強迫性障害に有効な心理療法
看護師国家試験 第107回 午後 第109問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 23歳、女性 )。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害( obsessive-compulsive disorder )と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院1か月後、手洗い行為は軽減してきた。Aさんはカーテンを閉め切って1人で過ごしていることが多いが、担当看護師や主治医とは治療についての話ができるようになってきた。Aさんは「薬を飲む以外にできることはありますか」と聞いてきた。 このときのAさんに最も有効と考えられるのはどれか。
- 1.催眠療法
- 2.作業療法
- 3.認知行動療法
- 4.就労移行支援
対話形式の解説
博士
博士じゃ。Aさんが「薬以外に何かできることは」と自ら尋ねてきたのう。
サクラ
回復意欲が芽生えている大事な場面ですね。
博士
そうじゃ。強迫性障害の治療は薬と心理療法の両輪で進めるのが王道じゃ。
サクラ
心理療法ではどんな方法があるのですか。
博士
答えは認知行動療法じゃ。中でも曝露反応妨害法が最も効果が高いとされておる。
サクラ
曝露反応妨害法とは具体的にどんな技法ですか。
博士
不安を感じる刺激にあえて触れながら、強迫行為を我慢する段階的訓練じゃ。
サクラ
我慢することで不安は自然に下がっていくのでしょうか。
博士
そうじゃ。繰り返すうちに馴化が起こり「強迫行為をしなくても大丈夫だ」と学習するのじゃ。
サクラ
催眠療法はどうでしょうか。
博士
強迫性障害に対する標準治療としてのエビデンスは確立しておらぬぞ。
サクラ
作業療法はどうですか。
博士
意欲や生活機能を支える点では有用じゃが、強迫症状そのものを狙う特異的治療ではないのじゃ。
サクラ
就労移行支援はいかがですか。
博士
治療がもっと安定してから考える段階じゃ。今は早いぞ。
サクラ
治療意欲が出てきた今こそ認知行動療法の導入適期なのですね。
POINT
強迫性障害に最もエビデンスがある心理療法は認知行動療法で、曝露反応妨害法が中核技法です。症状が軽減し、治療者との信頼関係ができて本人の治療意欲が高まった段階が導入の好機です。SSRIなどの薬物療法と併用することで相乗効果が期待でき、再発予防にもつながります。催眠療法や作業療法、就労移行支援はいずれも段階やエビデンスが異なり、本問のAさんの状況には合いません。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん( 23歳、女性 )。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害( obsessive-compulsive disorder )と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院1か月後、手洗い行為は軽減してきた。Aさんはカーテンを閉め切って1人で過ごしていることが多いが、担当看護師や主治医とは治療についての話ができるようになってきた。Aさんは「薬を飲む以外にできることはありますか」と聞いてきた。 このときのAさんに最も有効と考えられるのはどれか。
解説:正解は3の認知行動療法です。強迫性障害は薬物療法(主にSSRI)と認知行動療法、特に曝露反応妨害法(ERP)の併用が最も有効とされます。Aさんは症状が軽減し、治療者との対話が可能になり、自ら「薬以外の取り組み」を求めているため、能動的に不安に向き合う心理療法を導入するのに適した時期です。曝露反応妨害法では手洗いをせずに我慢する段階的訓練を通じて強迫観念と不安の結びつきを弱めていきます。
選択肢考察
-
× 1. 催眠療法
催眠療法は一部の身体表現性障害などで用いられることがありますが、強迫性障害に対する標準治療としてのエビデンスは確立していません。
-
× 2. 作業療法
作業療法は生活機能や意欲の回復を目的とする支援で、精神疾患一般に有用ですが、強迫性障害の症状そのものを改善する特異的治療ではありません。
-
○ 3. 認知行動療法
強迫性障害に対してエビデンスレベルが最も高い心理療法です。曝露反応妨害法を中核に、不安に向き合い強迫行為をしない体験を積み重ねて症状を軽減します。
-
× 4. 就労移行支援
就労移行支援は症状が安定し社会参加を目指す段階の支援です。現時点のAさんはまだ治療継続中で、導入のタイミングとしては早過ぎます。
曝露反応妨害法(ERP)は、あえて不安を感じる状況(汚染物に触れるなど)にさらされながら、それに続く強迫行為(手洗い)を我慢する練習を段階的に行う技法です。慣れ(馴化)が生じると不安は徐々に軽くなり、強迫行為をしなくても大丈夫だと学習します。SSRI併用で相乗的な効果が得られます。
強迫性障害の非薬物療法としては認知行動療法、特に曝露反応妨害法が最もエビデンスの高い治療です。症状軽減期に導入するのが効果的です。
「状況設定問題」の関連記事
-
処方薬がいつしか「快感の道具」に…乱用と急性中毒はどう違う?
処方薬を陶酔目的で逸脱使用し社会生活に支障が出ている状態を、急性中毒・拘禁反応・乱用・フラッシュバックのどれ…
114回
-
入院でぴたりと薬を止めたら…48〜72時間に襲う離脱症候群の正体
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の長期大量服用者が急に断薬された際、48〜72時間に出現しやすい症状を問う問題。離脱症…
114回
-
ひとりで抱え込まないために—依存症回復を支えるセルフヘルプグループ
物質使用障害の回復期にある若年女性に勧める社会資源を問う問題。「1人暮らし+復学」という生活希望に合致し、依存…
114回
-
精神看護のセルフケア6項目で「いま何が一番大事?」を見抜く
Underwoodのセルフケア6領域に基づき、入院急性期の統合失調症患者で最も優先される観察項目を選ぶ。昼夜逆転を伴う…
114回
-
SSRIの飲み始めに襲う「吐き気」の正体—自己中断を防ぐ服薬指導
うつ病急性期の高齢患者と家族へのSSRI服薬指導の要点を問う問題。初期消化器症状の事前説明によって自己中断を防ぐ…
114回