腰部脊柱管狭窄症での不安への対応
看護師国家試験 第105回 午後 第97問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(85歳、女性)は、1人暮らしで、他県に住んでいる長男家族がいる。腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis)と診断されているが、ゆっくりとした動作であれば日常生活が可能であり、畑で野菜をつくることを趣味としている。 Aさんは、買い物の途中で急に強い腰痛が出現して動けなくなり、入院した。入院後1日。腰痛は軽減したが「また痛くなりそうで怖い。家に戻りたいけど心配です」と話す。 看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 1.「痛くなれば、また入院して治療しましょう」
- 2.「入院が長引くと、もっと動けなくなりますよ」
- 3.「1人暮らしが心配なら息子さんと同居したらいかがですか」
- 4.「自宅でも痛みが強くならないような生活の工夫を考えましょう」
対話形式の解説
博士
入院後1日のAさんは『また痛くなりそうで怖い、家に戻りたいけど心配』と訴えておる。この発言をどう捉えるかが鍵じゃ。
サクラ
痛みへの恐怖と、自宅に帰りたい気持ちの両方を抱えているんですね。
博士
その通り。相反する感情を持つのは当然のことじゃ。看護師は両方を受け止めたうえで、具体的な解決策を一緒に探す姿勢が重要じゃ。
サクラ
腰部脊柱管狭窄症ってどんな病気でしたっけ?
博士
加齢で椎間板や黄色靱帯が厚くなり、脊柱管が狭くなって神経を圧迫する病気じゃ。特徴的な症状は?
サクラ
間欠性跛行ですよね。歩くと下肢にしびれや痛みが出て、前屈で楽になる。
博士
正解。シルバーカーを押して歩くと症状が軽減するのもそのためじゃ。では選択肢を見ていこう。1の『痛くなればまた入院しましょう』はどうじゃ?
サクラ
予防を考えず再入院を前提にしていて、Aさんの『痛くなりたくない』気持ちに応えていません。
博士
その通り。治療の受け皿を示すだけでセルフケア支援にならん。2の『入院が長引くと動けなくなる』は?
サクラ
脅すような言い方で不安を増やすだけです。信頼関係も壊れますね。
博士
よく理解しておる。廃用を説明するにしても言い方が悪すぎる。3の『息子さんと同居したら』は?
サクラ
Aさんは1人暮らしの不安ではなく痛みの不安を訴えているので、話をすり替えていますね。
博士
正解。家族形態への踏み込みすぎの介入でもある。4の『生活の工夫を一緒に考えましょう』が正解じゃ。
サクラ
具体的にはどんな工夫があるんですか?
博士
前屈姿勢で楽になるからシルバーカーや買物カートを活用する、重い荷物を持たない、長時間の立位・歩行は避けて休憩を挟む、起き上がるときは横向きから、コルセットを上手に使う、腹筋・背筋のストレッチ、体重管理などじゃ。
サクラ
具体的な対策があれば、Aさんも安心して家に帰れますね。
博士
その通り。薬物療法ではNSAIDsに加え、プロスタグランジンE1製剤(リマプロスト)が神経周囲の血流を改善し間欠性跛行に有効じゃ。
サクラ
患者の思いを受け止めつつ、実行可能な予防策を一緒に考える、というのが基本姿勢なんですね。
博士
その通り。不安を具体的行動に変換することで自己効力感が高まり、自宅療養の自信につながる。これが老年看護の核心じゃ。
POINT
腰部脊柱管狭窄症は前屈で症状軽減、間欠性跛行が特徴の疾患で、再発予防には生活動作の工夫が不可欠です。痛みの再発への恐怖と自宅復帰への希望を持つAさんには、本人と共に予防策を考える協働的アプローチが最適です。再入院前提の発言や不安を煽る説明、相談内容をすり替える助言は信頼関係を損ない不適切です。セルフケアへの自信を支えることが退院支援の核心となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(85歳、女性)は、1人暮らしで、他県に住んでいる長男家族がいる。腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis)と診断されているが、ゆっくりとした動作であれば日常生活が可能であり、畑で野菜をつくることを趣味としている。 Aさんは、買い物の途中で急に強い腰痛が出現して動けなくなり、入院した。入院後1日。腰痛は軽減したが「また痛くなりそうで怖い。家に戻りたいけど心配です」と話す。 看護師の対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんは『痛みが再発することへの恐怖』と『自宅に戻りたい気持ち』を同時に抱えています。看護師は本人の思いを受け止め、腰部脊柱管狭窄症の増悪を予防する生活動作(前屈姿勢の活用、重量物の持ち方、こまめな休息、杖の使用、歩行補助具など)を一緒に考えることで、不安軽減と自己効力感の向上、退院後のセルフケア継続を同時に支援できます。
選択肢考察
-
× 1. 「痛くなれば、また入院して治療しましょう」
再入院を前提とする発言は予防的関わりを放棄するもので、Aさんの『痛くならないようにしたい』という本質的なニーズに応えていません。
-
× 2. 「入院が長引くと、もっと動けなくなりますよ」
脅しに近い発言でAさんの不安を増大させ、信頼関係を損ねます。廃用症候群を説明するにしても言い方として不適切です。
-
× 3. 「1人暮らしが心配なら息子さんと同居したらいかがですか」
Aさんは『1人暮らしが心配』ではなく『痛みが再発するのが怖い』と訴えています。相談内容をすり替えており、家族形態への過剰な介入でもあり不適切です。
-
○ 4. 「自宅でも痛みが強くならないような生活の工夫を考えましょう」
痛みの予防策を本人と共に考えることで不安を具体的な行動に変換でき、自宅療養の自信につながります。Aさんの思いに最も合致する応答で正解です。
腰部脊柱管狭窄症は加齢変化により椎間板・黄色靱帯・椎間関節などが肥厚して脊柱管が狭窄し、馬尾や神経根を圧迫する疾患です。特徴は間欠性跛行(歩行で下肢のしびれ・痛みが出現し前屈で軽減)です。生活指導では①前屈姿勢が症状軽減に有効(シルバーカーや買物カート活用)②重いものを持たない③長時間の立位・歩行を避け休息を挟む④腰に負担のかからない起居動作(横向きから起き上がる)⑤コルセットの適切な使用⑥体重管理⑦腹筋・背筋のストレッチや強化が挙げられます。薬物療法はNSAIDs、プロスタグランジンE1製剤、神経障害性疼痛治療薬が用いられます。
患者の訴え(痛みへの恐怖と自宅療養への不安)を受け止め、予防的セルフケアへつなげる声かけとして最適な選択肢を問うている。
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