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重症筋無力症を極める!自己抗体が神経筋接合部を攻撃する病気

看護師国家試験 第109回 午前 第79問 / 疾病の成り立ちと回復の促進 / 基本的な病因

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第79問

重症筋無力症( myasthenia gravis )で正しいのはどれか。

  1. 1.男性に多い。
  2. 2.心肥大を生じる。
  3. 3.朝に症状が強くなる。
  4. 4.自己免疫疾患である。
  5. 5.70 歳以上に好発する。

対話形式の解説

博士 博士

今日は重症筋無力症、略してMG(myasthenia gravis)じゃ。神経筋疾患の代表として国試頻出じゃぞ。

サクラ サクラ

名前は聞きますが、どんな病気かピンときません。

博士 博士

要点は一つ、『神経筋接合部の自己免疫疾患』じゃ。神経から筋肉へ信号を伝える場所が抗体で攻撃される。

サクラ サクラ

神経筋接合部って、シナプスですよね?

博士 博士

その通り。運動神経の終末からアセチルコリンが放出され、筋肉側のアセチルコリン受容体(AChR)に結合して筋収縮が起こる。

サクラ サクラ

重症筋無力症ではそれが障害されるんですね。

博士 博士

うむ。患者の血中に抗AChR抗体という自己抗体ができて、受容体を破壊・ブロックする。だから神経が頑張って信号を送っても筋肉が応答できん。

サクラ サクラ

それで筋力が弱くなるんですね。選択肢4『自己免疫疾患である』が正解ですね。

博士 博士

その通り。ほかに抗MuSK抗体陽性型もある。特徴的症状は眼瞼下垂、複視、嚥下障害、四肢近位筋の脱力などじゃ。

サクラ サクラ

選択肢1『男性に多い』は?

博士 博士

逆じゃ。男女比1:1.7で女性に多い。とくに若年型(20〜40歳代)は女性優位。

サクラ サクラ

選択肢2『心肥大を生じる』は?

博士 博士

MGは骨格筋の病気で心筋は障害せん。ただし約15%で胸腺腫を合併するから、胸部CTで縦隔陰影を必ずチェックする。

サクラ サクラ

胸腺って何の臓器ですか?

博士 博士

免疫細胞のT細胞が成熟する場所じゃ。MGでは胸腺過形成や胸腺腫で異常な免疫反応が起きているとされ、胸腺摘出が治療になる。

サクラ サクラ

選択肢3『朝に症状が強くなる』は?

博士 博士

逆じゃ。MGの特徴は日内変動で、朝は軽く、使うほど悪化して夕方に強くなる。易疲労性とも呼ぶ。

サクラ サクラ

筋肉を使うほど悪化するのが特徴なんですね。

博士 博士

うむ。反復運動でアセチルコリンが枯渇しやすくなり、正常な受容体も減っているから補償がきかん。

サクラ サクラ

選択肢5『70歳以上に好発』は?

博士 博士

発症ピークは二相性で、女性は30〜50歳代、男性は50〜60歳代。70歳以上好発は不正確じゃ。

サクラ サクラ

診断はどうしますか?

博士 博士

テンシロンテスト(コリンエステラーゼ阻害薬で症状改善)、反復神経刺激試験、抗AChR抗体・抗MuSK抗体測定、胸部CTじゃ。

サクラ サクラ

治療は?

博士 博士

コリンエステラーゼ阻害薬(ピリドスチグミン)、ステロイド、免疫抑制薬、胸腺摘出、血漿交換、免疫グロブリン大量療法などじゃ。

サクラ サクラ

重症化すると呼吸筋もやられるんですよね。

博士 博士

その通り、『クリーゼ』と呼ぶ。呼吸困難、嚥下障害、構音障害が急速に悪化し、人工呼吸管理が必要になる緊急事態じゃ。

サクラ サクラ

看護のポイントは疲労管理と服薬指導、クリーゼの観察ですね。

博士 博士

完璧じゃ。自己免疫疾患+日内変動+女性+胸腺のキーワードで覚えるのじゃ。

POINT

重症筋無力症は、神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己抗体(抗AChR抗体等)が産生されることで神経筋伝達が障害される自己免疫疾患です。男女比約1:1.7で女性に多く、発症ピークは女性で30〜50歳代、男性で50〜60歳代の二相性です。特徴的症状は眼瞼下垂、複視、嚥下障害、四肢近位筋の脱力で、使うほど筋力が落ちる易疲労性と夕方悪化する日内変動を示します。約15%に胸腺腫を合併するため胸腺摘出が治療選択肢となり、ほかにコリンエステラーゼ阻害薬、ステロイド、免疫抑制薬、血漿交換、免疫グロブリン大量療法などが用いられます。呼吸筋麻痺を来すクリーゼは緊急対応が必要で、看護師は疲労管理・服薬指導・クリーゼ徴候の早期発見に重要な役割を果たします。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:重症筋無力症( myasthenia gravis )で正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。重症筋無力症は神経筋接合部のシナプス後膜に存在するアセチルコリン受容体(AChR)に対する自己抗体が産生され、神経筋伝達が障害される自己免疫疾患である。神経終末からアセチルコリンが放出されても受容体が抗体で破壊・ブロックされるため、筋収縮が弱くなり、使うほど筋力が低下する『易疲労性』が特徴となる。

選択肢考察

  1. × 1.  男性に多い。

    重症筋無力症は男女比約1:1.7で女性に多い。とくに若年型(20〜40歳代)は女性優位である。高齢発症型(50〜60歳代)では男性もやや増える傾向がある。

  2. × 2.  心肥大を生じる。

    重症筋無力症は骨格筋の神経筋接合部を障害する疾患で、心筋は障害されないため心肥大は特有の症状ではない。ただし胸腺腫合併例では縦隔陰影の拡大を認めることがある。

  3. × 3.  朝に症状が強くなる。

    重症筋無力症の典型的症状パターンは『日内変動』で、朝は比較的軽く、夕方になるほど症状が強くなるのが特徴。これを日内変動(diurnal fluctuation)という。使うほど悪化する易疲労性と一致する。

  4. 4.  自己免疫疾患である。

    アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)や筋特異的受容体型チロシンキナーゼ抗体(抗MuSK抗体)などの自己抗体が神経筋接合部を攻撃する典型的自己免疫疾患。胸腺異常(胸腺過形成や胸腺腫)を合併することが多く、胸腺摘出が治療選択肢となる。

  5. × 5.  70 歳以上に好発する。

    重症筋無力症の発症ピークは二相性で、女性は30〜50歳代、男性は50〜60歳代にピークがある。70歳以上に好発するとは言えない。なお近年は高齢発症型の相対的増加が指摘されている。

重症筋無力症の特徴的症状は、眼瞼下垂・複視などの眼症状、咀嚼・嚥下困難、構音障害、四肢近位筋の脱力、日内変動(夕方悪化)、易疲労性など。重症化すると呼吸筋麻痺による『クリーゼ』を起こし人工呼吸管理が必要になる。診断はテンシロンテスト(抗コリンエステラーゼ薬で症状改善)、反復神経刺激試験(減衰現象)、抗AChR抗体・抗MuSK抗体測定、胸部CT(胸腺評価)による。治療はコリンエステラーゼ阻害薬(ピリドスチグミン)、免疫抑制療法(ステロイド、タクロリムス等)、胸腺摘出、血漿交換、免疫グロブリン大量療法など。看護では疲労管理、服薬指導、クリーゼ徴候(呼吸困難、構音障害、嚥下障害の増悪)の観察が重要。

重症筋無力症の病態(自己免疫疾患)と疫学(女性優位・中年発症)、症状パターン(日内変動で夕方悪化)を総合的に問う問題。自己免疫疾患の代表例として国試頻出。