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ノロウイルスに立ち向かう―介護施設での感染拡大防止

看護師国家試験 第106回 午前 第97問 / 老年看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

106回 午前 第97問

Aさん(71歳、女性)は、要介護1で、ベッドからの立ち上がりや入浴などに一部介助を必要とするが、歩行器で室内を移動できる。失禁することがあるため失禁用のパッドを装着している。Aさんは介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を利用している。入所した日の夕方から、水様便と嘔吐とがみられ、感染性胃腸炎( infectious gastroenteritis )が疑われてトイレ付きの個室に移動した。 感染症の拡大を予防する方法で適切なのはどれか。

  1. 1.使い捨ての食器に変える。
  2. 2.汚物の付着した衣類は焼却処分する。
  3. 3.排泄介助を行う看護師はガウンを装着する。
  4. 4.Aさんの手指を速乾性擦式の手指消毒薬で消毒する。
  5. 5.Aさんが触れた歩行器を80%エタノールで清拭する。

対話形式の解説

博士 博士

今回は介護老人保健施設のショートステイで感染性胃腸炎を発症したAさんの事例じゃ。感染拡大を防ぐには何が適切か考えるぞ。

サクラ サクラ

冬場の施設でよく聞くやつですね。原因は何でしょう?

博士 博士

冬期なら真っ先に疑うのはノロウイルスじゃ。10〜100個程度のわずかなウイルスで感染する恐ろしい感染力があるんじゃよ。

サクラ サクラ

えっ、そんな少量で?

博士 博士

そう。しかも嘔吐物や糞便、汚染された二枚貝(カキなど)、汚染された環境表面からうつる。

サクラ サクラ

施設内だと一気に広がりそう…。

博士 博士

その通り。集団感染(アウトブレイク)のリスクが高いから、標準予防策+接触予防策の徹底が必要じゃ。

サクラ サクラ

選択肢を見ていきます。1の使い捨て食器は?

博士 博士

食器は次亜塩素酸や熱湯で消毒すれば十分。わざわざ使い捨てにする必要はないぞ。

サクラ サクラ

2の汚染衣類を焼却は?

博士 博士

これも過剰じゃ。0.1%程度の次亜塩素酸ナトリウムで消毒してから洗濯すれば再利用可能。

サクラ サクラ

3の排泄介助時のガウン装着は?

博士 博士

これこそ正解じゃ。水様便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれ、介助時に衣服が汚染されやすい。他の利用者のケアで感染を広げてしまう。

サクラ サクラ

手袋やマスクも必要ですよね?

博士 博士

もちろんじゃ。手袋・ガウン・マスク、必要に応じてゴーグル。これが接触予防策の基本じゃよ。

サクラ サクラ

4の患者さんに速乾性消毒薬は?

博士 博士

ここが重要ポイント。ノロウイルスはアルコールに抵抗性があるんじゃ。

サクラ サクラ

えっ、アルコールが効かないんですか!?

博士 博士

そうじゃ。だから手洗いは流水と石けんでしっかり行う。物品は次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。

サクラ サクラ

5の歩行器を80%エタノールというのも…

博士 博士

同じ理由で誤り。環境面の消毒は0.02%〜0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使うのが原則じゃ。

サクラ サクラ

嘔吐物の処理方法はどうですか?

博士 博士

ペーパータオルで覆って外側から内側へ拭き取り、0.1%次亜塩素酸で拭き、密閉袋に廃棄。処理者はPPE必須じゃよ。

サクラ サクラ

加熱は効きますか?

博士 博士

85℃・90秒以上の加熱で失活する。調理では重要な点じゃな。

サクラ サクラ

ノロはアルコール無効、次亜塩素酸が頼り、しっかり覚えます!

POINT

ノロウイルスなどの感染性胃腸炎は少量のウイルスで感染し、高齢者施設では集団感染のリスクが極めて高い。感染拡大防止の基本は標準予防策に接触予防策を加え、排泄介助時には手袋・ガウン・マスクを着用することである。ノロウイルスはアルコールに抵抗性があり、速乾性手指消毒薬は効果が限定的なため、流水と石けんによる手洗いと次亜塩素酸ナトリウムによる環境消毒が原則となる。嘔吐物・糞便の処理は0.1%次亜塩素酸を用い、ペーパータオルで覆いながら外側から内側へ拭き取って密閉廃棄する。介護現場の看護師はこれらの原則を身に付け、入所者と職員を感染から守る役割を果たす必要がある。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:Aさん(71歳、女性)は、要介護1で、ベッドからの立ち上がりや入浴などに一部介助を必要とするが、歩行器で室内を移動できる。失禁することがあるため失禁用のパッドを装着している。Aさんは介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を利用している。入所した日の夕方から、水様便と嘔吐とがみられ、感染性胃腸炎( infectious gastroenteritis )が疑われてトイレ付きの個室に移動した。 感染症の拡大を予防する方法で適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。感染性胃腸炎(とくにノロウイルス感染を想定)は嘔吐物・糞便を介して感染する接触・経口感染症であり、排泄介助は飛沫・接触感染のリスクが最も高い場面。医療・介護スタッフは標準予防策に加え接触予防策として手袋・ガウン・マスクを装着し、退出時に適切に外して手洗い(流水と石けん)を徹底する必要がある。ガウン装着により自身の衣服の汚染を防ぎ、他の利用者への感染伝播を防止できるため、拡大予防策として最も適切である。

選択肢考察

  1. × 1.  使い捨ての食器に変える。

    食器は通常の洗浄・消毒(熱湯消毒や次亜塩素酸ナトリウム)を適切に行えば感染は拡大しない。使い捨てにする必要はなく、環境負荷やコスト面でも第一選択ではない。

  2. × 2.  汚物の付着した衣類は焼却処分する。

    汚染衣類は次亜塩素酸ナトリウム0.1%程度での消毒後に通常洗濯で対応可能。焼却は患者の生活用品を奪うことにもなり、通常は選択されない。

  3. 3.  排泄介助を行う看護師はガウンを装着する。

    水様便・嘔吐物には多量のウイルスが含まれ、飛沫や接触で衣服・皮膚を汚染しやすい。排泄介助時は手袋・ガウン・マスク・必要時ゴーグルを装着し、適切に脱衣・廃棄することで他利用者への感染拡大を防げる。

  4. × 4.  Aさんの手指を速乾性擦式の手指消毒薬で消毒する。

    ノロウイルスはアルコールに抵抗性があり、速乾性擦式消毒薬では十分な効果が得られない。Aさんには流水と石けんによる手洗いを徹底してもらうのが原則。

  5. × 5.  Aさんが触れた歩行器を80%エタノールで清拭する。

    ノロウイルスにはアルコールの効果が限定的。環境面(ドアノブ、手すり、歩行器、便器など)の消毒は次亜塩素酸ナトリウム(0.02〜0.1%)を用いるのが標準。

ノロウイルスは冬期に流行し、10〜100個程度の少量ウイルスで感染する強い感染力をもつ。感染経路は①患者の嘔吐物・糞便との接触、②エアロゾル(嘔吐物の飛沫)、③汚染された食品(カキなど二枚貝)、④汚染された環境表面。消毒の原則は次亜塩素酸ナトリウム(嘔吐物処理は0.1%=1000ppm、環境表面は0.02%=200ppm)。処理時はガウン・手袋・マスクを着用し、嘔吐物はペーパータオルで覆って外側から内側へ拭き取り、密閉袋に廃棄。加熱は85℃・90秒以上で失活する。

感染性胃腸炎(ノロウイルス想定)の感染拡大防止策として、排泄介助時の個人防護具(PPE)の重要性を問う問題。アルコールが無効という特性と、標準・接触予防策の実践が鍵。