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排便の仕組みを徹底解剖―努責で体に何が起きている?

看護師国家試験 第106回 午後 第73問 / 人体の構造・機能 / 消化器系

国試問題にチャレンジ

106回 午後 第73問

排便時の努責で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 1.直腸平滑筋は弛緩する。
  2. 2.呼息位で呼吸が止まる。
  3. 3.外肛門括約筋は収縮する。
  4. 4.内肛門括約筋は弛緩する。
  5. 5.腹腔内圧は安静時より低下する。

対話形式の解説

博士 博士

今日は排便時の『努責(いきみ)』について学ぶのじゃ。便が出るときに体の中で何が起こっているか、想像できるかの?

サクラ サクラ

お腹に力を入れる、くらいしか…。

博士 博士

ではまず肛門括約筋の仕組みから。肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋の二重の門番がいるのじゃ。

サクラ サクラ

2つあるんですか?どう違うんですか?

博士 博士

内側は平滑筋で自律神経支配=不随意。外側は横紋筋で陰部神経支配=随意。つまり内側は無意識、外側は意識して動かせるのじゃ。

サクラ サクラ

便意を我慢できるのは外肛門括約筋のおかげなんですね!

博士 博士

その通り。便が直腸に入ると、直腸壁が伸びて仙髄の排便中枢に信号が行き、内肛門括約筋が反射的に弛緩する。これが便意なのじゃ。

サクラ サクラ

でもトイレに行くまで我慢できるのは、外肛門括約筋を意識的に締めているからですね。

博士 博士

うむ。そしていざ排便するときは外肛門括約筋を緩め、同時に『努責』するのじゃ。

サクラ サクラ

努責って、ただ力むだけじゃないんですか?

博士 博士

実は声門を閉じて息を止めて、横隔膜を下げ腹筋を収縮させる一連の動作。これで腹腔内圧が上がり、便を押し出す力になるのじゃ。

サクラ サクラ

じゃあ呼息位で呼吸を止める、は正しいんですね。

博士 博士

その通り。だから選択肢5の『腹腔内圧が低下する』は逆。上昇するのじゃ。

サクラ サクラ

直腸平滑筋も、弛緩じゃなくて収縮するんですよね?

博士 博士

よく気づいたのう。直腸が収縮しなければ便を送れないからの。ついでに臨床で重要な話を。努責は血圧や頭蓋内圧、眼圧を上げるのじゃ。

サクラ サクラ

心筋梗塞後や脳出血後、緑内障の患者さんでは努責を避けるのが大事、と聞いたことがあります!

博士 博士

素晴らしい。看護では便を柔らかく保ち、過度な努責をさせない排便コントロールが重要なのじゃ。

サクラ サクラ

生理学と臨床がつながってきました!

POINT

排便時の努責は、内肛門括約筋(平滑筋・不随意)と外肛門括約筋(横紋筋・随意)をともに弛緩させた状態で、声門を閉じて呼息位で呼吸を止め、横隔膜と腹筋を収縮させて腹腔内圧を高める一連の動作です。直腸平滑筋も収縮して便を押し出すため、選択肢の『直腸平滑筋弛緩』『外肛門括約筋収縮』『腹腔内圧低下』はいずれも誤りです。努責は血圧・頭蓋内圧・眼圧を一過性に上昇させるため、循環器疾患、脳血管疾患、緑内障の患者では排便コントロールと努責軽減が看護の要点となります。排便失神のように循環動態に影響する場面もあり、生理学を理解すると安全な排便援助の根拠が見えてきます。

解答・解説

正解は 2 4 です

問題文:排便時の努責で正しいのはどれか。2つ選べ。

解説:正解は 2 と 4 です。排便は直腸内に便が送られると直腸壁の伸展が骨盤神経を介して仙髄の排便中枢に伝わり、反射性に内肛門括約筋(平滑筋・不随意)が弛緩して起こります。上位中枢の指令により陰部神経を介して外肛門括約筋(横紋筋・随意)も弛緩し、同時に『努責(いきみ)』として声門を閉じ(呼息位で息を止め)、横隔膜と腹筋を収縮させて腹腔内圧を上昇させることで、直腸内の便を肛門から押し出します。したがって『呼息位で呼吸が止まる』と『内肛門括約筋は弛緩する』が正しい記述になります。

選択肢考察

  1. × 1.  直腸平滑筋は弛緩する。

    直腸平滑筋は便を押し出すために収縮する。弛緩したままでは便を肛門側へ送り出せず、排便は成立しない。

  2. 2.  呼息位で呼吸が止まる。

    努責時は息を吐いた位置で声門を閉じ、横隔膜を下げた状態で呼吸を止める。これにより腹腔内圧を効率よく高められ、排便を助ける。

  3. × 3.  外肛門括約筋は収縮する。

    外肛門括約筋は随意筋で、排便時には意識的に弛緩させる。収縮したままでは便の通過は妨げられる。

  4. 4.  内肛門括約筋は弛緩する。

    直腸壁の伸展が骨盤神経→仙髄排便中枢を介して反射性に内肛門括約筋を不随意に弛緩させる。これを直腸肛門反射と呼ぶ。

  5. × 5.  腹腔内圧は安静時より低下する。

    努責は横隔膜と腹筋を収縮させて腹腔内圧を上昇させる行為。低下するどころか安静時より大きく上昇する。

内肛門括約筋=平滑筋・自律神経(不随意)、外肛門括約筋=横紋筋・陰部神経(随意)が重要な区別。努責(Valsalva法)は腹腔内圧を上昇させるため、血圧や頭蓋内圧、眼圧を一過性に上げる。循環器疾患患者や脳血管疾患術後患者、緑内障患者では過度の努責を避け、便を柔らかく保つ(水分摂取・食物繊維・緩下剤)ことが看護の要点。排便時に失神する『排便失神』も努責による迷走神経反射が関与する。

排便時の生理機能(内・外肛門括約筋の作用、呼吸・腹圧)を正しく理解しているかを問う問題。『内=不随意で弛緩』『外=随意で弛緩』『努責=呼息位で息を止め腹圧上昇』をセットで覚える。