小児ネフローゼの食事療法──制限すべきはどれ?
看護師国家試験 第106回 午後 第96問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aちゃん(11歳、女児)。眼瞼浮腫がみられたため、眼科を受診し治療を受けたが改善しなかった。その後、Aちゃんと母親が下腿の浮腫に気付き眼科の医師に相談したところ、特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )を疑われたため、小児科のある病院を紹介され受診した。 Aちゃんは排尿回数が減少し、全身に浮腫が認められた。血圧は110/68mmHgであった。尿検査を行い、尿蛋白4袷であった。血液検査は、アルブミン1.3g/dL、総コレステロール350mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、Na130mEq/L、K4.5mEq/Lであった。特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )と診断され入院した。 Aちゃんが摂取を制限する必要があるのはどれか。
- 1.ナトリウム
- 2.カリウム
- 3.蛋白質
- 4.水分
- 5.リン
対話形式の解説
博士
Aちゃんの続きじゃ。入院時の検査結果を見てみよう。尿蛋白4+、アルブミン1.3g/dL、総コレステロール350mg/dL、Cre 0.4mg/dL、Na 130、K 4.5。
アユム
アルブミンすごく低いですね。基準値は4.0前後ですよね?
博士
その通り。1.3g/dLは重度の低アルブミン血症じゃ。膠質浸透圧が下がり、血管内から間質へ水が移動して浮腫を起こす。
アユム
コレステロールも高いですね。
博士
低アルブミン血症を補うため肝臓でアルブミン産生が亢進するが、同時にリポ蛋白も増える。これが高脂血症の原因じゃ。
アユム
さて、食事制限の問題ですね。答えはナトリウムで合っていますか?
博士
その通り。浮腫が強い時期は塩分制限が基本じゃ。目安は0~3g/日。
アユム
塩分を制限するとなぜ浮腫が改善するんですか?
博士
ネフローゼ症候群では膠質浸透圧低下で血管内脱水が起こり、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が活性化する。アルドステロンが腎でNa再吸収を促進し、水も一緒に戻るため浮腫がさらに悪化する。塩分を減らせばこの悪循環を断てる。
アユム
選択肢2のカリウム制限はなぜダメなんですか?
博士
K 4.5は正常。さらにステロイド治療を始めると尿中K排泄が増えて低K血症に傾く。むしろ通常量の摂取が必要じゃ。
アユム
選択肢3の蛋白質制限は?
博士
小児ネフローゼは微小変化群が多くステロイド感受性で、腎不全に進む頻度は低い。成長期じゃから年齢相応のタンパク質(1.0~1.5g/kg/日)を確保するのが原則。
アユム
大人では蛋白制限することありますよね?
博士
ふむ、よく勉強しておるな。大人では高蛋白食が糸球体過剰濾過を招くため0.8~1.1g/kg/日に制限する。小児と区別して覚えるのじゃ。
アユム
選択肢4の水分制限は?
博士
血圧110/68で高血圧ではなく、重度の乏尿もない。初期の画一的な水分制限は不要じゃ。高度浮腫・高血圧・乏尿が揃えば水分制限を検討する。
アユム
選択肢5のリン制限は?
博士
Cre 0.4mg/dLは正常で腎機能は保たれておる。リン制限は慢性腎不全が進行した時の話じゃ。
アユム
なぜ膠質浸透圧という言葉が出てくるんでしたっけ?
博士
血管内には主にアルブミンが水を引き寄せる力を出しておる。これが膠質浸透圧じゃ。アルブミンが減れば血管内に水を保持する力が弱まり、水が間質へ漏れる。
アユム
だから浮腫が起きるんですね。
博士
その通り。血管内は意外にも脱水気味になることもあるから、利尿薬の使い方には注意が必要じゃ。
アユム
食事指導のまとめとしては『塩分だけ制限、他は普通に』ですか?
博士
急性期はそのイメージでよい。浮腫が取れれば塩分制限も5g/日程度まで緩和する。
POINT
小児特発性ネフローゼ症候群の食事療法は、急性期で浮腫が強い時期に『塩分(ナトリウム)制限』を基本とします。低アルブミン血症による膠質浸透圧低下とRAA系の活性化が浮腫を悪化させるため、0~3g/日程度の減塩が有効です。一方、カリウムはステロイド治療で低下しやすく通常摂取、蛋白質は成長期のため年齢相応量を確保、水分・リンは原則制限不要です(大人ネフローゼでは蛋白制限がある点と区別)。検査値の意味(低アルブミン・高コレステロール・正常Cre)を読み解き、病期に応じた食事療法を選べるかが臨床・国試両面で重要となります。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aちゃん(11歳、女児)。眼瞼浮腫がみられたため、眼科を受診し治療を受けたが改善しなかった。その後、Aちゃんと母親が下腿の浮腫に気付き眼科の医師に相談したところ、特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )を疑われたため、小児科のある病院を紹介され受診した。 Aちゃんは排尿回数が減少し、全身に浮腫が認められた。血圧は110/68mmHgであった。尿検査を行い、尿蛋白4袷であった。血液検査は、アルブミン1.3g/dL、総コレステロール350mg/dL、クレアチニン0.4mg/dL、Na130mEq/L、K4.5mEq/Lであった。特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )と診断され入院した。 Aちゃんが摂取を制限する必要があるのはどれか。
解説:正解は 1 です。ネフローゼ症候群では低アルブミン血症で血漿膠質浸透圧が下がり水分が間質に移動、かつレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化により腎でのナトリウム・水の再吸収が亢進し浮腫を悪化させる。したがって浮腫が高度な急性期では塩分(ナトリウム)制限(小児では0~3g/日程度)が必要。浮腫改善後は制限を緩める。
選択肢考察
-
○ 1. ナトリウム
浮腫が強い急性期はナトリウム貯留が浮腫を悪化させるため塩分制限が必要。目安は0~3g/日程度。浮腫改善とともに緩和する。
-
× 2. カリウム
K 4.5mEq/Lは正常。さらにステロイド治療開始後は低K血症に傾きやすいため、むしろ通常量の摂取が必要。制限は不適切。
-
× 3. 蛋白質
小児ではステロイド感受性で腎不全移行が稀なため、蛋白制限は不要。成長期のため年齢相応のタンパク摂取が推奨される。
-
× 4. 水分
血圧は正常で重度の乏尿や高血圧はない。初期の画一的な水分制限は不要で、通常は塩分制限のみで対応する。
-
× 5. リン
Cre 0.4mg/dLは正常で腎機能は保たれている。リン制限は腎不全進行時に検討する事項であり、現段階では不要。
小児ネフローゼ症候群の食事療法の基本は『塩分制限+十分なエネルギーとタンパク摂取』。浮腫著明時は塩分0~3g/日、浮腫が取れれば5g/日程度に緩和。水分は原則自由(重度浮腫・高血圧・乏尿時のみ前日尿量+不感蒸泄に制限)。カリウムはステロイド治療で低下しやすいため通常摂取。蛋白質は成長に必要な量(1.0~1.5g/kg/日)を確保。大人ネフローゼでは高蛋白食が糸球体過剰濾過を招くため0.8~1.1g/kg/日に制限することが多く、小児と区別して覚える。
小児ネフローゼ症候群の食事療法で『何を制限し、何を制限しないか』を問う問題。塩分制限が基本、他は安易に制限しないことがポイント。
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