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摂食障害の認知の歪みにどう関わる?痩せたい気持ちを受けとめる看護

看護師国家試験 第106回 午前 第113問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

106回 午前 第113問

Aさん(23歳、女性)は、大学を卒業後、インテリア会社に事務職として就職した。入社後に「ユニフォームが似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にやせが目立つようになった。母親がAさんに食事を作っても「太るのが怖い」と言って食べず、体重は2週間で5kg減少した。心配した母親とともに精神科外来を受診し、摂食障害( eating disorder )と診断され、開放病棟へ入院した。入院時、身長160cm、体重37kgであった。 入院後2週が経過した。Aさんは食事の時間に食べ物を細かく刻み、1時間以上時間をかけるが、摂取量はスプーン1杯ほどである。ベッド上でストレッチを2時間行っている。Aさんと話し合ったところ「私はこの病棟で一番太っているから少しでも痩せなきゃ」と話した。 看護師の関わりとして適切なのはどれか。

  1. 1.体重測定の回数を増やす。
  2. 2.鏡でAさんの全身を映して見せる。
  3. 3.痩せたいという気持ちについて話し合う。
  4. 4.Aさんは看護師よりも痩せていると伝える。

対話形式の解説

博士 博士

摂食障害のAさん、入院2週目でも「病棟で一番太っている」と言っておる。これはボディイメージ障害の典型例じゃな。

サクラ サクラ

BMI14.5なのに太っていると感じるなんて、認知がずれているんですね。

博士 博士

そう、これを「ボディイメージ障害」と呼ぶのじゃ。DSM-5でも神経性やせ症の診断基準に含まれておる。

サクラ サクラ

鏡で見せたら「痩せすぎだ」って気づかないんですか?

博士 博士

残念ながら気づかない。ボディイメージの歪みは視覚情報では修正されないのじゃ。むしろ鏡を見て「やっぱり太い」と確認して症状が悪化することもある。

サクラ サクラ

じゃあ、事実を伝えるのも逆効果ってことですか?

博士 博士

その通り。「看護師より痩せている」と比較しても、本人の認知には届かない。比較されること自体が不快になるのじゃ。

サクラ サクラ

体重測定を増やすのは?客観的な数字を見てもらえば…。

博士 博士

これも逆効果じゃ。体重に強くとらわれている患者に測定回数を増やすと、強迫的な体重確認行動を助長してしまう。治療上は体重を本人に見せるかどうかも慎重に判断するのじゃ。

サクラ サクラ

じゃあ、正解は「痩せたい気持ちについて話し合う」ですね。でも、話し合って効果あるんですか?

博士 博士

これは効果があるだけでなく、すべての治療の土台になるのじゃ。痩せたい気持ちの背景には、自己評価の低さ、完璧主義、対人関係の不安、家族関係の葛藤などが隠れていることが多い。

サクラ サクラ

つまり、表面の「痩せたい」だけじゃなくて、その奥にある気持ちを一緒に探るんですね。

博士 博士

うむ。看護師との信頼関係(治療同盟)ができて初めて、認知行動療法や家族療法が効果を発揮するのじゃ。

サクラ サクラ

摂食障害の心理療法って、具体的にはどんなものがあるんですか?

博士 博士

代表的なのは認知行動療法の拡張版CBT-E、そして思春期例では家族を巻き込むFBT(家族基盤型治療)が第一選択じゃ。

サクラ サクラ

看護師は心理療法はできないけど、その前提となる関係づくりを担うんですね。

博士 博士

その通り。日々の食事場面、ストレッチしている場面、会話の一つ一つが治療の入り口になる。否定も肯定もせず、気持ちを受けとめる姿勢が大切なのじゃ。

サクラ サクラ

「太りたくない」と言っているのに無理に食べさせるのではなく、まず気持ちを聴くということですね。

POINT

神経性やせ症の患者は重度のやせがあっても「太っている」と感じるボディイメージ障害を呈し、客観的事実の提示や身体像の直視だけでは認知の歪みは修正されません。本問の正解は「痩せたい気持ちについて話し合う」であり、体重測定の強化、鏡での対面、他者との比較はいずれも症状悪化や治療関係の破綻を招く恐れがあります。摂食障害ケアの基本は、受容的・共感的に気持ちを傾聴し治療同盟を築くことで、これが認知行動療法や家族療法といった専門的心理療法を効果的に進める土台となります。看護師は食事場面や日常会話を通じて、食行動の背後にある自己評価や対人関係の課題に目を向ける役割を担います。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:Aさん(23歳、女性)は、大学を卒業後、インテリア会社に事務職として就職した。入社後に「ユニフォームが似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にやせが目立つようになった。母親がAさんに食事を作っても「太るのが怖い」と言って食べず、体重は2週間で5kg減少した。心配した母親とともに精神科外来を受診し、摂食障害( eating disorder )と診断され、開放病棟へ入院した。入院時、身長160cm、体重37kgであった。 入院後2週が経過した。Aさんは食事の時間に食べ物を細かく刻み、1時間以上時間をかけるが、摂取量はスプーン1杯ほどである。ベッド上でストレッチを2時間行っている。Aさんと話し合ったところ「私はこの病棟で一番太っているから少しでも痩せなきゃ」と話した。 看護師の関わりとして適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。Aさんは重度のるい痩でありながら「自分は病棟で一番太っている」と訴えており、これは典型的なボディイメージ障害である。認知の歪みを直接修正しようとしても効果は乏しく、むしろ本人の「痩せたい」という気持ちの背景にある不安や自己評価の低さ、対人関係、家族との関係などを共に言語化し、治療同盟を築くことが第一歩となる。強制や説得ではなく受容的・共感的に関わることが、認知行動療法や家族療法など次の段階の治療へつなぐ基盤になる。

選択肢考察

  1. × 1.  体重測定の回数を増やす。

    体重への過度なとらわれが病態の中心であり、測定回数を増やすことは強迫的な体重確認を助長する。体重測定は決められた頻度で行い、本人に数値を見せるかどうかも治療計画に沿って判断する。

  2. × 2.  鏡でAさんの全身を映して見せる。

    ボディイメージ障害がある患者に現実の姿を直視させても、認知の歪みによって「やはり太っている」と受け取られる可能性が高く、むしろ自己嫌悪や症状悪化を招く恐れがある。

  3. 3.  痩せたいという気持ちについて話し合う。

    痩せたいという気持ちの背後にある不安、自己評価、対人関係、家族との関係などを傾聴し共有することで、信頼関係が築かれ治療への動機づけが得られる。摂食障害ケアの基本は受容的・共感的な対話である。

  4. × 4.  Aさんは看護師よりも痩せていると伝える。

    他者との比較はボディイメージの認知に影響を与えず、むしろ「比較される対象」としての不快感を生む。事実を伝えて説得するアプローチは認知の歪みには効果が薄い。

神経性やせ症の心理療法では、認知行動療法(CBT-E)や家族療法(FBT:Family-Based Treatment、特に思春期例)が第一選択となる。看護師は日常のケアを通じて、否定せず受容的に気持ちを聴く姿勢を貫き、治療同盟を築くことが大切。食事場面では、刻む・時間をかける・隠すといった行動を記録しつつ、食行動だけでなく感情面にも目を向ける。

摂食障害患者のボディイメージ障害に対する看護の基本姿勢(受容・傾聴・対話)を問う問題。