月経周期のホルモン劇場、ポジティブフィードバックが起こす唯一のサージ
看護師国家試験 第112回 午前 第61問 / 母性看護学 / 女性のライフサイクル各期の看護
国試問題にチャレンジ
排卵のある正常な月経周期で正しいのはどれか。
- 1.黄体は形成後1週間で萎縮する。
- 2.エストロゲンの作用で子宮内膜が分泌期になる。
- 3.発育した卵胞の顆粒膜細胞からプロゲステロンが分泌される。
- 4.エストロゲンのポジティブフィードバックによって黄体形成ホルモンの分泌が増加する。
対話形式の解説
博士
今日は正常な月経周期のホルモン制御について整理するのじゃ。ここは毎年形を変えて出題される頻出テーマじゃぞ。
サクラ
月経周期って、卵胞期・排卵・黄体期って3つに分けるんですよね。
博士
その通りじゃ。子宮内膜でみれば月経期・増殖期・分泌期の3相に分かれる。卵胞期と増殖期、黄体期と分泌期が時期的に対応しておるのじゃ。
サクラ
エストロゲンは卵胞期に増えて子宮内膜を厚くする、プロゲステロンは排卵後に出て分泌期を作るという理解で合ってますか。
博士
正解じゃ。エストロゲンは増殖、プロゲステロンは分泌と腺機能の成熟、そして体温上昇を担う。だから基礎体温は排卵後に高温相になるのじゃな。
サクラ
選択肢4の「エストロゲンのポジティブフィードバックでLHが増える」というのが引っかかります。フィードバックって普通は抑える方向じゃないんですか。
博士
良い疑問じゃ。通常は高くなったホルモンが上位の分泌を抑えるネガティブフィードバックが働く。しかし卵胞期後半、成熟卵胞からのエストロゲンが約200pg/mL以上を2日ほど持続すると、この回路が逆転してGnRHとLHの分泌を一気に押し上げるのじゃ。
サクラ
それがLHサージで、排卵のトリガーになるんですね。
博士
そうじゃ。LHサージのピークから24〜36時間以内に排卵が起こる。排卵検査薬はこのLHの急上昇を尿中で捉えておるのじゃ。
サクラ
黄体はその後どうなるんですか。選択肢1で「1週間で萎縮」とありますが。
博士
黄体の寿命は妊娠が成立しなければ約14日じゃ。1週間後はむしろプロゲステロンの分泌がピークに達する時期。妊娠すると絨毛からのhCGが黄体を刺激し続けて妊娠黄体となり、胎盤が完成するまでプロゲステロン供給を担う。
サクラ
選択肢3の「顆粒膜細胞からプロゲステロン」も違いますよね。
博士
その通りじゃ。顆粒膜細胞は莢膜細胞から渡されたアンドロゲンを芳香化してエストロゲンを作る。これをtwo-cell two-gonadotropin theoryと呼ぶ。プロゲステロンを本格的に作るのは排卵後に黄体化した顆粒膜細胞なのじゃ。
サクラ
国試ではこのフィードバックの方向を問う問題が定番なんですね。
博士
左様。基本は負のフィードバック、排卵直前だけが例外の正のフィードバック、この一点を押さえれば母性看護の序盤は得点源になるぞ。
POINT
正常な月経周期では視床下部のGnRH、下垂体前葉のFSH・LH、卵巣のエストロゲン・プロゲステロンが階層的なフィードバックで制御されています。卵胞期後半、成熟卵胞から持続的に分泌される高濃度エストロゲンがポジティブフィードバックとしてGnRH・LH分泌を急増させ、このLHサージが排卵を誘発することが最大のポイントです。排卵後は黄体が形成されプロゲステロンとエストロゲンの両方を分泌して子宮内膜を分泌期に導き、約14日で受精が成立しなければ退縮して月経となります。基礎体温の二相性やLHサージの時期は臨床でも不妊診療・妊活指導で用いられる基本知識で、看護師にも確実に求められる理解です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:排卵のある正常な月経周期で正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。卵胞期後半、成熟した卵胞から分泌されるエストロゲン(エストラジオール)が一定濃度(およそ200pg/mL以上)を48時間程度持続すると、通常は抑制的に働くフィードバックが逆転してポジティブフィードバックとなり、視床下部からのGnRH分泌、下垂体前葉からのLH(黄体形成ホルモン)分泌が急増する。このLHサージが引き金となり、24〜36時間以内に排卵が誘発される。
選択肢考察
-
× 1. 黄体は形成後1週間で萎縮する。
黄体の寿命は受精が成立しなかった場合で約14日(2週間)である。約1週間後にあたる黄体中期にはプロゲステロンとエストロゲンの分泌がピークを迎え、その後に退縮して白体となる。
-
× 2. エストロゲンの作用で子宮内膜が分泌期になる。
エストロゲンは子宮内膜の基底層から機能層を厚くする増殖期を担うホルモンである。排卵後に黄体から分泌されるプロゲステロンが内膜腺の分泌活動を高めて分泌期へ移行させる。
-
× 3. 発育した卵胞の顆粒膜細胞からプロゲステロンが分泌される。
成熟過程にある卵胞の顆粒膜細胞は、莢膜細胞が供給するアンドロゲンを芳香化してエストロゲンを産生する。プロゲステロンが主に分泌されるのは、排卵後に顆粒膜細胞が黄体化した段階である。
-
○ 4. エストロゲンのポジティブフィードバックによって黄体形成ホルモンの分泌が増加する。
卵胞期後期に高濃度・持続的となったエストロゲンが視床下部-下垂体系に正のフィードバックをかけ、LHサージを起こして排卵を誘発する。これは月経周期における唯一のポジティブフィードバックである。
月経周期は卵巣周期(卵胞期→排卵→黄体期)と子宮内膜周期(月経期→増殖期→分泌期)に分けて理解するとよい。視床下部のGnRH、下垂体前葉のFSH・LH、卵巣のエストロゲン・プロゲステロンが階層的にフィードバック制御を行い、基本はネガティブフィードバックだが、排卵直前だけは例外的にポジティブフィードバックが働く。基礎体温は排卵前が低温相、排卵後はプロゲステロンの体温上昇作用で高温相となり、二相性を示すことも理解の要点である。
月経周期に関わる4つのホルモンの作用と、フィードバック機構(特に排卵を誘発するLHサージの仕組み)を問う問題。
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