躁状態回復期の焦燥、看護師の対応は?
看護師国家試験 第105回 午後 第108問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(23歳、女性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。専門学校卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は続けていた。Aさんは2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは給料の全額を宝くじの購入に費やしてしまう行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。 入院後2週が経過した。Aさんの携帯電話は母親が持ち帰っているため、Aさんは職場のことが気になると言って、毎日、病棟内の公衆電話から頻繁に会社の上司に電話をしている。看護師が面接をしたところ、今後への強い焦りの訴えが聞かれた。 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 1.休養の必要性をAさんと再確認する。
- 2.仕事のことは考えないように伝える。
- 3.Aさんの上司にAさんの病状と行動との関連を説明する。
- 4.Aさんのテレホンカードをナースステーションで管理する。
対話形式の解説
博士
博士じゃ。入院2週のAさんは、携帯電話は母親が持ち帰り、病棟の公衆電話から毎日会社の上司に電話しておる。面接では強い焦りを訴える。どう関わるかが問われるぞ。
アユム
躁状態は少し落ち着いて、回復過程に入っているんですよね。でも焦燥感が残っているのは心配です。
博士
その通り。躁病相からうつ病相、あるいは混合状態へ移る過程では焦りや不安が出やすい。過剰に動いていた反動で心身はかなり消耗しておるのじゃ。
アユム
選択肢1の「休養の必要性をAさんと再確認する」が正解のようですが、具体的にどう伝えるんでしょうか。
博士
まず焦りを受け止め、「仕事が心配なのですね」と共感する。その上で、退院後に安定して働き続けるためには今しっかり休むことが必要だと、本人の目標と結びつけて説明するのじゃ。
アユム
ただ「休んでください」と言うだけじゃダメなんですね。
博士
そうじゃ。治療同盟は「あなたの目標のためにこの治療があります」と本人と看護師が同じ方向を見るところから生まれる。一方的な指示ではない。
アユム
選択肢2の「仕事のことは考えないように伝える」はどうですか?
博士
不適切じゃ。人は「考えるな」と言われるほど考えてしまう。本人が最も気にしていることを否定するのは、感情を封じて信頼を損なうだけじゃ。
アユム
3の「上司にAさんの病状と行動との関連を説明する」は守秘義務違反ですよね。
博士
その通り。看護師が患者の病状を本人の同意なく外部に伝えるのは守秘義務違反に当たる。職場への説明はAさん本人や家族が行うべきで、必要なら主治医が診断書を書くのじゃ。
アユム
4の「テレホンカードをナースステーションで管理する」は、確かに簡単な解決に見えますが…
博士
安易じゃの。精神保健福祉法36条・37条は入院患者の信書・通信の自由を原則保障しておる。理由なく通信制限すれば権利侵害にあたり、まずは本人との話し合いで調整するのが筋じゃ。
アユム
それに物理的に制限しても焦りは解決しませんね。
博士
むしろ悪化する。電話できないことで「職場から見捨てられる」という不安が増大する。大事なのは行動ではなく、その背後にある不安への対応じゃ。
アユム
職場復帰に向けての支援は具体的にどうなりますか?
博士
リワークプログラム、産業医面談、傷病手当金、復職判定、短時間勤務からの段階的復帰などの選択肢がある。早い段階で社会資源を紹介すると、本人の見通しが立ち焦りが和らぐこともあるの。
アユム
なるほど、情報提供も焦り対処のひとつになるんですね。
博士
うむ。ただし提供のタイミングが重要じゃ。まずは傾聴、次に休養の意義の共有、そして段階を踏んで情報提供、という順が自然じゃの。
アユム
躁状態回復期は再発予防教育の好機でもあると聞きました。
博士
そうじゃ。本人が症状の振り返りをできるようになる時期で、自己モニタリング、ストレス対処、服薬継続の意義を学ぶ心理教育を導入する絶好のタイミングじゃ。
POINT
躁状態の回復期にあるAさんの焦燥に対しては、感情の否定や通信制限ではなく、休養の必要性を本人と共有する治療同盟の強化が最優先です。守秘義務を守りつつ、職場復帰へのリワークや産業医連携など社会資源の情報提供を段階的に行い、再発予防教育へとつなげるのが精神看護の基本姿勢です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(23歳、女性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。専門学校卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は続けていた。Aさんは2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは給料の全額を宝くじの購入に費やしてしまう行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。 入院後2週が経過した。Aさんの携帯電話は母親が持ち帰っているため、Aさんは職場のことが気になると言って、毎日、病棟内の公衆電話から頻繁に会社の上司に電話をしている。看護師が面接をしたところ、今後への強い焦りの訴えが聞かれた。 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。双極性障害の躁状態ではエネルギーの過剰消費が続き心身の消耗が著しいため、休養の確保が治療の基盤となります。Aさんは強い焦りを訴え頻回に職場へ電話している状態で、背景には「仕事を失うかもしれない」という不安があります。看護師はその気持ちを傾聴した上で、治療のためには心身を休める時間が必要であることをAさんと一緒に再確認し、治療同盟を強化することが最も適切な対応です。
選択肢考察
-
○ 1. 休養の必要性をAさんと再確認する。
躁状態からの回復期には消耗した心身を休ませることが最重要で、Aさんの焦りを受け止めた上で休養の意義を一緒に確認することで、治療意欲と安心感の両方を支えられます。
-
× 2. 仕事のことは考えないように伝える。
本人が最も気にしていることを「考えるな」と否定する対応は、感情を押さえつけ不信感を生みます。不安を受け止め共に対処策を考える姿勢が必要です。
-
× 3. Aさんの上司にAさんの病状と行動との関連を説明する。
患者情報の外部への開示は本人の同意が原則で、看護師が守秘義務に反して上司に説明するのは不適切です。職場への連絡はAさん自身や家族が行うべきです。
-
× 4. Aさんのテレホンカードをナースステーションで管理する。
理由を説明せずに通信手段を制限することは、信書・通信の自由の観点からも問題があり、焦りや不信感を増大させます。まずは傾聴と治療目標の共有が優先です。
精神科入院患者の通信・面会の自由は精神保健福祉法で原則保障され、制限には医師の指示と本人への説明が必要です(精神保健福祉法36条、37条)。躁状態の回復期に多い焦燥感や不安は、病状の改善過程で現れる正常な反応でもあり、丁寧な傾聴・振り返りを通して再発予防のための自己理解を深める機会となります。職場復帰にはリワークプログラムや産業医連携、傷病手当金、復職判定面談など社会資源を組み合わせ、段階的に調整するのが望ましいとされます。
躁状態からの回復期にある患者の焦燥に対し、感情を否定したり行動制限を先行させるのではなく、傾聴と休養の必要性の共有という治療同盟形成を優先できるかを問う設問です。
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