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自殺企図直後、看護師が最初に確認すべきこと

看護師国家試験 第112回 午前 第112問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第112問

次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(20歳、女性)は境界性人格<パーソナリティ>障害(borderline personality disorder)の診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。 Aさんは救急外来で治療を受け会話ができるまでに回復した。 Aさんへの看護師の最初の対応で適切なのはどれか。

  1. 1.過量服薬した場面の振り返りを促す。
  2. 2.現在の希死念慮の有無について確認する。
  3. 3.大量の睡眠薬を飲まずに残していた理由を追及する。
  4. 4.Aさんと看護師の間で二度と過量服薬しないと約束する。

対話形式の解説

博士 博士

今回は過量服薬で搬送されたBPDの若年女性への初期対応を考える問題じゃ。

アユム アユム

回復したばかりの患者さんへの最初の声かけ…悩みますね。

博士 博士

まず押さえるべきは、自殺企図後は再企図のリスクが極めて高い時期ということじゃ。

アユム アユム

だから「希死念慮の有無を確認する」が正解なんですね。

博士 博士

その通り。今も死にたい気持ちがあるか、具体的な方法を考えているかを丁寧に聴取し、安全確保につなげるのが最優先じゃ。

アユム アユム

直接「死にたいですか」と聞くのは、かえって自殺を促してしまいそうで怖いです。

博士 博士

それはよくある誤解じゃ。直接尋ねることでむしろ孤独感が和らぎ、援助希求につながるのが実証されておる。TALKの原則を覚えておくとよい。

アユム アユム

TALKって?

博士 博士

Tell(心配を伝える)、Ask(直接尋ねる)、Listen(傾聴する)、Keep safe(安全を確保する)じゃ。自殺予防のコミュニケーション基本原則じゃな。

アユム アユム

過量服薬の振り返りや「もうしないと約束して」は?

博士 博士

回復直後に振り返らせると感情が揺さぶられ再企図の引き金になりかねない。「自殺しない契約」も科学的エビデンスに乏しく推奨されておらん。

アユム アユム

BPDの特徴も踏まえた対応が必要ですよね。

博士 博士

見捨てられ不安、理想化と脱価値化、衝動性が特徴じゃ。責めず評価せず、受容的に関わることが信頼関係の基礎になる。

アユム アユム

治療としては弁証法的行動療法が有効と聞きました。

博士 博士

うむ、DBTは感情調整スキル、対人関係スキル、マインドフルネスなどを学ぶ構造化された治療で、BPDの自傷や自殺企図を減らす効果が実証されておる。

アユム アユム

救急外来では危険物の除去や家族への情報提供も大切ですね。

博士 博士

その通り。身体科と精神科、家族、地域が連携して継続的に支える体制を早期に組むことが再発予防の鍵じゃ。

POINT

自殺企図後に回復した患者への看護師の最初の対応は、現在の希死念慮の有無を確認することです。再企図リスクが最も高まる直後期に安全確保のためのアセスメントを行うことは自殺予防の原則であり、患者を責めず受容的に傾聴することが基本です。境界性パーソナリティ障害では見捨てられ不安や衝動性、自己破壊的行動が特徴的で、弁証法的行動療法などの構造化された介入が有効とされます。看護師は身体回復の確認と並行して危険物の除去、家族支援、精神科との連携を進め、TALKの原則に基づく継続的な関わりで再企図を防ぐ役割を担います。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(20歳、女性)は境界性人格<パーソナリティ>障害(borderline personality disorder)の診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。 Aさんは救急外来で治療を受け会話ができるまでに回復した。 Aさんへの看護師の最初の対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 2 の現在の希死念慮の有無について確認することです。過量服薬による自殺企図後、会話が可能となった直後は自殺の再企図リスクが最も高まる時期であり、まず現時点での死にたい気持ち(希死念慮)の有無・強度・具体的な計画の有無を丁寧にアセスメントすることが最優先となります。希死念慮が持続している場合は、危険物の除去、観察体制の強化、身体拘束や行動制限の適応検討、精神科医への連絡など安全確保のための即時対応が必要です。境界性パーソナリティ障害では衝動性や自己破壊的行動が特徴的であり、患者を責めず受容的・非評価的な態度で関わることが信頼関係構築の基盤となります。

選択肢考察

  1. × 1.  過量服薬した場面の振り返りを促す。

    回復直後に自殺企図の状況を振り返らせると感情的負担が大きく再企図を誘発しかねない。心理的に落ち着き治療関係が構築された後に行うべき介入である。

  2. 2.  現在の希死念慮の有無について確認する。

    自殺企図後の再企図リスクを評価し安全を確保するための最優先事項。希死念慮の有無・強度・計画性を把握して、保護的介入や治療方針の決定につなげる。

  3. × 3.  大量の睡眠薬を飲まずに残していた理由を追及する。

    追及する姿勢は患者を責める態度と受け取られ、信頼関係を損なって援助の拒否や衝動的行動を招く恐れがある。非難的な関わりは禁物である。

  4. × 4.  Aさんと看護師の間で二度と過量服薬しないと約束する。

    いわゆる自殺しない契約(no-suicide contract)は短期的プレッシャーとなり効果的な自殺予防手段として推奨されていない。安全計画の策定と継続的支援が優先される。

自殺企図後の初期対応の基本は、身体的安定の確認、安全な環境の確保、希死念慮のアセスメント、精神科的評価・治療への橋渡しである。TALKの原則(Tell:心配を伝える、Ask:直接尋ねる、Listen:傾聴、Keep safe:安全確保)は有用な枠組み。境界性パーソナリティ障害では見捨てられ不安、理想化と脱価値化、衝動性、慢性的な空虚感などの症状があり、弁証法的行動療法(DBT)が有効性の高い治療として知られる。救急外来では危険物の除去、家族への説明、精神保健福祉士との連携も重要となる。

自殺企図直後の回復期における最優先対応は何かを問う問題。身体的回復後にまず希死念慮の再評価を行うという自殺予防の原則を確認する。