性認知症(記憶力低下、集中力低下)や身体症状(食欲不振、不眠、倦怠感)が前面に出やすく、認知症との鑑別が重要です。配偶者死別、社会的孤立、慢性疾患、機能低下などがリスク因子で、Aさんは複数該当します。MMSEは記憶・見当識・注意・言語・図形描写など11項目で30点満点、23点以下で認知症疑い、長谷川式(HDS-R)は20点以下で認知症疑いです。GDS15に対し従来型のGDSは30項目版があります。
高齢者の抑うつ状態を評価する標準的なアセスメントツールであるGDS15の特徴と適応を理解しているかが問われています。
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