忘れないための工夫をどう伝えるか
看護師国家試験 第110回 午前 第114問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害<ADHD>( attention-deficit/hyperactivity disorder )と診断された。 Aさんは予約した受診日を忘れてしまい、受診できないことが度々あった。Aさんは、これまで忘れないための工夫を何もしてこなかったと外来看護師に話した。 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 1.「ご家族に予定を管理してもらいましょう」
- 2.「忘れてしまった理由を考えてみましょう」
- 3.「予定を忘れたことで生じる不利益を整理してみましょう」
- 4.「今予約した次回の受診日をこの場で予定表に書き込みましょう」
対話形式の解説
博士
Aさんは受診日を忘れて来られないことが続いておる。さて何を提案するかのう。
アユム
ADHDの不注意症状に対する対応ですね。
博士
鍵は『外在化』と『即時行動化』じゃ。
アユム
外在化とは、記憶を紙やスマホなど外のツールに預けることですか。
博士
そうじゃ。頭の中に留めようとしても忘れてしまうから、書く・鳴らす・貼るなどの工夫を使うんじゃ。
アユム
選択肢1の家族管理は本人の自立を阻害しそうです。
博士
まず本人ができる工夫を身につけるのが優先じゃな。
アユム
選択肢2の『忘れた理由を考える』は原因分析ですが、対策にはなりませんね。
博士
過去を振り返らせるだけでは自尊心も下がる。
アユム
選択肢3の『不利益を整理する』も似た構図で、具体策につながりません。
博士
本人を追い詰めてしまう恐れがあるのう。
アユム
選択肢4の『今ここで予定表に書き込む』は外在化と即時実行の両方を満たしていますね。
博士
そうじゃ。看護師の目の前で書くことで、確実に情報が残り、できたという成功体験にもなる。
アユム
小さな成功を重ねることが大切なんですね。
博士
その積み重ねが自己効力感を育てるのじゃ。
POINT
ADHDの不注意症状には、記憶を外部ツールに預けて即時行動化する支援が有効です。原因分析や不利益の整理では行動変容につながりにくく、かえって自尊心を傷つけます。家族への依存ではなく本人が使える具体策を提案することが基本です。正解は『今予約した次回の受診日をこの場で予定表に書き込みましょう』となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん( 19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害<ADHD>( attention-deficit/hyperactivity disorder )と診断された。 Aさんは予約した受診日を忘れてしまい、受診できないことが度々あった。Aさんは、これまで忘れないための工夫を何もしてこなかったと外来看護師に話した。 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は4です。ADHDの不注意症状に対する支援では、外在化(記憶を外部ツールに預ける)と即時行動化が基本戦略です。次回の予約を看護師の目の前で予定表に書き込むことで、情報を確実に残し、本人が自分で管理できるという成功体験にもつながります。
選択肢考察
-
× 1. 「ご家族に予定を管理してもらいましょう」
家族の支援も有用ですが、まず本人自身ができる具体的工夫を身につけることが優先されます。依存的関係を固定化しかねません。
-
× 2. 「忘れてしまった理由を考えてみましょう」
原因を振り返るだけでは行動変容につながらず、過去の失敗を想起させて自尊感情を低下させる恐れがあります。
-
× 3. 「予定を忘れたことで生じる不利益を整理してみましょう」
不利益を列挙しても具体的な対策には直結せず、本人を追い詰めて自信を失わせる可能性があります。
-
○ 4. 「今予約した次回の受診日をこの場で予定表に書き込みましょう」
記憶の外在化と即時実行を組み合わせた具体的・現実的な対策で、ADHDの不注意への支援として最も効果的です。
ADHDの行動療法的アプローチでは『記憶は紙とスマホに預ける』『チェックリストを使う』『アラームやリマインダーを活用する』『場所を決めて物を置く』などが代表的です。本人の自己効力感を育てるには、成功しやすい小さな行動から始め、できたことを具体的に肯定する声かけを続けることが有効です。
ADHDの不注意症状に対する具体的な行動戦略を選べるかを問う問題です。原因分析より、外在化ツールを使った即時の行動変容が優先されることを押さえましょう。
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