HIV感染症の基礎知識を整理しよう
看護師国家試験 第104回 午後 第31問 / 疾病の成り立ちと回復の促進 / 疾病に対する医療
国試問題にチャレンジ
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症(human immunodeficiency virus infection)で正しいのはどれか。
- 1.経皮感染する。
- 2.無症候期がある。
- 3.DNAウイルスによる。
- 4.血液中のB細胞に感染する。
対話形式の解説
博士
今日はHIVの基本を復習するぞ。学生さん、HIVは何ウイルスに分類されるか覚えとるかね?
サクラ
えっと、確かレトロウイルス科のRNAウイルスだったと思います。
博士
その通りじゃ。逆転写酵素でRNAをDNAに変換して宿主のゲノムに組み込むのが大きな特徴じゃな。
サクラ
だからゲノムに入り込んでしまうと完全には排除できないんですね。
博士
うむ。次に感染経路はどうじゃ?
サクラ
性的接触、血液、母子感染の三つです。日常生活の握手やくしゃみでは移りません。
博士
正解じゃ。経皮感染という選択肢に騙されてはいかん。健常皮膚は強力なバリアじゃからな。
サクラ
そして主な標的細胞はCD4陽性のヘルパーT細胞ですよね。B細胞ではありません。
博士
その通り。免疫の司令塔がやられるから細胞性免疫が崩壊し日和見感染が起こるんじゃ。
サクラ
無症候期は約10年と長いと教わりました。
博士
そこが今回のポイントじゃ。症状が出ないからこそスクリーニングと早期ARTが命綱になる。
サクラ
CD4が200未満になるとAIDS発症リスクが高くなるんですよね。
博士
よく覚えとるな。日和見感染症のラインじゃ。
サクラ
針刺し事故の予防内服も重要ですね。
博士
2時間以内に開始するのが推奨じゃ。看護師として必須の知識じゃぞ。
POINT
HIV感染症は約10年に及ぶ無症候期を有するレトロウイルスRNAウイルス感染症です。感染経路は性的接触・血液・母子感染で経皮感染はしません。標的細胞はCD4陽性のヘルパーT細胞であり、CD4数の低下とともに細胞性免疫が破綻しAIDSへ移行します。早期発見と継続的なARTが予後を大きく改善するため、スクリーニングと曝露後予防の知識が看護実践で不可欠です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症(human immunodeficiency virus infection)で正しいのはどれか。
解説:正解は 2 です。HIV感染後はおよそ数年から十年程度にわたる無症候期(臨床的潜伏期)があり、自覚症状がないままウイルスがCD4陽性T細胞を中心に増殖していきます。この期間に発見し抗レトロウイルス療法(ART)を導入することが、AIDS発症を防ぐうえで決定的に重要です。
選択肢考察
-
× 1. 経皮感染する。
HIVの主な感染経路は性的接触、血液(針刺しや輸血、注射器の共用)、母子感染(経胎盤・産道・母乳)の三つで、健常な皮膚を介しての感染は成立しません。経皮感染するのは疥癬や白癬などの皮膚寄生虫・真菌が代表で、HIVには当てはまりません。
-
○ 2. 無症候期がある。
急性感染期に伴うインフルエンザ様症状が消失したあと、無症候期に移行し平均で約8〜10年続きます。この間もウイルスは持続的に複製されCD4数は徐々に低下するため、定期的なフォローと早期治療が予後を左右します。
-
× 3. DNAウイルスによる。
HIVはレトロウイルス科に属する一本鎖RNAウイルスです。逆転写酵素により自己のRNAをDNAに変換し宿主ゲノムへ組み込む点が特徴で、この性質を標的とした逆転写酵素阻害薬がARTの基本薬として用いられます。
-
× 4. 血液中のB細胞に感染する。
HIVが結合する受容体はCD4分子と補助受容体CCR5またはCXCR4で、主な標的細胞はヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)、マクロファージ、樹状細胞です。B細胞は抗体産生を担う細胞でHIVの主標的ではありません。
AIDS指標疾患はニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、サイトメガロウイルス感染症など23疾患が定められています。CD4数200/μL未満は日和見感染リスクが高まる目安で、ART開始の重要な指標になります。針刺し事故時はCDC指針に沿って2時間以内のPEP(曝露後予防内服)開始が推奨されます。
HIV感染症の自然経過、感染経路、ウイルス分類、標的細胞という基本知識を正確に区別できるかを問う問題です。
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