薬物依存症患者の入院時対応
看護師国家試験 第110回 午後 第109問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。 入院時のAさんへの看護師の対応として適切なのはどれか。
- 1.二度と使用しないと約束させる。
- 2.回復が期待できる病気であることを伝える。
- 3.使用をやめられなかったことに対する反省を促す。
- 4.自分で薬物を断ち切る強い意志を持つように伝える。
対話形式の解説
博士
Aさん32歳男性、覚せい剤使用で逮捕された後、精神科病院に入院したぞい。
サクラ
依存症治療のために自らプログラムに参加するのですね。
博士
そうじゃ。ここで入院時の看護師対応として最も適切なのはどれじゃろう?
サクラ
選択肢2の「回復が期待できる病気であることを伝える」です。
博士
その根拠を教えてくれ。
サクラ
依存症は「意志が弱いから」ではなく脳の慢性疾患とされています。治療と支援で回復できる病気だと伝えることで、不安を和らげ治療動機を高められます。
博士
素晴らしい。今やアルコールも薬物も「慢性疾患モデル」で理解されているんじゃ。
サクラ
逮捕直後で自尊感情も下がっていますから、希望を伝えることが本当に大切ですね。
博士
その通り。選択肢1の「二度と使用しない約束」はどうじゃ?
サクラ
信頼関係が築かれる前の約束強要は守れません。破った時の自責感が再使用を招く悪循環になります。
博士
そう。依存症治療では「約束」より「相談できる関係」が大事なんじゃ。
サクラ
3の反省を促すのは?
博士
叱責・説教は百害あって一利なしじゃ。自己否定が深まるだけで、治療意欲をそぐぞい。
サクラ
4の強い意志論は?
博士
これが一番根深い誤解じゃな。「意志が弱いからやめられない」という見方は本人と家族を苦しめるだけじゃ。脳の病気なんじゃから、意志論では太刀打ちできんのう。
サクラ
治療プログラムや自助グループが大切なんですよね。
博士
そうじゃ。SMARPPという認知行動療法、NAなどの自助グループ、家族支援、そして何より「責めずに支える」姿勢。これが長期的な回復を支えるんじゃ。
サクラ
再使用しても治療を続けることが大切ですね。
博士
ハーム・リダクションの視点じゃな。責めずに次の一歩を一緒に考える。これが依存症看護の神髄じゃぞ。
POINT
薬物依存症は脳の慢性疾患であり、適切な治療と支援で回復が期待できます。入院時の看護では「回復可能な病気」というメッセージを伝え、自尊感情の回復と治療動機の向上を支援することが最優先です。約束の強要、反省の促し、強い意志論はいずれも本人を追い詰め、信頼関係の構築を妨げます。SMARPPや自助グループ、家族支援を組み合わせ、責めずに支える姿勢が長期的な回復につながります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:Aさん( 32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。 入院時のAさんへの看護師の対応として適切なのはどれか。
解説:正解は2です。薬物依存症は「意志の弱さ」ではなく脳の報酬系の慢性疾患で、適切な治療と支援により回復が期待できる病気です。入院時には逮捕・保釈・入院という大きな出来事で自尊感情が低下し、先の見通しへの不安も強いため、「回復可能な病気である」というメッセージを伝え、治療への動機づけと安心感を提供することが最優先です。
選択肢考察
-
× 1. 二度と使用しないと約束させる。
依存症の本質は本人の意志では制御しきれない渇望にあります。信頼関係が築かれる前に口約束を強要しても守れず、かえって罪悪感と再使用の悪循環を強めます。
-
○ 2. 回復が期待できる病気であることを伝える。
依存症は治療プログラムや自助グループの継続支援により回復できる疾患です。希望を伝えることが治療意欲の基盤となり、看護師への信頼関係構築の第一歩にもなります。
-
× 3. 使用をやめられなかったことに対する反省を促す。
反省の強要は自己非難を深め、自尊感情をさらに低下させます。依存症治療は叱責ではなく受容と支援が基本で、入院時に求められる対応ではありません。
-
× 4. 自分で薬物を断ち切る強い意志を持つように伝える。
依存症を意志の問題と捉えるのは古い誤った認識で、科学的には脳の慢性疾患と位置づけられています。意志論は再発時の自責を強め治療効果を損ないます。
薬物依存症の治療は急性期の離脱症状管理に続き、SMARPP(せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)などの認知行動療法、自助グループ(NA、ダルクなど)への参加、家族支援が柱となります。再使用しても治療継続を促す「ハーム・リダクション」の視点も重要で、責めずに支える姿勢が長期的な回復を支えます。
薬物依存症を慢性疾患として捉え、入院時に必要な治療関係の構築と希望の提示を選択できるかを問う問題です。
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