11歳女児のネフローゼ症候群──看護師がまず聞くべきこととは
看護師国家試験 第106回 午後 第95問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aちゃん(11歳、女児)。眼瞼浮腫がみられたため、眼科を受診し治療を受けたが改善しなかった。その後、Aちゃんと母親が下腿の浮腫に気付き眼科の医師に相談したところ、特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )を疑われたため、小児科のある病院を紹介され受診した。 看護師が収集すべきAちゃんの情報で優先度が高いのはどれか。
- 1.食欲
- 2.家族歴
- 3.手術歴
- 4.海外渡航歴
- 5.初経の発来の有無
対話形式の解説
博士
今回は11歳のAちゃん、特発性ネフローゼ症候群を疑われて紹介受診した事例じゃ。
サクラ
ネフローゼ症候群って、尿にタンパクが漏れる病気でしたっけ?
博士
その通り。糸球体基底膜の透過性が亢進してタンパク質が大量に尿へ漏れ、血中アルブミンが下がって全身に浮腫が生じる。
サクラ
4つの特徴がありましたよね。
博士
①高度蛋白尿②低アルブミン血症③浮腫④高コレステロール血症──この4徴が診断の基本じゃ。
サクラ
小児だと多いのは微小変化群、でしたっけ。
博士
その通り。小児特発性ネフローゼの9割は微小変化群で、ステロイド感受性で予後は比較的良好。ただし再発しやすい。
サクラ
さて、初回受診で看護師がまず収集すべき情報は食欲でいいんですか?家族歴とか聞きそうですが…。
博士
家族歴も大事じゃが、特発性ネフローゼは遺伝性疾患ではない。緊急性・関連性の両面で食欲が最優先じゃ。
サクラ
なぜ食欲が大事なんですか?
博士
低アルブミン血症で腸管にも浮腫が来ると食欲が落ちる。子どもは成長期じゃから栄養状態を把握せねばならぬ。
サクラ
なるほど、治療食の設定にも関わるんですね。
博士
その通り。減塩食や水分調整、蛋白量の設定に食欲の情報は直結する。さらに今後ステロイド治療が始まると食欲亢進という副作用が出る。この比較ベースラインとしても最初の食欲情報は貴重じゃ。
サクラ
選択肢2の家族歴はダメなんですか?
博士
特発性=原因不明。遺伝性ではないから優先順位は低い。Alport症候群など家族性糸球体疾患を疑う場面では家族歴も重要になるが、いまは違う。
サクラ
選択肢3の手術歴と選択肢4の海外渡航歴は?
博士
ネフローゼ症候群の発症とは直接関連せぬ。渡航歴はマラリアやB型肝炎関連糸球体腎炎などを疑うときには聞くがの。
サクラ
選択肢5の初経の発来は?
博士
11歳は初経のある子もない子もおる時期じゃが、急性期の浮腫管理とは関係がない。思春期の発達評価として退院前には押さえたい情報ではある。
サクラ
小児ネフローゼの看護観察ポイントは何ですか?
博士
毎日の体重、尿量、尿蛋白、血圧、浮腫の程度と部位、食欲、活気、倦怠感じゃ。体重変化は浮腫の増減を直接示す。
サクラ
体重を毎日測って記録するんですね。
博士
そうじゃ。特に入院初期は1日1回同じ条件で測る。排尿量とセットで水分出納バランスも把握する。
サクラ
ステロイド治療中の感染予防も大事ですよね。
博士
その通り。免疫抑制による易感染性、高血糖、骨粗鬆症、満月様顔貌、成長障害、精神症状など副作用は多彩じゃ。
サクラ
予後は比較的良好なんですね。
博士
小児の微小変化群は90%以上がステロイドに反応するが、70~80%が再発する。長期フォローが必要じゃ。
POINT
小児の特発性ネフローゼ症候群では、糸球体からのタンパク漏出による浮腫・低アルブミン血症・高コレステロール血症が主な病態であり、随伴症状として食欲不振・倦怠感・活気低下が高頻度にみられます。看護師が初期評価でまず収集すべきなのは、腸管浮腫や低アルブミン血症で低下しやすい『食欲』であり、栄養状態の把握、減塩食などの治療食計画、今後のステロイド副作用(食欲亢進)比較の基準値として必須の情報です。小児ネフローゼ症候群の多くは微小変化群でステロイド感受性、再発しやすく長期フォローが必要となるため、初回の情報収集は今後の治療全般の基盤となります。家族歴・手術歴・渡航歴などは発症との関連が乏しく、優先度は相対的に低いと判断しましょう。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aちゃん(11歳、女児)。眼瞼浮腫がみられたため、眼科を受診し治療を受けたが改善しなかった。その後、Aちゃんと母親が下腿の浮腫に気付き眼科の医師に相談したところ、特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )を疑われたため、小児科のある病院を紹介され受診した。 看護師が収集すべきAちゃんの情報で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 1 です。ネフローゼ症候群では低アルブミン血症に伴う浮腫・倦怠感・食欲不振といった全身症状が中心となる。特に小児では浮腫が腸管粘膜にも及び、食欲低下・嘔気・腹痛を来しやすい。食欲は栄養状態の把握、治療食(減塩食)の設定、ステロイド副作用(食欲亢進)の評価にも直結するため、最も優先度の高いアセスメント項目である。
選択肢考察
-
○ 1. 食欲
食欲不振はネフローゼ症候群の代表的随伴症状。腸管浮腫や低アルブミン血症による全身倦怠感で生じ、栄養状態・治療食計画・今後のステロイド副作用(食欲亢進)の評価にも繋がるため最優先。
-
× 2. 家族歴
特発性ネフローゼ症候群は原因不明で明らかな遺伝性は示されない。家族性糸球体疾患などを疑う場面では有用だが、初回受診の優先度は低い。
-
× 3. 手術歴
ネフローゼ症候群の発症とは直接関連しない。麻酔歴など治療上必要な場合もあるが、緊急性・優先度は高くない。
-
× 4. 海外渡航歴
感染症や輸入感染症のスクリーニングに関わる情報だが、ネフローゼ症候群の病態評価で最優先にはならない。
-
× 5. 初経の発来の有無
思春期の発達評価として押さえたい情報だが、急性期の浮腫管理や栄養管理とは直接結びつかない。
小児特発性ネフローゼ症候群は3~6歳に多いが、学童期以降でも発症する。病態は糸球体基底膜の透過性亢進によるタンパク漏出で、①高度蛋白尿(3.5g/日以上、小児では40mg/時/m²以上)②低アルブミン血症(3.0g/dL以下)③浮腫④高コレステロール血症が4徴。9割以上がステロイド感受性で、プレドニゾロン2mg/kg/日から開始する。小児では『微小変化群』が多く予後良好だが再発しやすい。看護上は、体重・尿量・尿蛋白・食欲・浮腫の部位と程度を毎日観察するのが基本。
小児ネフローゼ症候群の自覚症状・全身症状のうち『食欲不振』が代表的であることを押さえる問題。初回の情報収集で何を優先するかが問われる。
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