高齢者の排泄援助を考えよう
看護師国家試験 第103回 午前 第98問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。 入院後1週間、Aさんの脱水状態は改善したが臥床していることが多い。Aさんは排泄時、手すりを使用してトイレまで歩行しているが、着脱動作が緩慢で失禁することが多い。 Aさんへの排泄援助として最も適切なのはどれか。
- 1.オムツの着用を勧める。
- 2.トイレに近い病室に変更する。
- 3.膀胱留置カテーテルの挿入を検討する。
- 4.ポータブルトイレをベッドの横に設置する。
対話形式の解説
博士
Aさんは尿意があり手すり使用でトイレまで歩行できるが、着脱動作が緩慢で失禁が多いんじゃ。最も適切な排泄援助はどれかな?
アユム
博士、尿意があるのに失禁してしまうのはどうしてですか?
博士
これは機能性尿失禁といい、排尿機能自体は保たれているが、移動や着脱の遅さで間に合わずに漏れてしまう状態じゃ。高齢者によくみられる失禁タイプじゃよ。
アユム
正解は何番ですか?
博士
正解は2番、トイレに近い病室に変更する、じゃ。移動距離を短くすれば着脱に余裕が生まれ、失禁を予防しつつ歩行機会と自立度を維持できるんじゃ。
アユム
1のオムツはダメですか?
博士
尿意があり歩行可能なAさんにオムツを勧めるのは自尊心を傷つけ、排泄自立度を低下させ廃用を助長してしまう。安易な選択は避けたいんじゃ。
アユム
3の膀胱留置カテーテルは?
博士
尿意があり排尿障害もない人に挿入するのは尿路感染リスクを高め、移動制限でADLも低下させる。明らかに適応外じゃ。
アユム
4のポータブルトイレは?
博士
ベッドサイドに置くと歩行機会が減ってADL低下を招く。まず病室変更で対応し、それでも難しければ夜間のみポータブルなど段階的に検討するんじゃ。
アユム
失禁の種類はいくつかあるんですか?
博士
機能性、切迫性、腹圧性、溢流性、反射性、混合性の6種類じゃ。原因により対応が異なるから、まず分類することが大切なんじゃよ。
アユム
他にできる工夫は?
博士
着脱しやすい衣服を選ぶことじゃ。前開きパジャマ、ゴムウエスト、マジックテープなどで着脱時間を短縮できる。排尿パターンを把握し定時誘導するのも有効じゃ。
アユム
失禁ケアの原則は?
博士
自尊心の尊重、自立支援、環境整備、機能維持の4原則じゃ。安易にオムツやカテーテルに頼らず、段階的に支援するのが看護の基本じゃ。
アユム
Aさんの背景も配慮が必要ですね。
博士
抑うつ状態のAさんに失禁の自尊心傷害が加われば、ますます活動性低下や引きこもりにつながりかねん。失禁予防そのものが心理ケアにもつながるんじゃぞ。
アユム
環境調整の重要性が分かりました。
博士
看護は患者の能力を最大限引き出す環境を整えることが本質じゃ。Aさんの自立を尊重し、現有機能を維持する視点を忘れぬことじゃ。
POINT
Aさんの失禁は移動・着脱の遅さによる機能性尿失禁で、トイレに近い病室への変更が最適です。オムツやカテーテル、ポータブルトイレの早期導入は自立度低下と自尊心傷害を招くため避け、まず環境整備で対応します。失禁ケアの4原則は自尊心の尊重、自立支援、環境整備、機能維持で、抑うつ状態の改善とも連動して取り組むことが重要です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。 入院後1週間、Aさんの脱水状態は改善したが臥床していることが多い。Aさんは排泄時、手すりを使用してトイレまで歩行しているが、着脱動作が緩慢で失禁することが多い。 Aさんへの排泄援助として最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。Aさんは尿意があり手すり使用でトイレまで歩行できる排泄能力を保持しており、着脱動作の緩慢さが失禁の主因です。トイレに近い病室への変更により移動時間と着脱時間を確保でき、現在の排泄自立度を維持しながら失禁を予防できます。自尊心と自立支援を尊重しつつADL低下を防ぐ最も適切な援助です。
選択肢考察
-
× 1. オムツの着用を勧める。
尿意があり歩行可能なAさんにオムツを勧めることは自尊心を傷つけ、排泄の自立度を低下させ廃用症候群を助長するため不適切です。
-
○ 2. トイレに近い病室に変更する。
移動距離を短くすることで着脱に余裕が生まれ失禁を予防できます。歩行機会と排泄自立を維持でき、Aさんの尊厳を守る最適な援助です。
-
× 3. 膀胱留置カテーテルの挿入を検討する。
尿意があり排尿障害もないAさんは適応外です。尿路感染リスクが高まり、ADL低下も招くため避けるべきです。
-
× 4. ポータブルトイレをベッドの横に設置する。
歩行機会を減らしADL低下を招く可能性があります。まずは病室変更で対応し、それでも対応困難な場合に検討する選択肢です。
高齢者の失禁は機能性尿失禁(移動・着脱の遅さによる失禁)、切迫性、腹圧性、溢流性、反射性、混合性に分類されます。Aさんは機能性尿失禁に該当し、環境整備と着脱しやすい衣服(前開き、ゴムウエスト)の選択、排尿パターンに合わせた誘導が有効です。失禁ケアの原則は「自尊心の尊重」「自立支援」「環境整備」「機能維持」で、安易にオムツやカテーテルに頼らず段階的支援を行います。
高齢者の機能性尿失禁に対し、自尊心を尊重し排泄の自立を維持する環境整備の重要性を理解しているかが問われています。
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