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双極性障害の躁状態をアセスメントする

看護師国家試験 第105回 午後 第107問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

105回 午後 第107問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(23歳、女性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。専門学校卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は続けていた。Aさんは2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは給料の全額を宝くじの購入に費やしてしまう行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。 Aさんは、診察室では多弁であった。また、ささいなことで怒り出し、自分は病気ではないと治療を受けることを拒否した。意識は清明で見当識障害はみられなかった。Aさんは双極性障害(bipolar disorder)と診断され医療保護入院をすることになった。 入院時のAさんのアセスメントで正しいのはどれか。

  1. 1.躁状態
  2. 2.緘黙状態
  3. 3.錯乱状態
  4. 4.せん妄状態

対話形式の解説

博士 博士

博士じゃ。23歳のAさんは4か月前にうつ症状が始まり、2か月前から不眠、先月から給料全額を宝くじに使うようになった。入院時は多弁、易怒性、病識欠如、意識清明。アセスメントを問う問題じゃ。

サクラ サクラ

うつ症状が先行して、その後に対極の症状が出てきたんですね。これは双極性障害の典型的な経過ですか?

博士 博士

うむ、典型じゃの。双極性障害はI型とII型に分かれ、I型は躁病エピソード、II型は軽躁病エピソードが主体となる。Aさんは給料全額を宝くじに使うという社会機能を大きく損なう行動があるから、I型躁状態と考えられるの。

サクラ サクラ

躁状態の中核症状を整理したいです。

博士 博士

気分高揚または易怒性、自尊心肥大、睡眠欲求減少、多弁、観念奔逸、注意散漫、目標指向的活動増加、浪費や性的逸脱など快楽追求の増加、じゃ。DSM-5ではこれらが1週間以上続けば躁病エピソードと診断される。

サクラ サクラ

Aさんは多弁、易怒性、散財、不眠が揃っていますね。病識欠如もあります。

博士 博士

そうじゃ。躁状態では「自分は絶好調で病気ではない」と感じることが多く、病識欠如が治療拒否につながる。だから医療保護入院が必要となるのじゃ。

サクラ サクラ

選択肢を見ます。1の躁状態が正解ですね。

博士 博士

うむ。2の緘黙はどうじゃ?

サクラ サクラ

発話器官に問題がないのに話さない状態ですよね。Aさんは多弁ですから真逆です。

博士 博士

その通り。緘黙は統合失調症の緊張型や解離性障害でみられる。

サクラ サクラ

3の錯乱状態は?

博士 博士

錯乱は意識混濁に幻覚や精神運動興奮を伴う意識障害の総称。Aさんは意識清明で見当識も保たれておるから該当せん。躁状態の激しい興奮と混同しやすいが、意識レベルで区別するのじゃ。

サクラ サクラ

4のせん妄は?

博士 博士

せん妄は急性発症の軽度意識障害で、注意障害、認知機能の動揺、昼夜逆転、幻視などが特徴。身体疾患や薬剤、入院環境変化などが誘因となる。Aさんは意識清明じゃから違う。

サクラ サクラ

双極性障害の治療は?

博士 博士

躁病相ではリチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンといった気分安定薬、オランザピンやアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬を使う。リチウムは血中濃度モニタリングと副作用(手指振戦、多尿、甲状腺機能低下)に注意じゃ。

サクラ サクラ

うつ病相ではどうですか?

博士 博士

抗うつ薬単剤は躁転リスクがあるため慎重に用い、クエチアピンやルラシドン、ラモトリギンなどが選択される。気分安定薬をベースに使い続けることが再発予防の鍵じゃ。

サクラ サクラ

入院形態の整理もしておきたいです。

博士 博士

任意入院が原則。医療保護入院は精神保健指定医の診察と保護者(家族等)の同意、措置入院は自傷他害のおそれで知事命令。Aさんは治療拒否しておるから医療保護入院じゃ。

サクラ サクラ

看護のポイントは何でしょうか。

博士 博士

刺激を減らし、睡眠と栄養を確保、易怒性を煽らぬ対応、自傷他害予防、服薬の確実な管理、病識形成への段階的支援じゃの。躁状態では本人の消耗が激しいから、落ち着いた環境整備が第一歩じゃ。

POINT

双極性障害のAさんはうつ病相に続き、多弁・易怒性・散財・不眠・病識欠如など躁状態の典型像を呈しています。意識清明で見当識障害がないため、錯乱やせん妄ではなく躁状態と判断します。医療保護入院下での刺激調整、気分安定薬による薬物療法、病識形成への段階的支援が看護の要点となります。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(23歳、女性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。専門学校卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は続けていた。Aさんは2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは給料の全額を宝くじの購入に費やしてしまう行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。 Aさんは、診察室では多弁であった。また、ささいなことで怒り出し、自分は病気ではないと治療を受けることを拒否した。意識は清明で見当識障害はみられなかった。Aさんは双極性障害(bipolar disorder)と診断され医療保護入院をすることになった。 入院時のAさんのアセスメントで正しいのはどれか。

解説:正解は 1 です。Aさんはもともとあった抑うつエピソードから転じ、多弁、易怒性、観念奔逸的衝動買い(給料全額を宝くじに投入)、病識欠如、睡眠欲求低下という典型的な躁状態を呈しています。双極性障害はうつ病相と躁病相を繰り返す気分障害で、入院時のAさんの状態は躁状態と判断でき、医療保護入院適応となる自傷他害や生活破綻リスクもこれに起因しています。

選択肢考察

  1. 1.  躁状態

    気分高揚、多弁、易怒性、宝くじへの衝動的散財、病識欠如、睡眠欲求減少は躁状態の中核症状です。双極性障害の躁病相の診断基準(DSM-5)を満たします。

  2. × 2.  緘黙状態

    緘黙は発話器官に障害がないのに話さない状態で、統合失調症緊張型や解離性障害などでみられます。Aさんは多弁であり該当しません。

  3. × 3.  錯乱状態

    錯乱状態は意識混濁に幻覚・精神運動興奮を伴う意識障害の総称ですが、Aさんは意識清明で見当識障害もなく該当しません。

  4. × 4.  せん妄状態

    せん妄は急性に生じる軽度意識障害で、注意障害、認知機能変動、幻覚などを伴います。Aさんは意識清明・見当識保たれておりせん妄の基準を満たしません。

双極性障害はI型(躁病エピソード+うつ病エピソード)とII型(軽躁病エピソード+うつ病エピソード)に分類されます。躁病相ではリチウム、バルプロ酸、オランザピンなどの気分安定薬・非定型抗精神病薬が使用され、うつ病相では抗うつ薬単剤は躁転リスクがあるため慎重に用います。病識欠如が強く治療拒否する場合は医療保護入院(精神保健福祉法33条、保護者同意)となり、自傷他害が切迫する場合は措置入院(29条)が検討されます。

双極性障害の躁状態の臨床像(気分高揚・多弁・易怒性・衝動的行動・病識欠如)を識別し、他の意識障害用語と鑑別できるかを問う設問です。