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スタッフが真っ二つ!BPD患者ケアでチームが分裂したとき

看護師国家試験 第112回 午前 第114問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第114問

次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(20歳、女性)は境界性人格<パーソナリティ>障害(borderline personality disorder)の診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。 この設問は、<前問>の続きの設問となります。 入院1週、Aさんは看護師ごとに言動や態度を変えることが多く、病棟ではAさんに対して共感を示す看護師と、拒否的な態度を示す看護師に分かれてしまった。そのため、病棟の看護師はチームでの対応についてカンファレンスを行った。 Aさんへの看護師のチームとしての対応で適切なのはどれか。

  1. 1.Aさんと看護師が関わる頻度を減らす。
  2. 2.Aさんに共感を示す看護師に担当を固定する。
  3. 3.Aさんに対する感情を看護師同士で表出しないように統一する。
  4. 4.Aさんの行動が患者ー看護師関係にもたらす影響について評価する。

対話形式の解説

博士 博士

今回は入院1週でAさんがスタッフごとに態度を変え、病棟が共感派と拒否派に分断された場面じゃ。

アユム アユム

これがスプリッティングですね。前の問題でも出てきました。

博士 博士

その通り。BPDの防衛機制で、人を「全て良い/全て悪い」と両極端に分けて捉えるのじゃ。患者はある看護師を理想化し、別の看護師を脱価値化する。

アユム アユム

結果としてチーム内に同じ分裂が起こるんですね。理想化されるスタッフは優しく、脱価値化されるスタッフは厳しくなる。

博士 博士

うむ。これを放置するとチーム医療が機能不全に陥る。さて、このときのチーム対応としてどれが適切かじゃ。

アユム アユム

「関わりを減らす」「担当を固定」「感情を表出しない」「行動の影響を評価する」…正解は4ですね。

博士 博士

正解。まずは患者の行動が患者—看護師関係にどう影響しているかを客観的に評価し、チーム内で共通理解を形成することが第一歩じゃ。

アユム アユム

逆転移って言葉も聞きましたが関係ありますか?

博士 博士

おおいにある。逆転移とは治療者が患者に対して抱く感情反応じゃ。「あの患者はイライラさせる」「この患者は守ってあげたい」などの感情を無意識に抱く。

アユム アユム

それを抑え込むのではなく、むしろ言語化して共有するんですね。

博士 博士

その通り。感情を出さずに統一しようとすると、かえって関わりにブレが生じスタッフのバーンアウトにもつながる。率直な言語化が鍵じゃ。

アユム アユム

担当を共感派に固定するのはだめですか?

博士 博士

一見よさそうじゃが、それは理想化と依存を強化し、他のスタッフを脱価値化する悪循環を固定化する。チーム全員で均等に関わる体制が必要なのじゃ。

アユム アユム

関わりを減らすのも、見捨てられ不安を刺激しそうですね。

博士 博士

その通り。BPDでは「見捨てられ不安」が中核的な特徴じゃから、距離を置くと自傷や自殺企図のリスクを高めてしまう。

アユム アユム

具体的な対応としてはどんな技法があるんですか?

博士 博士

DBT(弁証法的行動療法)やMBT(メンタライゼーション・ベースド・トリートメント)が代表的じゃ。いずれもチーム全体で統一された枠組み(limit setting)を維持することが前提となる。

アユム アユム

定期的なカンファレンスで感情を共有し、統一した対応を合意していくことが大切なんですね。

博士 博士

まさに。さらにスーパービジョン、対応マニュアル、ローテーション体制などを組み合わせて、スタッフが支え合える環境を作ることが重要じゃ。

POINT

境界性パーソナリティ障害の患者に対するチーム対応では、まず患者の行動が患者—看護師関係にもたらす影響を客観的に評価することが第一歩となります。スプリッティングによる理想化と脱価値化はチーム内にも分断をもたらすため、逆転移感情を率直に共有し、統一された限界設定と関わり方を合意することが不可欠です。担当固定や関わり削減、感情の抑圧はいずれも逆効果で、均等な関わりと一貫した枠組みの維持が原則です。DBTやMBTなどの治療技法もチーム医療を前提としており、看護師は定期的なカンファレンスとスーパービジョンを通じて客観性を保ちながら患者の回復を支える役割を担います。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(20歳、女性)は境界性人格<パーソナリティ>障害(borderline personality disorder)の診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。 この設問は、<前問>の続きの設問となります。 入院1週、Aさんは看護師ごとに言動や態度を変えることが多く、病棟ではAさんに対して共感を示す看護師と、拒否的な態度を示す看護師に分かれてしまった。そのため、病棟の看護師はチームでの対応についてカンファレンスを行った。 Aさんへの看護師のチームとしての対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 4 のAさんの行動が患者—看護師関係にもたらす影響について評価することです。境界性パーソナリティ障害の患者に対しては、スプリッティング(分裂)によりスタッフ間が「理想化する側」と「脱価値化される側」に分かれがちで、その結果チーム医療が機能不全に陥る危険があります。カンファレンスでは個々の看護師の感情(逆転移)を隠さず表出し、患者の行動がチーム全体にどのような影響を及ぼしているかを客観的に評価・共有することが第一歩です。その上で統一した関わり方・限界設定を合意し、全員が同じ枠組みで対応することがBPDケアの基本原則となります。

選択肢考察

  1. × 1.  Aさんと看護師が関わる頻度を減らす。

    関わりを減らすことは見捨てられ不安を刺激し、自傷・自殺企図のリスクを高める。関わり方を工夫することが重要で、回避的対応は逆効果。

  2. × 2.  Aさんに共感を示す看護師に担当を固定する。

    担当固定は理想化と依存を強化し、他スタッフへの脱価値化を助長する。チーム全員で均等に関わる体制が必要。

  3. × 3.  Aさんに対する感情を看護師同士で表出しないように統一する。

    逆転移感情を抑え込むとスタッフのバーンアウトや対応のブレを招く。むしろ感情を率直に共有し客観的に振り返ることが必要。

  4. 4.  Aさんの行動が患者ー看護師関係にもたらす影響について評価する。

    スプリッティングの影響を客観的に分析し、チーム内で共通理解を形成した上で統一した関わりを合意する。BPDケアの基本アプローチ。

境界性パーソナリティ障害のチーム医療では、定期的なカンファレンスで各スタッフの関わり・感情・対応上の困難を共有し、統一された限界設定(limit setting)を維持することが重要である。逆転移は治療者が患者に対して抱く感情反応で、これを言語化・共有することで客観性を保てる。DBT(弁証法的行動療法)やメンタライゼーション・ベースド・トリートメント(MBT)などの治療技法も、チームで一貫した姿勢をとることを前提にしている。担当看護師ローテーション、対応マニュアルの整備、スーパービジョンも有効な支援方法となる。

スプリッティングにより分断されたチームを再統合するための第一歩は何か。患者の行動が関係性に与える影響の客観的評価が要。