双極性障害躁状態の急性期看護で最優先すべき対応
看護師国家試験 第110回 午後 第113問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 35歳、男性)は1人暮らし。両親は他県に住んでいる。30歳のときに双極性障害( bipolar disorder )と診断され、これまでに4回の入退院を繰り返している。給料をインターネットゲームの利用料金で度々使い果たし、それが原因で両親と何度も口論になったことがある。仕事では同僚とトラブルを起こすたびに転職を繰り返しており、今回も同僚と口論になり自ら退職した。Aさんは「前の職場の同僚に嫌がらせをしてやる」と母親に電話をかけ、心配した両親が一緒に精神科病院を受診した。診察室では多弁で大きな声を出し、椅子を蹴るなどの行為がみられた。医師の診察の結果、入院して治療することになった。 入院後1週、身体的拘束は解除された。Aさんは常に動き回り、他の患者への過干渉が続いている。食事中に立ち上がりホールから出ていこうとするため、看護師が止めると強い口調で言い返してくる。Aさんは「ゲーム関連の仕事を探したい。早く退院させろ」と1日に何度も看護師に訴えるが、主治医は退院を許可していない。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。
- 1.休息できる場所へ誘導する。
- 2.過干渉となる理由を確認する。
- 3.退院後は家族と暮らすように提案する。
- 4.仕事に必要なスキルについて話し合う。
対話形式の解説
博士
今日は拘束が解除されたAさんの事例じゃ。過干渉や多弁が続いておるのう。
サクラ
躁状態がまだ続いている感じですね。
博士
その通り。躁状態の特徴を挙げてみよ。
サクラ
多弁、観念奔逸、易刺激性、誇大性、睡眠欲求の低下などです。
博士
Aさんは食事中にホールを出ようとし、止めると強く言い返す。典型的な易刺激性じゃな。
サクラ
こういう時に仕事の話をしたり理由を尋ねたらどうなりますか。
博士
火に油を注ぐのじゃ。議論がヒートアップして症状が悪化する。
サクラ
だから選択肢2や4は不適切なんですね。
博士
退院後の家族同居の話も、躁状態では現実的な判断ができんから受け入れられん。
サクラ
残るは選択肢1の休息への誘導ですね。
博士
躁状態の怖さは本人が疲労を自覚しないまま消耗することじゃ。
サクラ
刺激を減らして休息を確保するのが最優先ですね。
博士
個室で静かな環境を用意し、気分安定薬の効果を待つ。これが急性期看護じゃ。
サクラ
同室者とのトラブル防止にもなりますね。
博士
その通り。躁状態では「減らす・守る・待つ」を合言葉に援助するのじゃ。
POINT
双極性障害の躁病相では、多弁・過活動・易刺激性が連日続くことで身体消耗が進行します。この時期の看護の鉄則は刺激を最小化し休息を確保することで、個室誘導が有効です。振り返りや具体的な進路相談は寛解期に回し、急性期では薬物療法の効果が現れるまで安全と身体的消耗の防止に徹します。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん( 35歳、男性)は1人暮らし。両親は他県に住んでいる。30歳のときに双極性障害( bipolar disorder )と診断され、これまでに4回の入退院を繰り返している。給料をインターネットゲームの利用料金で度々使い果たし、それが原因で両親と何度も口論になったことがある。仕事では同僚とトラブルを起こすたびに転職を繰り返しており、今回も同僚と口論になり自ら退職した。Aさんは「前の職場の同僚に嫌がらせをしてやる」と母親に電話をかけ、心配した両親が一緒に精神科病院を受診した。診察室では多弁で大きな声を出し、椅子を蹴るなどの行為がみられた。医師の診察の結果、入院して治療することになった。 入院後1週、身体的拘束は解除された。Aさんは常に動き回り、他の患者への過干渉が続いている。食事中に立ち上がりホールから出ていこうとするため、看護師が止めると強い口調で言い返してくる。Aさんは「ゲーム関連の仕事を探したい。早く退院させろ」と1日に何度も看護師に訴えるが、主治医は退院を許可していない。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。
解説:正解は1の休息できる場所へ誘導することです。Aさんは躁状態が続いており、過干渉・多弁・易刺激性が持続しているため、刺激を減らして身体的・精神的な休養を確保することが最優先です。
選択肢考察
-
○ 1. 休息できる場所へ誘導する。
躁状態では自覚がないまま体力を消耗し続けるため、静かな個室などへ誘導して刺激を遮断し、休息と十分な睡眠を確保することが重症化と消耗の予防につながります。
-
× 2. 過干渉となる理由を確認する。
躁状態で多弁・易刺激性のあるAさんに説明を求めると、かえって興奮を煽り長時間の議論に発展しやすく、精神状態の悪化を招きます。
-
× 3. 退院後は家族と暮らすように提案する。
退院後の生活設計は症状が落ち着き本人が現実的な判断をできる段階で扱う課題で、躁状態のこの時期に提案しても受け入れられず、かえって関係性を損なう可能性があります。
-
× 4. 仕事に必要なスキルについて話し合う。
躁状態では誇大的で非現実的な計画を立てやすく、仕事の話題はAさんの興奮と観念奔逸を助長します。こうした具体的な検討は寛解期に入ってから行うべきです。
双極性障害の躁病相では感情高揚、観念奔逸、過活動、易刺激性、睡眠欲求の低下、誇大性が特徴的です。この時期の看護は「刺激の最小化」「安全確保」「身体消耗への対処」が3本柱で、同室者とのトラブル回避のため個室対応が選ばれることもあります。気分安定薬(リチウム等)の血中濃度管理も重要です。
双極性障害躁状態における急性期看護の原則、すなわち刺激を最小限にして休息を確保する対応を選べるかを問う問題です。
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