81歳女性、圧迫骨折の背景を読み解く
看護師国家試験 第108回 午前 第117問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(81歳、女性)は、1人暮らし。7年前から糖尿病(diabetes mellitus)、高血圧症(hypertension)、便秘症(constipation)で病院の内科に定期的に通院しており、近所に住む長女が時々様子を見に来ていた。本日、長女がAさん宅を訪ねたところ、Aさんは床に倒れて起き上がれなくなっていた。受診の結果、胸椎と腰椎の圧迫骨折(compression fracture)で病院に入院した。入院時、Aさんは病棟看護師に「朝食は食べていません。朝の薬を飲んだと思うが、はっきり覚えてません。家に帰ればわかります」と話した。病棟看護師が体のことで心配なことはあるかを問うと「この半年で体重が2kg減りました。最近は疲れやすく歩くのもゆっくりで、握力も弱くなり荷物を持つのがつらいです。このまま寝たきりになるのではないかと不安です」と話した。内科のカルテには1か月前の計測で身長150cm、体重41kgと記載されていた。入院時のバイタルサインは、体温36.6°C、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧144/88mmHg。血糖値114mg/dLで、軽度の皮膚湿潤があった。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは29点であった。 入院時のアセスメントで適切なのはどれか。
- 1.頻脈がある。
- 2.低血糖である。
- 3.フレイルである。
- 4.高度な認知機能の低下がある。
対話形式の解説
博士
Aさんは81歳、圧迫骨折で入院した。体重減少・易疲労感・歩行遅延・握力低下を訴えておる。これをどう総合するかのう
サクラ
フレイルが疑われますか?
博士
その通りじゃ。Friedの5項目基準で、体重減少・疲労感・歩行速度低下・握力低下の4つに該当する。フレイル確定じゃ
サクラ
Friedの基準を詳しく教えてください
博士
1つ目は年間4.5kgまたは5%以上の体重減少、2つ目は主観的疲労感、3つ目は歩行速度低下、4つ目は握力低下、5つ目は身体活動低下。3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイルじゃ
サクラ
日本ではJ-CHS基準もあるそうですが
博士
そうじゃ。握力は男性28kg未満、女性18kg未満、歩行速度は1.0m/秒未満と具体的な数値が決まっておる。Aさんは握力低下を自覚しており、該当可能性が高い
サクラ
BMIはどうですか
博士
身長150cm体重41kgでBMI18.2じゃ。低体重でサルコペニア併存も疑われる。低栄養と筋量減少が圧迫骨折の下地になった可能性が高いのう
サクラ
選択肢1の頻脈はどうでしょう
博士
脈拍80/分は成人の正常範囲じゃ。頻脈は100/分以上と覚えておくとよい
サクラ
選択肢2の低血糖は?
博士
血糖114mg/dLは正常範囲。低血糖は70mg/dL未満が一般的な定義じゃ。皮膚湿潤があるが低血糖とは断定できん
サクラ
皮膚湿潤はなぜあるんでしょう
博士
倒れていて不安や労作があった可能性、気温や環境要因など多要因が考えられる。血糖値と矛盾しないかを確認するのがアセスメントの基本じゃ
サクラ
選択肢4の高度認知機能低下は?
博士
HDS-R29点は満点近く、認知症の疑いはまず否定してよい。20点以下で認知症疑いじゃから覚えておくんじゃ
サクラ
フレイルへの介入は何がありますか?
博士
3本柱じゃ。レジスタンス運動中心の運動療法、蛋白質を中心とした栄養改善、社会参加。早期に介入すれば可逆性が高いのがフレイルの特徴じゃ
サクラ
圧迫骨折自体もフレイル関連なんですね
博士
その通り。フレイルは転倒・骨折・入院・要介護・死亡のリスクを高める。退院後の介護度評価や骨粗鬆症治療、生活環境調整が必須になる
POINT
フレイルはFried基準の5項目中3項目以上で判定され、Aさんは体重減少・易疲労感・歩行遅延・握力低下の4項目に該当しフレイルと診断できます。脈拍80/分は正常範囲、血糖114mg/dLは低血糖ではなく、HDS-R29点は認知症疑いを否定します。BMI18.2の低体重でサルコペニア合併も示唆され、圧迫骨折の背景にフレイルがあると考えられます。運動・栄養・社会参加による介入が予後改善に重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(81歳、女性)は、1人暮らし。7年前から糖尿病(diabetes mellitus)、高血圧症(hypertension)、便秘症(constipation)で病院の内科に定期的に通院しており、近所に住む長女が時々様子を見に来ていた。本日、長女がAさん宅を訪ねたところ、Aさんは床に倒れて起き上がれなくなっていた。受診の結果、胸椎と腰椎の圧迫骨折(compression fracture)で病院に入院した。入院時、Aさんは病棟看護師に「朝食は食べていません。朝の薬を飲んだと思うが、はっきり覚えてません。家に帰ればわかります」と話した。病棟看護師が体のことで心配なことはあるかを問うと「この半年で体重が2kg減りました。最近は疲れやすく歩くのもゆっくりで、握力も弱くなり荷物を持つのがつらいです。このまま寝たきりになるのではないかと不安です」と話した。内科のカルテには1か月前の計測で身長150cm、体重41kgと記載されていた。入院時のバイタルサインは、体温36.6°C、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧144/88mmHg。血糖値114mg/dLで、軽度の皮膚湿潤があった。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは29点であった。 入院時のアセスメントで適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。フレイル(Fried基準)は(1)体重減少、(2)主観的疲労感、(3)歩行速度低下、(4)握力低下、(5)身体活動低下の5項目中3項目以上該当で判定されます。Aさんは体重減少・易疲労感・歩行速度低下・握力低下が明らかで4項目該当し、フレイルと判断できます。BMIは41÷(1.5×1.5)=18.2で低体重でもあり、サルコペニアの併存も示唆されます。
選択肢考察
-
× 1. 頻脈がある。
脈拍80/分は成人の正常範囲です。頻脈は一般的に100/分以上を指します。
-
× 2. 低血糖である。
血糖値114mg/dLは正常範囲内です。低血糖の定義は一般に70mg/dL未満で、皮膚湿潤があるものの数値上は低血糖ではありません。
-
○ 3. フレイルである。
Fried基準5項目中、体重減少(半年で2kg、約4.6%)、易疲労感、歩行速度低下、握力低下の4項目に該当しておりフレイルと判断できます。圧迫骨折の背景にある可能性が高く、介入対象です。
-
× 4. 高度な認知機能の低下がある。
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は30点満点で、20点以下で認知症疑いとされます。Aさんは29点で認知機能はほぼ正常と判断されます。
フレイルは可逆性のある「健常と要介護の中間状態」で、適切な介入(運動・栄養・社会参加)により改善可能です。日本版CHS基準(J-CHS)では体重減少、握力低下(男<28kg、女<18kg)、主観的疲労感、歩行速度(<1.0m/秒)、身体活動低下で評価します。フレイルは転倒・骨折・入院・要介護・死亡のリスクを高めるため早期発見・介入が重要で、Aさんの圧迫骨折もフレイル関連転倒の可能性があります。
高齢者のフレイル診断基準(Fried基準/J-CHS基準)を理解し、バイタル・血糖・認知機能の正常範囲と合わせて総合的にアセスメントできるかが問われています。
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