StudyNurse

乳幼児の点滴自己抜去予防と気そらし法

看護師国家試験 第108回 午前 第102問 / 小児看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

108回 午前 第102問

次の文を読み問いに答えよ。 Aちゃん1歳6か月、男児は、5日前から発熱し、自宅近くのかかりつけ医に通院していたが解熱せず、昨日から眼球結膜の充血、口唇の発赤と亀裂が出現したため入院した。診察では、体幹の発疹と手足の浮腫もあり、川崎病(Kawasaki disease)および脱水症(dehydration)と診断された。Aちゃんに対し、点滴静脈内注射による脱水症の治療が開始され、左手掌から前腕までシーネで固定された。Aちゃんは機嫌が悪く、両手をバタバタと上下に動かしながら泣いている。左手背の留置針刺入部には、腫脹や発赤はない。 Aちゃんに対する看護師の対応で最も適切なのはどれか。

  1. 1.四肢の抑制を行う。
  2. 2.気をそらすよう工夫する。
  3. 3.点滴静脈内注射のラインを短くする。
  4. 4.点滴静脈内注射の必要性を説明する。

対話形式の解説

博士 博士

さて今日は1歳6か月の川崎病の男の子、Aちゃんじゃ。脱水で点滴が始まって、シーネ固定されておるが機嫌が悪くて泣いておる。

アユム アユム

1歳6か月ってどんな発達段階ですか?

博士 博士

エリクソンでいうと自律性対恥・疑惑の時期じゃな。言葉は単語〜二語文程度、抽象的な説明はまだ理解できん。一方で好奇心は旺盛で、興味のあるものに注意を向ける力は育っておる。

アユム アユム

そうすると4の『必要性を説明する』は無理そうですね。

博士 博士

そのとおり。では正解はどれじゃ?

アユム アユム

2の『気をそらすよう工夫する』ですか?

博士 博士

正解じゃ。ディストラクションといって、遊びや音の出るおもちゃ、絵本などで注意を点滴から離す方法じゃ。乳幼児の苦痛緩和の基本技術じゃよ。

アユム アユム

1の四肢抑制はダメなんですか?動きを止めれば抜去は防げそうですが。

博士 博士

身体抑制は切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たし、他に方法がない場合の最終手段じゃ。発達段階にある小児に安易に行うと、恐怖心を植え付けるだけでなく、心理・発達面に悪影響が残る可能性がある。

アユム アユム

3のラインを短くするのは?引っかからないように思えますが。

博士 博士

逆なんじゃ。短いとちょっとした体動で引っ張られ、自己抜去や刺入部の損傷につながる。ルートは体動に追従できる十分な長さを確保し、児の視界に入らないよう工夫するのが原則じゃ。

アユム アユム

刺入部を見えなくするのも大事なんですね。

博士 博士

そうじゃ。包帯やガーゼで覆い、シーネの上から保護すると手でいじりにくくなる。あわせて家族に協力してもらい、抱っこや歌、好きなおもちゃで気をそらすのが効果的じゃよ。

アユム アユム

川崎病で点滴が長期間必要だと大変そうです。

博士 博士

γ-グロブリン大量療法やアスピリンなど、治療継続が予後を左右するからこそ、ルート確保の維持は重要な看護課題じゃ。

アユム アユム

抑制をいきなり使わず、環境調整と遊びで乗り切る、と覚えます。

博士 博士

そのとおり。『児の発達を守りながら治療を続ける』という視点が小児看護の核心じゃな。

POINT

本問は1歳6か月の川崎病児に対する点滴管理の看護を問う問題です。この年齢では説明による理解は困難で、四肢抑制は心理・発達面への悪影響が大きいため第一選択にはなりません。ラインを短くするとかえって自己抜去のリスクが上がります。ディストラクションによって児の注意を点滴から離すことが発達段階に即した最も適切な援助で、小児看護の基本技術として押さえるべき内容です。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aちゃん1歳6か月、男児は、5日前から発熱し、自宅近くのかかりつけ医に通院していたが解熱せず、昨日から眼球結膜の充血、口唇の発赤と亀裂が出現したため入院した。診察では、体幹の発疹と手足の浮腫もあり、川崎病(Kawasaki disease)および脱水症(dehydration)と診断された。Aちゃんに対し、点滴静脈内注射による脱水症の治療が開始され、左手掌から前腕までシーネで固定された。Aちゃんは機嫌が悪く、両手をバタバタと上下に動かしながら泣いている。左手背の留置針刺入部には、腫脹や発赤はない。 Aちゃんに対する看護師の対応で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 2 です。1歳6か月という年齢は、エリクソンの発達段階では自律性対恥・疑惑の時期にあたり、言葉による説明の理解はまだ限られています。この時期の児は遊びや興味のあるものへの集中により、不快や恐怖から一時的に気をそらすことが可能です(ディストラクション:気そらし法)。点滴を自己抜去させずに治療を継続するためには、四肢抑制のような身体拘束ではなく、遊びを通じて児の注意を点滴から離すことが発達段階に即した最も適切な援助になります。

選択肢考察

  1. × 1.  四肢の抑制を行う。

    身体抑制は児の身体面・心理面・発達面に悪影響を及ぼし、恐怖心からさらに体動が増える恐れがあるため、最終手段であり第一選択ではありません。

  2. 2.  気をそらすよう工夫する。

    遊びや音の出るおもちゃなどで注意をそらすディストラクションは、乳幼児の苦痛・不安への最も基本的で効果的な看護援助です。

  3. × 3.  点滴静脈内注射のラインを短くする。

    ラインが短いと体動時に引っ張られて自己抜去のリスクがかえって高まります。ゆとりをもたせて体動に追従できる長さが適切です。

  4. × 4.  点滴静脈内注射の必要性を説明する。

    1歳6か月では言語による抽象的な説明の理解は困難であり、必要性を伝えても行動変容にはつながりません。

小児の点滴管理の基本は、(1)シーネで刺入部の関節を固定、(2)ルートは体動に追従できる長さを確保、(3)刺入部を児の視界から外す(包帯で覆うなど)、(4)遊び(プレパレーション・ディストラクション)で注意をそらす、です。身体抑制は児童福祉の観点からも倫理的に慎重な検討が必要で、切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす場合のみ最小限で行います。

乳幼児の点滴管理における発達段階に応じた看護援助を問う問題で、抑制を避けディストラクションを第一選択とする視点が鍵です。