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思春期の『心の親離れ』=心理的離乳とは?

看護師国家試験 第106回 午前 第78問 / 小児看護学 / 子どもの成長・発達

国試問題にチャレンジ

106回 午前 第78問

思春期に、親や家族との関係が依存的な関係から対等な関係に変化し、精神的に自立することを示すのはどれか。

  1. 1.自我同一性の獲得
  2. 2.心理的離乳
  3. 3.愛着形成
  4. 4.探索行動
  5. 5.母子分離

対話形式の解説

博士 博士

今日は発達心理学の用語整理じゃ。思春期に親から精神的に自立することを何と言う?

アユム アユム

えーと…母子分離?

博士 博士

惜しい。母子分離は乳幼児期の用語じゃ。正解は『心理的離乳』じゃよ。

アユム アユム

心理的離乳!断乳の精神版みたいなイメージですか?

博士 博士

まさにそう。アメリカの心理学者ホリングワースが提唱した概念で、身体的な離乳(断乳)に対して、心理的な親離れを意味する。

アユム アユム

いつ頃の話ですか?

博士 博士

思春期じゃ。およそ12歳前後から青年期にかけて。親と対等な関係を求め、自分で判断・行動したい欲求が強くなる。

アユム アユム

でもまだ親に頼りたい気持ちもありますよね。

博士 博士

鋭いのう。まさにそこが心理的離乳の特徴じゃ。自立したい気持ちと依存したい気持ちの葛藤があり、それが第二次反抗期として表面化する。

アユム アユム

反抗期って、親にとっては大変ですよね。

博士 博士

うむ。でも心理的離乳は健全な発達のプロセスじゃ。むしろ反抗が全くなく、親の言いなりのままだと大人になっても親から離れられず、いわゆる『マザコン』や『依存的パーソナリティ』になりかねない。

アユム アユム

他の選択肢も見てみましょう。1の自我同一性の獲得は?

博士 博士

エリクソンの発達理論じゃな。青年期の課題で、『自分とは何者か』を確立すること。アイデンティティとも呼ぶ。心理的離乳と密接に関連するが、親離れそのものの概念ではない。

アユム アユム

3の愛着形成は?

博士 博士

ボウルビィのアタッチメント理論じゃ。乳児期、特に生後6〜18か月頃に特定の養育者との情緒的絆を築くこと。時期が全く違う。

アユム アユム

4の探索行動は?

博士 博士

愛着の安全基地から外界へ出ていく乳幼児期の行動じゃ。ハイハイや歩き始めで、周囲に好奇心を持って働きかける。

アユム アユム

5の母子分離は?

博士 博士

これも乳幼児期じゃ。母親と離れる時の分離不安と、その後の離脱過程を指す。

アユム アユム

発達段階で整理すると分かりやすいですね。

博士 博士

そう。乳児期の愛着→幼児期の探索→学童期の勤勉性→思春期の心理的離乳と反抗→青年期の自我同一性、と段階を追って理解するのじゃ。

アユム アユム

看護師としては、思春期の患者さんにどう接するのがいいんでしょうか?

博士 博士

思春期は身体的・心理的変化が激しく、病気の告知や治療方針の説明も難しい時期じゃ。親同席か本人のみか、情報共有の範囲、プライバシーへの配慮など、発達段階に応じた関わりが必要じゃな。

アユム アユム

家族にも心理的離乳について説明できると良いですね。

博士 博士

その通り!反抗を『問題行動』ではなく『発達の一過程』として捉えられるよう、家族支援も看護師の役割じゃ。

POINT

心理的離乳とは、ホリングワースが提唱した概念で、思春期に親や家族への精神的依存から離れ、対等な関係・自立した個人として成長していく過程を指します。身体的離乳(断乳)に対する精神的な親離れであり、自立欲求と依存欲求の葛藤から第二次反抗期として表出します。自我同一性の獲得(エリクソン)は青年期の発達課題で心理的離乳と関連しますが別概念、愛着形成・探索行動・母子分離はいずれも乳幼児期の用語です。看護師は思春期の患者本人への関わりと同時に、心理的離乳を発達の正常な過程として家族に説明し、支援する役割を担います。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:思春期に、親や家族との関係が依存的な関係から対等な関係に変化し、精神的に自立することを示すのはどれか。

解説:正解は 2 の心理的離乳です。心理的離乳(psychological weaning)とは、アメリカの心理学者ホリングワース(Leta Hollingworth)が提唱した概念で、思春期(12歳前後〜青年期)に子どもが親や家族への精神的依存から離れ、自分で判断し行動する自立した個人になろうとする過程を指します。身体的離乳(乳児期の断乳)に対して精神的な親離れを意味します。この時期には自立への欲求と依存したい気持ちの葛藤、親への反抗(第二次反抗期)、友人関係の重視などが特徴的にみられ、自我同一性(アイデンティティ)確立の土台となります。

選択肢考察

  1. × 1.  自我同一性の獲得

    誤り。自我同一性(アイデンティティ)はエリクソンの発達理論で青年期(思春期後期〜青年期)の発達課題とされる概念。『自分とは何者か』を主観的に確立することで、親との関係性の変化そのものを指す用語ではない。ただし心理的離乳と相互に関連する。

  2. 2.  心理的離乳

    正しい。ホリングワースの提唱した概念で、思春期に親への精神的依存を脱して対等な関係・自立へ向かう過程。

  3. × 3.  愛着形成

    誤り。愛着(アタッチメント)はボウルビィが提唱した概念で、乳児期(特に生後6〜18か月頃)に母親など特定の養育者との間に築かれる情緒的絆。思春期の親離れの現象とは別概念。

  4. × 4.  探索行動

    誤り。乳幼児期(概ね1歳前後〜)に見られる、周囲の環境に好奇心を持って働きかける行動。愛着の安全基地から出発する行動として知られる。

  5. × 5.  母子分離

    誤り。乳幼児が母親と離れる際に不安を示す『分離不安』と、その後の身体的・情緒的な母親からの離脱過程を指す。思春期の精神的自立とは発達段階が異なる。

発達課題を発達段階ごとに整理すると理解しやすい。【乳児期】愛着形成(ボウルビィ)、基本的信頼vs不信(エリクソン)。【幼児期】探索行動、自律性vs恥・疑惑。【学童期】勤勉性vs劣等感。【思春期】心理的離乳(ホリングワース)、第二次反抗期、自我同一性確立の開始(エリクソン)。【青年期】自我同一性vs役割拡散の解決。【成人期】親密性、世代性。【老年期】統合vs絶望。心理的離乳に伴う情緒不安定・反抗を家族が理解し、見守る姿勢が重要で、看護師は思春期の患者や家族への心理教育を担う。

発達心理学の基本概念を問う問題。『思春期+親からの精神的自立』=心理的離乳(ホリングワース)の対応関係を押さえる。愛着・探索行動・母子分離は乳幼児期の概念なので紛らわしいが発達段階で区別可能。