退院後の断酒を支える仲間の力――自助グループという社会資源
看護師国家試験 第109回 午後 第114問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 43 歳、男性、会社員)は、妻( 38 歳)と 2 人暮らし。1 年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症( alcohol dependence syndrome )と診断された。 入院中にAさんは、退院後に再び飲酒してしまうのではないかという不安を看護師に訴えた。 Aさんの断酒を支援するための看護師の提案で適切なのはどれか。
- 1.共同生活援助〈グループホーム〉への入居
- 2.セルフヘルプグループへの参加
- 3.行動援護の利用
- 4.生活訓練の利用
対話形式の解説
博士
Aさんは退院後にまた飲んでしまうのではないかと不安を訴えておる。看護師としてどんな提案が適切か、選択肢を見てみようか。
アユム
共同生活援助、セルフヘルプグループ、行動援護、生活訓練ですね。
博士
選択肢を一つずつ吟味していこう。Aさんの生活状況はどうじゃった?
アユム
妻と2人暮らしで、日常生活は自立していて、復職先もある状況です。
博士
ということは、共同生活援助や生活訓練は対象像が合わんな。行動援護はどういう人が対象じゃ?
アユム
知的障害や精神障害があって一人で行動するのが著しく困難な人ですよね。Aさんには該当しないです。
博士
そうじゃ。だから残るのは2のセルフヘルプグループ、いわゆる自助グループじゃ。代表的なものを知っておるかな。
アユム
えっと、AA(アルコホーリクス・アノニマス)と断酒会でしたっけ。
博士
その通り。AAは無名性を重視する国際的なグループ、断酒会は日本で発展した家族も参加できるグループじゃ。どちらも体験を語り合い、仲間として支え合う場じゃ。
アユム
同じ問題を経験した人同士だからこそ、話せることや響くことがあるんでしょうね。
博士
まさにそこが重要。医療者のアドバイスだけでは届かない部分を仲間の経験談が埋めてくれる。アルコール依存症は再発率の高い慢性疾患だから、長期的な関係性が必要なのじゃ。
アユム
退院後の支援の柱って、他にもあるんですか。
博士
三本柱と覚えておくとよい。一つは専門医療機関への通院、二つ目は抗酒薬や断酒補助薬の服用、三つ目が自助グループ参加じゃ。
アユム
抗酒薬ってジスルフィラム、シアナマイド。断酒補助薬はアカンプロサートですね。飲酒量低減薬のナルメフェンもありましたね。
博士
よく覚えておる。看護師は退院前から自助グループの見学や試し参加を促し、生活リズムのなかにグループ参加を組み込めるよう支援する。
アユム
自助グループって無料で参加できるんですよね。もし再飲酒してしまっても戻ってこられるって聞きました。
博士
その通り。失敗を責めず何度でも受け入れる文化があるからこそ、長く支援の場として機能するのじゃ。
アユム
断酒はひとりで頑張るものじゃなくて、仲間と続けるものなんですね。提案の意義がよく分かりました。
POINT
アルコール依存症は再発率が高い慢性疾患で、退院後の断酒継続には『通院・薬物療法(抗酒薬や断酒補助薬)・自助グループ』の三本柱が基本です。自助グループはAAや断酒会が代表的で、同じ問題を抱える仲間の体験共有と相互支援によって断酒意欲を維持する重要な社会資源となります。Aさんは妻と2人暮らしで日常生活が自立しており、共同生活援助・行動援護・生活訓練は対象像と合致しないため、最も適切な提案はセルフヘルプグループへの参加です。看護師は退院前から自助グループの見学や連絡先の共有を行い、退院後の生活に組み込めるよう具体的に支援する役割を担います。アルコール依存症の支援は医療だけでは完結せず、地域の社会資源と接続する視点が看護師には欠かせません。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 43 歳、男性、会社員)は、妻( 38 歳)と 2 人暮らし。1 年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症( alcohol dependence syndrome )と診断された。 入院中にAさんは、退院後に再び飲酒してしまうのではないかという不安を看護師に訴えた。 Aさんの断酒を支援するための看護師の提案で適切なのはどれか。
解説:正解は 2 のセルフヘルプグループ(自助グループ)への参加です。アルコール依存症は再発率の高い慢性疾患であり、退院後に断酒を継続するためには、医療機関への通院、抗酒薬や断酒補助薬(アカンプロサートなど)の服用、そして同じ問題を抱える仲間との関係性を軸にしたセルフヘルプグループへの参加が三本柱とされています。日本ではAA(アルコホーリクス・アノニマス)や断酒会が代表的で、体験を語り合い、相互に励まし合うことで断酒意欲を維持できます。妻と2人暮らしで生活基盤・日常動作は自立しているAさんにとって、共同生活援助や生活訓練・行動援護は対象像がずれており、最も適切な提案は自助グループ参加です。
選択肢考察
-
× 1. 共同生活援助〈グループホーム〉への入居
障害者総合支援法に基づく共同生活援助は、日常生活の援助を必要とする障害のある人のための居住支援。Aさんは妻と暮らしており、生活基盤は保たれているため該当しない。
-
○ 2. セルフヘルプグループへの参加
AAや断酒会など当事者が運営する自助グループ。体験共有と相互支援が断酒継続の重要な支えとなり、アルコール依存症治療の中核的提案とされる。
-
× 3. 行動援護の利用
知的障害・精神障害のため行動に著しい困難があり常時介護を要する人への外出時介護支援。Aさんの状態には該当しない。
-
× 4. 生活訓練の利用
自立した日常生活を送るための機能訓練・生活能力向上を目的とする障害福祉サービス。Aさんは日常生活動作が自立しており、優先度は低い。
アルコール依存症の退院後支援の柱は『通院・薬物療法・自助グループ』。抗酒薬としてジスルフィラム、シアナマイド、断酒補助薬としてアカンプロサート、飲酒量低減薬としてナルメフェンがある。自助グループは無料・匿名で参加でき、再飲酒時も自責なく戻ってこられる場として機能する。看護師は退院前から見学・参加を促し、退院後の生活にグループ参加を組み込めるよう支援する。
アルコール依存症患者が退院後に断酒を継続するための代表的な社会資源(自助グループ)を問う設問。他の障害福祉サービスとの対象像の違いを理解しているかがポイント。
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