患側と健側を見極めた移動介助じゃ
看護師国家試験 第107回 午前 第97問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 75歳、女性 )。1人暮らし。脳梗塞( cerebral infarction )の後遺症で左不全麻痺があり、要介護1の認定を受けている。最近、夜間に中途覚醒することが多い。昨夜、トイレに行く際に転倒し、右手をついた。転倒後から右上肢の痛みがあり、翌朝になっても痛みが強かったため受診した。エックス線写真の結果から、右の上腕骨近位部骨折( proximal humerus fracture )と診断され、入院した。 入院後2日。Aさんは日中、ベッドで横になってテレビを観ていることが多い。 Aさんが尿意を訴えたため、看護師が付き添ってトイレに行くことになった。移動の方法として適切なのはどれか。
- 1.右腕を使って起き上がる。
- 2.しばらく座位をとってから立ち上がる。
- 3.骨折部の痛みがあるときも歩いてトイレに行く。
- 4.ベッドの高さは腰掛けたときにつま先が床に着くよう調整しておく。
対話形式の解説
博士
Aさんは左不全麻痺に加えて右上腕骨近位部骨折じゃ。利き手側の骨折となると困りものじゃのう。
サクラ
左右どちらも使いにくい状況ですね。
博士
そこで移動時は、どちらの腕をどう使うか、どの順番で動かすかを慎重に判断せんといかん。
サクラ
まず起き上がりですが、右腕を使ってもいいんですか?
博士
それはいかん。右は骨折部じゃから荷重も把持も避ける。健側の左や介助者の支えで起き上がるのが原則じゃ。
サクラ
起き上がった後はすぐ立てばいいですか?
博士
いや、そこが今回のポイントじゃ。日中ずっと臥位でおるから、急に立つと起立性低血圧でふらつくんじゃ。
サクラ
端座位でしばらく休むんですね。
博士
そうじゃ。30秒から1分ほど座って、めまいや気分不快がないか確認してから立ち上がるんじゃ。
サクラ
ベッドの高さはどうすればいいですか?
博士
踵までしっかり床に着く高さに調整する。つま先だけだと立ち上がり時にバランスを崩すからのう。
サクラ
痛みがあるのに歩くのは危険ですね。
博士
その通り。痛みで姿勢が崩れれば左不全麻痺と合わせて二重の転倒リスクになるから、車椅子やポータブルトイレを使う判断が必要じゃ。
サクラ
履物も大事ですか?
博士
うむ、踵のある滑りにくい靴がよい。スリッパは転倒の最大原因の一つじゃからな。
サクラ
環境面ではどうでしょう?
博士
夜間の中途覚醒が多いから、ベッドサイドの照明、手すり、動線上の障害物除去もチェックじゃ。
サクラ
尿意を我慢させるのもよくないですね。
博士
我慢すると急いで動いて転倒につながる。排尿間隔を把握して計画的に誘導するんじゃ。
サクラ
立ち上がりの動作のコツはありますか?
博士
『足底接地・背筋伸展・前傾姿勢』の3点じゃ。お辞儀するように前傾してから足に力を入れると楽に立てる。
POINT
高齢患者の移動介助では、患側・健側それぞれのリスクを踏まえた手順が重要である。Aさんは左不全麻痺と右上腕骨骨折の二重ハンディがあるため、起き上がりは健側や介助で行い、起立性低血圧を防ぐために端座位をしばらく保つ。ベッドの高さは踵が着く位置に調整し、痛みが強いときは車椅子やポータブルトイレを選択する。環境整備と排尿誘導で転倒リスクをさらに下げる。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:Aさん( 75歳、女性 )。1人暮らし。脳梗塞( cerebral infarction )の後遺症で左不全麻痺があり、要介護1の認定を受けている。最近、夜間に中途覚醒することが多い。昨夜、トイレに行く際に転倒し、右手をついた。転倒後から右上肢の痛みがあり、翌朝になっても痛みが強かったため受診した。エックス線写真の結果から、右の上腕骨近位部骨折( proximal humerus fracture )と診断され、入院した。 入院後2日。Aさんは日中、ベッドで横になってテレビを観ていることが多い。 Aさんが尿意を訴えたため、看護師が付き添ってトイレに行くことになった。移動の方法として適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。Aさんは75歳で左不全麻痺があり、新たに右上腕骨近位部骨折を発症しているため、患側(右)は荷重・把持動作を避け、健側(左)にも麻痺があるという二重のリスクを抱えています。長時間臥床後に急に起立すると起立性低血圧でめまいや失神を起こす危険があるため、ベッドに腰掛けて座位をしばらく保持し、血圧の再分布と平衡感覚の適応を待ってから立ち上がることが安全です。これにより転倒の再発を防ぎ、骨折部への再衝撃も回避できます。
選択肢考察
-
× 1. 右腕を使って起き上がる。
右上腕骨近位部骨折の患側で起き上がれば、骨折部に強い剪断力がかかり疼痛増強と再転位を招くため、左(健側)や介助者の支援で起き上がります。
-
○ 2. しばらく座位をとってから立ち上がる。
長時間臥床後は起立性低血圧やめまいが起こりやすいため、端座位を数十秒〜1分程度保持して循環を整えてから立つことで転倒を予防できます。
-
× 3. 骨折部の痛みがあるときも歩いてトイレに行く。
痛みがある状態で歩行すれば姿勢バランスが崩れ、左不全麻痺も相まって再転倒のリスクが高まります。車椅子やポータブルトイレを活用します。
-
× 4. ベッドの高さは腰掛けたときにつま先が床に着くよう調整しておく。
つま先だけでは足底が安定せず立ち上がり時にバランスを崩します。踵まで床にしっかり着く高さに調整することが転倒予防の原則です。
高齢者の移動介助では、端座位で『足底接地・背筋伸展・前傾姿勢』の3点を確認してから立ち上がると安全。履物は踵のある滑りにくいシューズ、足元照明、手すり設置なども環境整備として重要。
左不全麻痺と右上腕骨骨折という二重ハンディを持つ高齢者の安全な移動介助方法を選ぶ問題です。
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