施設ケアにおける意思尊重と個別性
看護師国家試験 第105回 午前 第98問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(94歳、男性)は、要介護1で、妻(84歳)と2人暮らしであった。肺炎(pneumonia)で入院治療していたが本日退院し、介護老人保健施設に初めて入所した。現在の障害高齢者の日常生活自立度判定基準はランクB-2、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡaである。食欲は良好で、食事の姿勢や動作は自立している。部分義歯で不具合はなく、口腔内の異常はない。 入所後3日。Aさんは「家では朝起きてすぐに歯磨きをして、口の中をすっきりさせて1日が始まった。ここでは、歯磨きは食後に介助すると言われたが、私は嫌だ」と言い、不満な様子である。Aさんはベッドから車椅子への移乗に介助が必要であるが、歯ブラシとコップとを用いて自分で歯磨きができる。 このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 1.朝食前の歯磨きは効果がないと説明する。
- 2.朝食前の歯磨きの習慣を変更するように勧める。
- 3.朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談する。
- 4.朝食前は職員が少ないので対応できないと謝罪する。
対話形式の解説
博士
入所3日目のAさんが「家では朝起きてすぐ歯磨きしていたのに、ここでは食後と言われた。嫌だ」と不満を訴えておる。
アユム
長年の生活習慣を急に変えられたら誰でも嫌ですよね。
博士
その通り。しかも朝食前の歯磨きには医学的な意義もある。夜間に増殖した口腔内細菌を減らすことで誤嚥性肺炎の予防になるのじゃ。
アユム
Aさんは自分で歯ブラシとコップを使って歯磨きできるとありますね。
博士
そう。移乗には介助が必要でも、歯磨き自体は自立しておる。この残存機能を活用しない手はない。
アユム
正解はどれでしょう。
博士
正解は3の「朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談する」じゃ。本人の意思と残存機能を尊重し、どうすれば実現できるかを一緒に考える姿勢が看護の基本じゃな。
アユム
1の「朝食前の歯磨きは効果がない」は。
博士
誤りじゃ。起床時の口腔ケアは誤嚥性肺炎予防に有効で、むしろ推奨されるケアじゃ。
アユム
2の「習慣を変更するように勧める」は。
博士
本人が大切にしてきた生活習慣を施設都合で変えさせるのは、尊厳と自己決定を軽視した対応じゃ。不満と拒否感が増すだけじゃよ。
アユム
4の「職員が少ないので対応できない」は。
博士
施設側の都合で利用者の希望を退けるのは高齢者ケアの原則に反する。しかもAさんは歯磨き自体は自立しておるから、洗面所への移乗を起床介助と一緒に行えば対応できるはずじゃ。
アユム
具体的な相談内容としては、起床時に洗面所まで車椅子で移動する支援をするとか、ベッドサイドでガーグルベースンを使って歯磨きするとか、でしょうか。
博士
素晴らしい。本人の希望を聞きながら、職員体制と安全性を踏まえて複数の選択肢を提示するのが良い。
アユム
老健は在宅復帰を目指す施設ですから、家での生活習慣を維持する方が退所後もスムーズですよね。
博士
その通り。生活歴の継続性を保つことが認知症予防にもなり、在宅復帰意欲の維持にもつながるのじゃ。
アユム
集団処遇に流されず、一人ひとりの個別性を大切にしたいです。
博士
それが看護の本質じゃ。本人の尊厳・自己決定・残存機能・生活歴の4つを常に意識すべきじゃな。
アユム
ケアプラン会議などで多職種と共有することも大事ですね。
博士
もちろんじゃ。介護職・リハ職と連携してAさんの希望を実現する体制を作ろう。
POINT
老健入所中のAさんが朝食前の歯磨きを希望しており、本人は歯磨き動作が自立しています。本人の意思と残存機能を尊重し、どうすれば実現できるかを一緒に相談することが個別ケアと自立支援の観点から最も適切です。朝の起床時口腔ケアは誤嚥性肺炎予防にも有効で医学的にも理にかなっています。施設都合や集団処遇で一律対応せず、生活歴の継続性を守る姿勢が在宅復帰と尊厳ある生活につながります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(94歳、男性)は、要介護1で、妻(84歳)と2人暮らしであった。肺炎(pneumonia)で入院治療していたが本日退院し、介護老人保健施設に初めて入所した。現在の障害高齢者の日常生活自立度判定基準はランクB-2、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクⅡaである。食欲は良好で、食事の姿勢や動作は自立している。部分義歯で不具合はなく、口腔内の異常はない。 入所後3日。Aさんは「家では朝起きてすぐに歯磨きをして、口の中をすっきりさせて1日が始まった。ここでは、歯磨きは食後に介助すると言われたが、私は嫌だ」と言い、不満な様子である。Aさんはベッドから車椅子への移乗に介助が必要であるが、歯ブラシとコップとを用いて自分で歯磨きができる。 このときのAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。Aさんは長年の生活習慣として朝食前の歯磨きを行っており、自分で歯磨きができる能力も保たれています。本人の意思と自立機能を尊重し、どのように朝食前の歯磨きを実現できるかをAさんと一緒に考えることが、個別性を重視した最も適切な看護対応です。
選択肢考察
-
× 1. 朝食前の歯磨きは効果がないと説明する。
朝食前の歯磨きは夜間に増殖した口腔内細菌を除去する意義があり、誤嚥性肺炎予防にも有効とされています。効果がないという説明は誤りです。
-
× 2. 朝食前の歯磨きの習慣を変更するように勧める。
本人が大切にしてきた生活習慣を施設都合で変更させるのは、尊厳と自己決定を軽視した対応です。Aさんの不満と拒否感を増すだけです。
-
○ 3. 朝食前の歯磨きの援助方法をAさんと相談する。
本人の意思と残存機能を尊重し、どうすれば朝食前の歯磨きを実現できるかを一緒に考える対応です。自立支援・個別ケア・意思決定支援の観点から最も適切です。
-
× 4. 朝食前は職員が少ないので対応できないと謝罪する。
施設側の都合を理由に利用者の希望を退けるのは不適切です。Aさんは自分で歯磨きできるため、移乗介助の時間を調整すれば対応可能です。
高齢者ケアでは(1)本人の尊厳と自己決定の尊重、(2)残存機能の活用による自立支援、(3)生活歴・生活習慣の継続性、(4)個別性を重視した個別ケアが基本原則です。朝の起床時の口腔ケアは、夜間増殖した口腔内細菌を減らし誤嚥性肺炎のリスクを下げる意義があり、特に高齢者では食前口腔ケアが推奨されています。施設ケアでは集団処遇になりがちですが、本人の希望と能力に応じてケア方法を調整することがQOL向上と在宅復帰意欲の維持につながります。
高齢者施設におけるケアの個別性と本人の意思尊重、自立支援の原則を理解しているかを問うています。
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