高齢者の尿失禁のタイプ分類
看護師国家試験 第105回 午後 第95問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(85歳、女性)は、1人暮らしで、他県に住んでいる長男家族がいる。腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis)と診断されているが、ゆっくりとした動作であれば日常生活が可能であり、畑で野菜をつくることを趣味としている。 Aさんから尿失禁について外来受診時に相談があった。最近は尿意を感じてから洋式トイレに座るまでに時間がかかり、尿が少量漏れることがある。排尿回数は1日7回程度で、残尿感、排尿痛および排尿時不快感はない。咳、くしゃみ及び農作業の動作で尿が漏れることはない。 Aさんの尿失禁の種類として考えられるのはどれか。
- 1.溢流性尿失禁(overflow incontinence of urine)
- 2.機能性尿失禁(functional incontinence of urine)
- 3.切迫性尿失禁(urge incontinence of urine)
- 4.腹圧性尿失禁(stress incontinence of urine)
対話形式の解説
博士
Aさんは85歳で腰部脊柱管狭窄症があり、ゆっくりなら生活できるが、尿意を感じてもトイレに座るまで時間がかかり漏れてしまうのじゃ。
サクラ
尿失禁にも種類があるんですよね。覚え方が難しいです。
博士
大きく5つに分けて覚えよう。腹圧性・切迫性・混合性・溢流性・機能性じゃ。一つずつ特徴を見ていこう。
サクラ
お願いします。
博士
まず1の溢流性尿失禁は、前立腺肥大症や神経因性膀胱で尿路が詰まったり膀胱が縮めなくなって残尿が大量に溜まり、溢れるように少量ずつ漏れるタイプじゃ。Aさんに残尿感はあるか?
サクラ
残尿感はないと書かれています。
博士
じゃから溢流性ではない。2の機能性尿失禁は、膀胱や尿道そのものは正常なのに、運動障害や認知症でトイレ動作が間に合わず漏れるタイプじゃ。
サクラ
Aさんの状況とぴったり合いますね。脊柱管狭窄症で動きがゆっくりだから間に合わない。
博士
その通り、これが正解じゃ。3の切迫性尿失禁はどんな特徴じゃ?
サクラ
強い尿意切迫感が突然きて、我慢できず漏れるタイプです。過活動膀胱や脳梗塞後に多いですよね。
博士
よく覚えておる。Aさんに『急に我慢できない』という記載はない。4の腹圧性尿失禁は?
サクラ
咳やくしゃみ、重い物を持った時など腹圧が上がって漏れる、骨盤底筋が弱って起きる失禁ですね。
博士
うむ。Aさんは咳・くしゃみ・農作業でも漏れないと明記されておるから否定じゃ。
サクラ
正解は機能性尿失禁ですね。
博士
その通り。機能性尿失禁への対応は薬ではなく環境調整が中心じゃ。
サクラ
具体的にはどんな工夫ですか?
博士
トイレまでの動線を短くする、ポータブルトイレを夜間枕元に置く、手すりや夜間照明、脱ぎ着しやすい衣類、定時誘導などじゃ。ADLを上げるリハビリも有効じゃ。
サクラ
腹圧性なら骨盤底筋体操、切迫性なら抗コリン薬やβ3刺激薬、溢流性なら原疾患治療と、タイプごとに介入が違うんですね。
博士
そこがポイントじゃ。タイプを正しく見極めれば適切な介入につながる。高齢者は複数のタイプが混在する『混合性』もあるから、症状の聞き取りを丁寧にしよう。
POINT
尿失禁は腹圧性・切迫性・溢流性・機能性・混合性に分類されます。機能性尿失禁は下部尿路機能は保たれるが、ADL低下や認知機能障害によりトイレ動作が間に合わず漏れるタイプで、Aさんの脊柱管狭窄症による動作緩慢が典型例です。残尿感・切迫感・腹圧時漏出がないことから他のタイプは否定されます。介入は環境調整とADL向上が中心で、タイプ別の鑑別が適切ケアの第一歩です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(85歳、女性)は、1人暮らしで、他県に住んでいる長男家族がいる。腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis)と診断されているが、ゆっくりとした動作であれば日常生活が可能であり、畑で野菜をつくることを趣味としている。 Aさんから尿失禁について外来受診時に相談があった。最近は尿意を感じてから洋式トイレに座るまでに時間がかかり、尿が少量漏れることがある。排尿回数は1日7回程度で、残尿感、排尿痛および排尿時不快感はない。咳、くしゃみ及び農作業の動作で尿が漏れることはない。 Aさんの尿失禁の種類として考えられるのはどれか。
解説:正解は 2 です。機能性尿失禁は、下部尿路自体には異常がないが、運動機能や認知機能の低下によりトイレまでたどり着けず漏れてしまう失禁です。Aさんは腰部脊柱管狭窄症のため動作がゆっくりで、尿意を感じてから便器に座るまでに時間がかかり漏れる状態にあります。残尿感・排尿痛がなく、咳や腹圧でも漏れないことから溢流性・腹圧性は否定的で、尿意切迫感の記載もないため切迫性でもなく、機能性尿失禁と判断されます。
選択肢考察
-
× 1. 溢流性尿失禁(overflow incontinence of urine)
溢流性尿失禁は前立腺肥大症や神経因性膀胱などによる慢性的な尿路閉塞・膀胱収縮不全で残尿が大量に貯留し、溢れるように少量ずつ漏れる失禁です。Aさんには残尿感がなく該当しません。
-
○ 2. 機能性尿失禁(functional incontinence of urine)
排尿機能自体は保たれているが、ADL低下や認知症などでトイレ動作に時間がかかり漏れるタイプです。脊柱管狭窄症で動作緩慢なAさんに合致し、正解です。
-
× 3. 切迫性尿失禁(urge incontinence of urine)
切迫性尿失禁は強い尿意切迫感の直後に我慢できず漏れる失禁で、過活動膀胱や脳血管障害で生じます。Aさんは『間に合わない』だけで切迫感の記載はなく該当しません。
-
× 4. 腹圧性尿失禁(stress incontinence of urine)
腹圧性尿失禁は咳・くしゃみ・運動など腹圧上昇時に漏れる失禁で、骨盤底筋群の脆弱化が原因です。Aさんは咳・くしゃみ・農作業で漏れないと明記されており否定されます。
高齢者の尿失禁は①腹圧性②切迫性③混合性④溢流性⑤機能性の5つに分類されます。機能性尿失禁への介入は排尿機能への直接治療ではなく、環境調整(ポータブルトイレ設置、手すり、夜間照明、衣類の工夫)、定時誘導、ADL向上のリハビリが中心です。Aさんの場合、トイレまでの動線を短くする、ゆとりのある衣類にする、腰痛対策で動作時間を短縮するなどが有効です。逆に、腹圧性には骨盤底筋体操、切迫性には抗コリン薬やβ3刺激薬、溢流性には原疾患治療(前立腺肥大なら手術)などが選択されます。
高齢者の尿失禁の病型分類を理解し、身体機能の低下が原因で排尿動作が間に合わない『機能性尿失禁』を鑑別できるかを問うている。
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