性同一性障害/性別違和を正しく理解しよう
看護師国家試験 第107回 午前 第54問 / 母性看護学 / 母性看護の対象と社会・環境
国試問題にチャレンジ
性同一性障害< GID >( gender identity disorder )/性別違和< GD >( gender dysphoria )について正しいのはどれか。
- 1.出現するのは成人期以降である。
- 2.ホルモン療法の対象にはならない。
- 3.生物学的性と性の自己認識とが一致しない。
- 4.生物学的性と同一の性への恋愛感情をもつことである。
対話形式の解説
博士
性同一性障害/性別違和、近年の看護で重要なテーマじゃな。まず定義を言えるかの?
アユム
身体の性と心の性が一致しない状態…ですよね?
博士
そのとおり。より正確には『生物学的性(assigned sex)と性自認(gender identity)が持続的に一致せず、そのために強い苦痛や生活上の困難が生じる状態』じゃ。
アユム
選択肢4の『同性への恋愛感情』は、性同一性障害とは違うんですか?
博士
まったく別概念じゃ。性自認は『自分は何者か』、性的指向は『誰を好きになるか』。この2軸は独立しておる。
アユム
例えばどういうことですか?
博士
出生時女性で性自認が男性のトランス男性が女性を好きになることもあれば、男性を好きになることもある。性自認と性的指向は自由な組み合わせじゃ。
アユム
なるほど、混同されやすいですね。
博士
国試でも『ここを区別しているか?』を問うパターンが多い。
アユム
出現時期についてはどうですか?
博士
多くは幼児期から『自分は違う』という違和感を持ち始め、思春期の第二次性徴で身体が自認と違う方向に変化していくことで強い苦痛が顕在化する。成人期以降に初めて出現するというのは誤りじゃ。
アユム
治療にはどんなものがありますか?
博士
カウンセリングによる精神的支援、ホルモン療法、性別適合手術の3本柱。本人の希望と医学的適応に応じて段階的に行われる。
アユム
日本で戸籍の性別変更はできますか?
博士
特例法により可能じゃ。2人以上の医師による診断、18歳以上、未婚、現に未成年の子がいない、などの要件があるが、生殖腺要件は2023年に最高裁で違憲判決が出て見直しが進んでおる。
アユム
看護の場面で気をつけることは?
博士
通称名での呼びかけ、入院時の病室配慮、保険証と実際の性別表現のギャップへの配慮など、本人の尊厳を守る具体的配慮が必要じゃ。
アユム
『先生、どう呼ばれたいですか』と直接聞いてもいいんでしょうか。
博士
むしろそれが正しい姿勢じゃ。勝手に推測せず、本人の希望を確認するのが尊重の基本じゃ。
アユム
LGBTQという言葉もよく聞きますが…。
博士
LGBのLGBは性的指向、Tのトランスジェンダーが性自認、Qはクエスチョニングあるいはクィア。医療者として枠組みを理解しておくと、対応の幅が広がるぞ。
POINT
性同一性障害/性別違和は、生物学的性と性自認との不一致により苦痛を生じる状態であり、同性愛という性的指向の概念とは明確に区別されます。違和感は幼児期〜思春期から出現することが多く、治療はカウンセリング・ホルモン療法・外科的治療の3本柱で行われます。看護では本人の希望する呼称や病室配慮など、個別性を尊重した関わりが求められ、日本では特例法による戸籍性別変更の制度が整えられています。医療現場でのジェンダーに関する正確な理解は、当事者の安心した受療を支える基盤となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:性同一性障害< GID >( gender identity disorder )/性別違和< GD >( gender dysphoria )について正しいのはどれか。
解説:正解は3の『生物学的性と性の自己認識とが一致しない』です。性同一性障害/性別違和とは、出生時に身体的特徴から割り当てられた性(生物学的性/assigned sex)と、自分自身が認識している性(gender identity)とが持続的に一致せず、そのことによって強い苦痛や社会生活上の困難を生じる状態を指します。DSM-5では『gender dysphoria(性別違和)』、ICD-11では『gender incongruence(性別不合)』として扱われ、近年は疾患としてではなく状態として尊重する流れにあります。日本では『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)』に基づき一定の要件下で戸籍上の性別変更が可能です。
選択肢考察
-
× 1. 出現するのは成人期以降である。
違和感は多くの場合、幼児期〜学童期から自覚され、第二次性徴の進行とともに思春期に強く顕在化します。成人期以降に初めて出現するとは限りません。
-
× 2. ホルモン療法の対象にはならない。
治療の柱はカウンセリング、ホルモン療法、外科的治療(性別適合手術)の3本柱で、本人の希望と医学的適応に応じて段階的に実施されます。ホルモン療法は重要な治療選択肢です。
-
○ 3. 生物学的性と性の自己認識とが一致しない。
これが性同一性障害/性別違和の本質的定義です。身体の性とこころの性(性自認)とのズレによって、持続的な違和感や苦痛が生じる状態をいいます。
-
× 4. 生物学的性と同一の性への恋愛感情をもつことである。
これは性的指向の一つである同性愛(ホモセクシュアル)の説明で、性自認の問題である性同一性障害とは別概念です。性自認と性的指向は独立した軸であることを押さえましょう。
覚えておきたい4つの軸は『生物学的性(sex)』『性自認(gender identity)』『性的指向(sexual orientation)』『性表現(gender expression)』。LGBTQのうちT(トランスジェンダー)が性自認の領域、LGB(レズビアン・ゲイ・バイ)が性的指向の領域にあたります。特例法による性別変更の要件には、2人以上の医師による診断、18歳以上、未婚、現に未成年の子がいない、生殖腺がないか生殖機能を欠く、変更後の性別の性器に近似する外観、などがあります(ただし生殖腺要件は2023年最高裁違憲判決を受けて見直しが進行中)。
性同一性障害/性別違和の定義を、性的指向(同性愛)との違いを含めて正確に理解しているかを問う問題です。
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