重度アルツハイマー病の残存機能を考える
看護師国家試験 第104回 午前 第100問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(90歳、女性)は、Alzheimer〈アルツハイマー〉病(Alzheimer disease)で、重度の認知機能の低下がある。要介護4で、短期入所〈ショートステイ〉や通所介護を利用している。長年、 長男夫婦が自宅で介護している。 現在のAさんのAlzheimer〈アルツハイマー〉病(Alzheimer disease)の状態で最も適切なのはどれか。
- 1.視線を動かすことができる。
- 2.車椅子を操作することができる。
- 3.季節に合わせて服を選ぶことができる。
- 4.Mini-Mental State Examination〈MMSE〉20点である。
対話形式の解説
博士
Aさんは重度の認知機能低下、要介護4じゃ。何ができて何ができんかの。
アユム
季節に合った服を選んだり、車椅子を自分で操作するのは難しいと思います。
博士
その理由はなにかね。
アユム
衣服選択は判断力と見当識が必要ですし、車椅子操作は遂行機能が要ります。どちらも重度の認知機能低下では障害されます。
博士
見事じゃ。では視線を動かす機能はどうじゃ。
アユム
視覚や眼球運動は脳の認知機能とは別の経路なので、重度になっても残ります。
博士
その通り、だから選択肢1が正解じゃな。
アユム
MMSE20点というのはどうですか。
博士
MMSEは21点以上軽度、11〜20点が中等度、10点以下が重度じゃ。
アユム
Aさんは重度なので、20点よりは低いはずですね。
博士
要介護4の身体機能はどう判断するかの。
アユム
立ち上がりや移動に介助が必要で、不安行動も見られる段階です。
博士
看護では残存機能を活用するのが大切じゃ。
アユム
視線を合わせて声をかけたり、なじみの音楽を流すといった刺激ですね。
博士
見事じゃ。患者の世界観を尊重するケアが基本じゃよ。
POINT
アルツハイマー病が重度になっても、外眼筋や視覚伝導路は保たれ視線を動かす機能は残ります。一方で見当識、判断力、遂行機能を要する衣服選択や車椅子操作は困難となります。MMSEは10点以下が重度の目安です。残存機能を活かし、視線や声かけ、音楽など感覚刺激を通じて関係性を保つ非薬物的ケアが重要です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(90歳、女性)は、Alzheimer〈アルツハイマー〉病(Alzheimer disease)で、重度の認知機能の低下がある。要介護4で、短期入所〈ショートステイ〉や通所介護を利用している。長年、 長男夫婦が自宅で介護している。 現在のAさんのAlzheimer〈アルツハイマー〉病(Alzheimer disease)の状態で最も適切なのはどれか。
解説:正解は1です。アルツハイマー病で重度の認知機能低下があっても眼球運動や視覚機能そのものは末期まで保たれ、視線を動かすことは可能です。
選択肢考察
-
○ 1. 視線を動かすことができる。
アルツハイマー病は大脳皮質の高次脳機能障害が中心で、外眼筋や視覚伝導路は障害されにくいため、声や物音に反応して視線を向ける能力は重度になっても残存します。
-
× 2. 車椅子を操作することができる。
車椅子操作にはブレーキ解除、車輪駆動、方向転換など計画的な遂行機能が必要です。重度認知機能低下と要介護4の状態では自立した操作は困難です。
-
× 3. 季節に合わせて服を選ぶことができる。
季節判断や衣服選択には時間的見当識と判断力が求められますが、重度のアルツハイマー病ではこれらが大きく障害され、適切な選択は困難となります。
-
× 4. Mini-Mental State Examination〈MMSE〉20点である。
MMSE20点は中等度認知機能低下に相当します。重度ではおおむね10点以下となるため、Aさんの状態には合致しません。
アルツハイマー病は記憶障害から始まり、見当識障害、遂行機能障害、判断力低下、失語・失行・失認へと進行します。FAST分類7段階のうち重度はFAST6〜7に相当し、要介護4はおおむねこの範囲です。視覚機能や聴覚機能、原始反射は末期まで保たれることが多く、視線を合わせる、なじみの音楽に反応するなど残存機能を活かしたケアが重要です。MMSEは21点以上軽度、11〜20点中等度、10点以下重度と覚えましょう。
重度アルツハイマー病における残存機能と障害される機能を区別できるかを問う問題です。
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