服薬アドヒアランスへの関わり
看護師国家試験 第111回 午後 第109問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(35歳、男性、会社員)は妻(32歳、主婦)と子ども(2歳)と3人暮らし。5年前にうつ病(depression)と診断された。半年前に営業部門に異動し、帰宅後も深夜まで仕事をする日が続いていた。「仕事のことが気になってしまい、焦りと不安ばかりが増して眠れない。会社に行くのが苦しい、入院させてもらえないか」と訴えがあり、休養と薬物の調整を目的として精神科病院に入院となった。入院後、Aさんから「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていたんです。薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と看護師に相談があった。 看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 1.薬を飲みたくない理由を尋ねる。
- 2.薬を飲むことを約束してもらう。
- 3.自己判断で薬をやめたことへの反省を促す。
- 4.薬の管理はAさんの妻にしてもらうよう勧める。
対話形式の解説
博士
Aさんは35歳でうつ病歴5年、半年前に営業部門に異動して負担が増え、不眠・焦燥・不安で入院となった。そして入院後「実は薬を飲むのが嫌で途中からやめていた、どうしたらよいか」と相談してきた。
サクラ
服薬中断の告白ですね。看護師としてどう応じるかが問われますね。
博士
そうじゃ。ここで大切なのは、Aさんが相談してくれたことを受け止め、共感的に関わることじゃよ。
サクラ
正解はどれですか?
博士
正解は1番、「薬を飲みたくない理由を尋ねる」じゃ。なぜ飲みたくないのか、その理由・思いを理解することがアドヒアランス向上の第一歩なのじゃ。
サクラ
服薬中断の理由ってどんなものがありますか?
博士
副作用(消化器症状、眠気、性機能障害など)、効果への疑念、スティグマ、飲み忘れ、忙しさ、薬への依存不安などじゃ。理由を聴かずに一律の対応はできんぞ。
サクラ
2番の「薬を飲むことを約束してもらう」はどうして違うんですか?
博士
約束を求めることは強制的な関わりになり、Aさんの自律性や治療意欲を損なうのじゃ。アドヒアランスは理解と納得に基づくものじゃから、約束で縛っても長続きしない。
サクラ
3番の「自己判断で薬をやめたことへの反省を促す」は?
博士
反省を促すのは自責感・罪悪感を強めてしまう。うつ病患者に自責感を強めるのは症状悪化につながる危険があるから、責めずにまず背景を理解するんじゃ。
サクラ
4番の「薬の管理はAさんの妻にしてもらうよう勧める」は?
博士
Aさんの意向や理由を確認せずに他者管理を勧めるのは自律性を奪う対応じゃ。もちろん本人が望むなら家族管理も選択肢じゃが、本人の思いを聴くのが先じゃよ。
サクラ
抗うつ薬の特徴も知っておきたいです。
博士
代表的なものはSSRI、SNRI、NaSSA、三環系・四環系じゃな。いずれも効果発現まで2〜4週間を要し、この間に副作用で自己中断するケースが多い。
サクラ
自己中断の危険性は?
博士
突然中止すると離脱症状(めまい、頭痛、不安、不眠、フラッシュバック様症状)や症状の再燃を招くことがある。必ず医師と相談しながら調整することが大切じゃ。
サクラ
アドヒアランス向上のポイントは?
博士
副作用と効果の正しい情報提供、丁寧な説明、本人の価値観尊重、服薬支援ツール活用、家族の理解、自己中断の危険性の説明、この6つが柱じゃ。
サクラ
精神科看護では患者との信頼関係が治療の基盤なんですね。
博士
そのとおりじゃ。Aさんが正直に打ち明けてくれたことは治療関係構築のチャンスじゃ。その思いを丁寧に受け止めることが、服薬継続への一番の近道なのじゃよ。
POINT
本問はうつ病患者の服薬アドヒアランスに関する看護師の対応を問う問題です。服薬中断の背景には副作用・効果の疑念・スティグマなど多様な理由があり、まず共感的に理由を尋ねることが一緒に解決策を考える出発点となります。約束や反省の促しは自律性を損ない、うつ症状を悪化させる危険があります。本人の思いを傾聴し信頼関係を築く関わりが精神科看護の基本です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(35歳、男性、会社員)は妻(32歳、主婦)と子ども(2歳)と3人暮らし。5年前にうつ病(depression)と診断された。半年前に営業部門に異動し、帰宅後も深夜まで仕事をする日が続いていた。「仕事のことが気になってしまい、焦りと不安ばかりが増して眠れない。会社に行くのが苦しい、入院させてもらえないか」と訴えがあり、休養と薬物の調整を目的として精神科病院に入院となった。入院後、Aさんから「実は薬を飲むのが嫌で、途中から飲むのをやめていたんです。薬を飲みたくないのですが、どうしたらよいでしょうか」と看護師に相談があった。 看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。Aさんは服薬中断に至った経緯と、今後に対する相談を看護師に持ちかけており、まず必要なのは「なぜ飲みたくないのか」を共感的に尋ね、理由・思いを理解することです。アドヒアランス向上のためには、副作用、効果への疑念、飲み忘れ、スティグマ、忙しさなど背景要因を明らかにし、一緒に解決策を探る関わりが基本です。約束や反省を強いたり、他者管理を一方的に勧めることは自律性を損ね、治療関係の構築を妨げます。
選択肢考察
-
○ 1. 薬を飲みたくない理由を尋ねる。
服薬中断の理由は副作用・効果の実感・スティグマ等さまざまです。理由を共感的に傾聴することが、アドヒアランスを一緒に考える出発点となります。
-
× 2. 薬を飲むことを約束してもらう。
約束を求めることは強制的関わりとなり、Aさんの自律性や治療意欲を損ないます。アドヒアランスは理解と納得に基づくものです。
-
× 3. 自己判断で薬をやめたことへの反省を促す。
反省を促すことは自責感・罪悪感を強め、うつ病の症状を悪化させる危険があります。責めずに背景を理解することが優先です。
-
× 4. 薬の管理はAさんの妻にしてもらうよう勧める。
Aさんの意向や理由を確認せず他者管理を勧めるのは自律性を奪う対応です。まず本人の思いを聴くことが先決です。
うつ病の治療は薬物療法(SSRI、SNRI、NaSSA、三環系・四環系抗うつ薬)と精神療法(認知行動療法、対人関係療法)、休養、生活リズム調整が柱です。抗うつ薬は効果発現まで2〜4週間を要し、この間に副作用(消化器症状、不眠、性機能障害、体重変化等)で自己中断するケースが多くみられます。アドヒアランス向上のためには、①副作用と効果の正しい情報提供、②開始時・変更時の丁寧な説明、③本人の価値観・意向の尊重、④服薬支援ツール(ピルケース、服薬カレンダー)、⑤家族の理解と協力、⑥自己中断の危険性(離脱症状、再燃)の説明が重要です。
うつ病患者の服薬アドヒアランスに関する相談への対応として、本人の思いを傾聴し共に考える基本姿勢を問う問題です。
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